「石子順造的世界」と「重森三玲 北斗七星の庭_展」2012/01/09 23:43

昨日今日と、連日で展覧会に行ってきた。
府中市美術館の石子順造的世界展と、ワタリウム美術館の重森三玲 北斗七星の庭_展である。

石子順造的世界

石子順造的世界-キッチュ-

「石子順造的世界」は、つげ義春ファン、丸石神好きとして、外せない展覧会だ。評論家・石子順造氏の足跡に沿って、美術、マンガ、キッチュという三分野の展示があり、マンガコーナーの展示に『ねじ式』(つげ義春著)の原画、キッチュコーナーの展示に丸石神の写真とくるのだ(写真)。それはそれでうれしかったのだが、言ってみれば、「あるとわかっているものを確認しにいく」かたちだった。が、美術コーナーにちょっとしたふいうちがあった。石子さんらが作家選考をした1968年の「トリックス・アンド・ヴィジョン」展の一部が再現されていたのだが、そこに…

「まさか こんな所に 堀内正和が いるとは 思わなかった」

ということで、わたしが最も好きな彫刻家・堀内正和さんの作品があったのだ。
(野暮を承知で付言すると、上は、『ねじ式』の冒頭「まさか こんな所に メメクラゲが いるとは 思わなかった」のパロディである)

石子さんは、評論を読むと、わたしとはかなり違う思索をするひとなのだが、堀内正和、つげ義春、丸石神など、どこか嗜好が似ている、と再認識した。というより、わたしが石子さんから影響を受けたということなのだろう。

なお、展覧会の図録は、驚くほどコストパフォーマンスが高い文献になっている。300ページ余・2000円、カラー多数、『ねじ式』原画写真収録である。

そして、重森三玲展は、偶然出会った東福寺方丈の庭に魅せられ、北庭の写真をずっとコンピュータの壁紙にしている者として、やはり外せない展覧会だ。

デスクトップ-東福寺方丈北庭-

東福寺方丈北庭(小市松の庭)は、世人の認める氏の代表作なのだろう。喫茶室には「小市松ケーキ」なるものもあり、おいしくいただいた。

重森三玲展-小市松ケーキ-


13日の金曜日2012/01/11 20:18

明後日は、13日の金曜日だ。ある日が何曜日なのかは、長い年月でみれば、ほぼランダムになるので、13日が金曜日である確率は、だいたい1/7になる。平均して7ヶ月に1回はあるということだ。ただ、じっさいにはランダムではなく、パターンが繰り返される。グレゴリオ暦がそのまま続くとして、細かく計算してみると、0.1433..と、1/7≒0.1428よりやや高い。月別で見ると、「1、3、4、5、7、11月」が高く(0.1450)、「2、6、9、12月」(0.1425)、「8、10月」(0.1400)の順になる。今年は、1月、4月、7月の三回ある。

なお、アポロ13号の事故を、4月13日金曜日とする記述を見たことがあるが、1970年4月13日は月曜日である。

天文学論文のオリガミ など2012/01/17 21:34

『オリガミ:相空間の折り畳みを用いてハローを説明する』(Bridget L. Falck他)という論文のドラフトがでたことを、職場のOさんから教えてもらった。
六次元の相空間における平坦折りを用いて、宇宙の物質分布の大規模構造 - とくに、銀河周囲のハロー - を説明する、というような論文である。と書いてみても、なんのこっちゃという感じだけれど。
参考文献に、トム・ハルさんやロバート・ラングさんの論文、第三回折り紙の科学国際会議の議事録などがあがっていた。折り畳み対称性が、じっさいにどういう物理プロセスに対応しているのかは、わからない。

関係ないけれど、ついでに、最近見つけた、サイエンス出版物の中の折り紙っぽいヴィジュアルも、ふたつ紹介しておく。

『nature』12月22日号 の表紙が、テープを折り畳んで「10」という数字を表すものだった。Carl Detorresさんというデザイナーによるものだ。10という数字は、2011年に話題になった人物10人を示すもので、そのなかのひとりに、衆議院厚生労働委員会で、参考人として政府の除染対策の遅れを厳しく批判した医学・生物学者・児玉龍彦さんが登場していた。

