『読書アンケート 2024』など2025/03/02 09:00

『読書アンケート 2024』
約150人の「本読み」が、2024年に読んで印象にのこった本をあげる、みすず書房恒例企画『読書アンケート 2024』で、音楽学者の柿沼敏江さんと作家・歌人の齋藤美衣さんが、わたしの『空想の補助線』をあげていてくれました。

『寄り道の科学 折り紙の本』(萩原一郎、奈良知惠 著)
図版(「悪魔」)を提供していたので、献本を受けました。「折紙工学」の第一人者による、折り紙の科学を一般向けに噛み砕いた本です。

なお、「折り鶴の基本形」という言葉の使いかたが一般とは異なるものだったので、これは著者に連絡しておきました。
折り鶴の基本形
折り鶴の基本形

◆野辺山宇宙電波観測所登場
すでにご存知のかたも多いと思いますが、劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』に、野辺山宇宙電波観測所が登場します。職員やスタッフもストーリーの詳細を知らないのでどきどきです。

紙の鶴おりおり など2025/01/26 10:49

◆紙の鶴おりおり
大河ドラマ『べらぼう』の影響で、安永・天明・寛政期の資料などが書店に並んでいる。

『秘伝千羽鶴折形』(1797)が出版された時代でもあるので、同時代の資料は折々に読んでいたのだが、四方赤良(よものあから)こと大田南畝と、朱楽菅江(あけらかんこう)の編になる『万歳狂歌集』(1783)が文庫ででているのはすこしびっくりした(いまはなき現代教養文庫版の復刊ではあるが)。大河ドラマおそるべし。通読したことがなかったのでありがたく求めて読んだ。

『千載和歌集』のパロディを表題とする同書は、まず、収録歌の狂名(ペンネーム)が面白い。酒上不埒(さけのうえのふらち)、元木網(もとのもくあみ)等は知っていたが、ほかにも地口有武(じぐちのありたけ)とか加保茶元成(かぼちゃのもとなり)等々、じつにくだらないものが多くて、正直、歌自体よりも狂名のほうが笑えるほどである。

編者のひとり、あけらかんこうもアッケラカンの謂だが、その菅江の口上に以下のような記述があった。

たはれ歌ハちはやふる神代よりはしまるにもあらす、ひとつとや人の代よりはしまるとしもあらず、ほと/\手まりうたにひとしく、ひいふう三河まさいの口つきにかよひて、はらのかハより/\に口すさひ、かミのつるおり/\にひいたせるなり

訳:狂歌というのは、神代に始まるものでもなく、人の世になって始まったものというより、ほとんど手毬唄みたいなもので、三河万歳の口上のたぐいというか、思いついて腹の皮がよじれるように口すさび、紙の鶴を折るように折々にひねりだすものなのである。

かミのつるおりおり、と来たもんだ。
残念ながら、『万歳狂歌集』七百四十八首の中には、折形を詠んだ歌はなかったが、この時代、折鶴が普及していたことを示す記述ではある。

通読して、橘曙覧(たちばなあけみ)の独楽吟(「たのしみは」で始まる一連の歌)の先行作である下記の歌や、「根岸の里の侘び住まい」と並ぶ万能付句「それにつけても金のほしさよ」の元祖的な一首もあって、へぇーと思った。こういう話題の会話を、あらためて岡村昌夫さんとしたかったなあと。

たのしミハ春の桜に秋の月夫婦中よく三度くふめし
花道つらね (五代目市川團十郎)

世の中はいつも月夜に米のめしさてまた申しかねのほしさよ
四方赤良

ただ、お気楽な時代に見えて、天明の大飢饉、浅間山の噴火、アイヌの蜂起等、擾乱の時代でもあったはずではある。

◆折れるには…

折れるにはあまりに弱すぎる人間が存在する。私もその一人だ。

『哲学宗教日記』(L. ウィトゲンシュタイン、鬼界彰夫訳)

原語ではBrechen(英語のbreakに相当)で、Folten(foldに相当)ではないが、折るという言葉がでてくると、折紙者は、過剰に反応してしまうのであった。

合法的に独裁国家に移行する可能性
かのクルト・ゲーデルが、戦後、アメリカの市民権を得るさいの面接をうける前、「この憲法は、(論理的に検討した結果)、合法的に独裁国家に移行する可能性を持っている」と述べて、保証人のアインシュタインらを慌てさせたというエピソードを思い出す、このごろ。