『日経サイエンス』2月号の『数理モデル妄信は禁物 - 金融危機はなぜ予測できないのか』という記事(元の記事は『Scientific American』2011年11月号)のヴィジュアルが、ドルでできたロケットが墜落するというもので、折り紙的なデザインだった。こういう仕事をたくさんしているジェセフ・ウーさんによるものかと思ったのだが、カイル・ビーンさんというひとの仕事だった。ビーンさんのサイトにある、卵の殻でできたニワトリ、携帯電話のマトリョーシカ、マッチ棒でつくった昆虫など、どれも面白い。えーと、金融工学の記事の中身はまったく読んでません。

円城塔さんと「意外なところに折り紙が!」論文2012/01/18 23:02

昨日、「意外なところに折り紙が!」という論文について触れたが、またもちょこっとシンクロニシティーというか、昨日芥川賞に選ばれた円城塔さんが、何年か前のインタビューの中で、 Michel Mendès Franceという数学者による『折り紙統計力学』(1984)という変な論文があると話していたことを思い出した。へぇーと思っただけで、入手もしていないけれど、なんか読みたくなってきたような… (なお、円城さんは「折り紙統計力学」としていたが、原題には、Statistical MechanicsではなくThermodynamics - 熱力学とある)
01/26追記:論文の著者名が間違っていたので訂正

円城塔さんの芥川賞受賞作『道化師の蝶』は、飛行機の中で読むのに向いた本ということが作品のひとつのモチーフになっているらしいが、先月わたしは、円城さんの『これはペンです』を飛行機の中で読んだ。あれも、飛行機内に向いた小説だったような気がしないでもない。

水晶の錐面2012/01/18 23:09

水晶
イタリアで、フランス折り紙協会(MFPP)のViviane Bertyさん、Alain Georgeotさんらから、水晶をプレゼントされた。前川は幾何的な造形が好きだから、ということらしい。思えば、水晶(石英の自形結晶)を、まじまじと見るのは初めてだ。磨いたところもあるみたいだが、ほぼ自然のままのようだ。

角錐状の部分は、おおざっぱに言って四角錐になっているように見えた。つまり、六角柱の鉛筆を削って四角錐にしたようなかたち(図左)である。

しかし、三方晶系のα石英の界面は、錐面の部分も三回回転対称の格子にしたがうはずである。いろいろと考えて、これは、図中央のような典型的な水晶の三回回転対称構造の三つの三角形の面のうち、ひとつが大きくふたつが小さい(図右)ために、図左のようにも見えるのであろう、と納得した。結晶の六角柱部分が正六角形になっていないこともあって、かたちの見立てが狂ったのだ。

結晶の写真2012/01/22 22:48

水晶をもらってから、結晶がミニブームになりつつある。ということで、結晶の写真をいくつかお見せしよう。

睡沌氣候と蛍石
まずは、蛍石。たしか、20年ぐらい前、新宿紀伊國屋書店の鉱物化石売場で買ったものである。ほとんど完璧な正八面体が美しい。「それっぽい」写真にしようと、天文古玩さんというブログで知った、鉱物趣味的、宮沢賢治的、稲垣足穂的な、コマツシンヤさんのマンガ・『睡沌氣候』(すいとんきこう)の表紙の上に置いて撮ってみた。

食塩
つぎは、塩化ナトリウム。小学生のころの実験を思い出して、結晶をつくってみた。食塩は、そのままでも、よく見ると小さな立方体だが、もっと大きい結晶が見たくなったのである。

飽和食塩水をつくって、針金をいれると、翌日には結晶ができはじめた。
あまりきれいではないが、四角柱状に伸びているものもあって、面白い。
NaCl(柱状)


NaCl(立方体)
溶液の表面には、1.5mmほどの立方体も浮いていた。

そして、昨日の雪。これも結晶写真を撮ろうとしたのだが、失敗した。黒い紙を冷凍庫で冷やし、その上に降ったものを撮る計画だったのだが、黒い紙はうまく冷えないのか、すぐに暖まるのか、雪はその上ですぐに溶けてしまった。