謹賀新年2025/01/01 09:20

あけましておめでとうございます。
謹賀新年

お酒は名古屋コンベンションでNさんから、ウッドパズルはYさんからいただいたものです。

出版、イベントいろいろ2024/11/07 14:56

折り紙の事典
編集に携わった『折り紙の事典』が、11月11日に発売されます。

『日常は数学に満ちている』
レビューに携わった三谷純さんの新著が11月19日に発売されます。

NHKラジオ「まんまる」
11月20日(水) 12:50-1:55 NHKラジオ第一『まんまる』にゲスト出演して、折り紙に関する話をします。

第37回折り紙の科学・数学・教育研究集会(11/30,12/1)
参加します。今回の会場は九州大学です。
11/13から参加申し込みを開始する予定となっています。

◆第14回折紙探偵団 名古屋コンベンション(12/7,8)
参加します。会場は愛知工業大学です。

◆折り紙教室@府中
クリスマス・キルト
11/23(祝)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。作品は、「クリスマス・キルト」です。

折り紙教室ほか2024/09/17 15:00

◆折り紙教室@府中
カラス
9/23(祝)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。作品は、「カラス」です。(間違っていた日付を修正しました)

◆エッセイふたつ
『数学セミナー』10月号にエッセイ月見団子の積みかた』が載りました。
そういえば、『図書』6月号にもエッセイ『世に銭ほど面白き物はなし』が載ったのですが、紹介するのを忘れていました。

誰の為に星は光るというでもない
知るひとぞ知る(わたしは知らなかった)自由律短歌の歌人・小関茂(1908-1972)の歌集『宇宙時刻』が新刊ででていた。なかにこんな歌があった。

誰の為に星は光るというでもないそう思いながら支那そばやを出る

これは、正岡子規の「真砂なす数なき星の其の中に吾に向ひて光る星あり」への返歌ではないだろうか。子規のこの歌は、拙著『空想の補助線』でも触れた好きな歌なのだが、小関の歌のペーソスも忘れがたい印象をのこす。

小関の師が前田夕暮と知り、前田夕暮の子息にやはり歌人の前田透があり、透に師事していた杉崎恒夫が国立天文台に勤めていた関係で、透に野辺山45m鏡を読んだ歌があるという話を前に書いたことを思い出した。

折り紙教室@府中 など2024/04/21 07:56

◆折り紙教室@府中
4/28(日)13:00-15:00、「郷土の森博物館出張体験イベント」で、折り紙教室を担当します。会場は京王線府中駅前の商業施設「ミッテン府中」9階のオープンスペースで、無料です。作品は「飾り兜」です。
飾り兜

◆『あやとりの楽しみ』
『数学セミナー』の4月号から長谷川浩さんの『あやとりの楽しみ』という連載が始まっている。4月号の記事中、あやとりを折り紙に対比する話に関連してわたしの名前もあがっていた。別のことろにも書いたが、わたしは、日本あやとり協会の初期メンバーで、あやとりの「手タレント」としてTVにでたこともあった。

この記事から、あやとりと数学の関係ということをあらためてすこし考えたのだが、直感的な数学らしい数学(?)より、順列組み合わせ的にパターンを確かめてゆくようなコンピュータ援用数学に向いた研究対象かもしれない、などと思った。

◆人形改造コンテスト
鳥山明さんが、タミヤ模型(田宮模型)主催の「人形改造コンテスト」という、1/35分の1のプラモデルの人形を用いてさまざまな造形を競うコンテストの常連で、金賞も受賞していることは、知るひとぞ知る話である。

じつは、わたしの名前がはじめて活字になったのは、その「人形改造コンテスト」の作品集で、中学生のときであった。作品は「考える人」、ロダンのあれである。応募したのは一度だけで、その後、前川少年はモデラーになることはなかった。作品集はどこかに紛れて手元からなくなってしまい、ずっと「第1回』だと思っていたのだが、いろいろ調べるとどうも『第2回』のようだ。

鳥山さんが亡くなったのは驚いたが、歳をとるのは、知っているひとたちが先に逝ってしまうことだとあらめて思う。今年になって葬式に2回参列し、先日もわたしより若いひとの訃報を受け、家族の悲しみを思うと胸が痛くなった。