近況など2017/08/25 12:40

◆『少年ノボルのオリガミ日記』
春に放映された『オリガミの魔女と博士の四角い時間』の外伝作『少年ノボルのオリガミ日記』第1話が、明日8/26(土)16:53-16:58に、NHK教育TVで放映される。

◆野辺山宇宙観測所特別公開
明日8/26(土)は、年に一度の、野辺山宇宙電波観測所(長野県南佐久郡南牧村)の特別公開日です。わたしは、45m電波望遠鏡のとなりの観測棟で、伝統的七夕(閏月もあるので、「七月七日」は、今年は遅くて、8月28日)にからめた、折り紙教室をやっています。

◆コンベンションの日々
8/11-8/13の折紙探偵団コンベンションでは、講習ふたつと、講義をひとつおこなった。講義は、スライドをつくっているうちに、新たなアイデアが浮かんできた。そういう意味でも、「ひとに伝えようと話をまとめてみる」のはよい。

今年の会場は、例年の東洋大学ではなく、東京大学の本郷キャンパス。夏休みの東大の構内は、海外の観光客も多かった。ハチ公と上野博士の微笑ましい銅像もあるぞ。

今年のコンベンションの特徴は、講演の充実だった。マーク・ボライソさんの、折り紙を使った広告などの仕事と、2018年の7OSMEの話、ベス・ジョンソンさんの、創作家のアイデアはどう生まれるのかという話、トーマス・ハルさんの、折り紙の科学・数学研究の近況、瀬名秀明さんの、折り紙マニアぶりと、それを生かした小説『この青い空で君をつつもう』の裏話、どれも聴きごたえがあった。懇親会では、瀬名さんと小松英夫さんが、藤子不二雄さんに関して濃い話をしていたのが、印象的だった。

そして、8/18-22は、韓国折り紙協会コンベンション(8/19-20)に招待されて、韓国に行ってきた。以前から、協会の会長のオウさんや、日韓折り紙界のパイプになっている山口さんから誘われていたのだが、日程が合わず行けなかった。韓国を訪れるのも初めてである。

Korea Origami Convention
写真は、展示室の一角である。韓国コンベンションの「巨大折り紙」は、会期中に折って飾られるので、できあがっていく様子を見ることができる。

Bandanna (Korea Origami Convention)
コンベンションの記念品は、バッジではなく、スカーフだった。もうひとりの招待者、香港のKade Chanさんのサメと並んで、わたしの悪魔がプリントされている。

挨拶以外の韓国語を知らないので、講習は、通訳さんと、身振りと、折り紙自体の「ユニバーサル言語仕様」が頼りであった。講演は、発表スライドを英語でつくり、日本語で話して韓国語に通訳されるという不思議な形式になった。Chanさんのスライドは英語と漢字だった。わたしも漢字も混ぜればよかったかもしれない。街の中の看板に漢字やアルファベットは少なく、教育での漢字の扱いもいろいろあるようだが、漢字を読めるひとも多いと聞いている。

韓国でも、日本と同様、中高年の女性と、小学生-大学生の少年・青年(主に男性)が、折り紙愛好家の主要な層である。これは、今だからなのか、将来もそうなのか、興味深い。

ハングルもまったく読めずに韓国に行ったのだが、ネームプレートを見ていて、カワムラさんの「カ(フト)」(ハングルをカナで代用表記しています)とマエカワの「カ(ヲト)」が異なっていて、へぇと思った。あとで調べると、濁音の概念が日本と違っていて、「フト」は語頭では「カ」、語中では「ガ」と発音され、「ヲト」とすると、常に「カ」とやや強い音で発音されるらしいことが判った。「ヲト」にしないと、マエガワになってしまうのだ。

ちまたでは北朝鮮のなんやかんやがニュースになっていたが、空港の警備も普通で、折り紙の世界は、それ以上に平和なのであった。

最近のわたしのスケジュールはなんだかぎっしりで、観光をした韓国の4日目が、ここ最近で一番のんびりできた日になった。

◆正三角形4面の対称的な交差
正三角形4つの交差と、正六角形4つの交差
先日、長谷川さんからいただいたモデルが、立方半八面体や八面半八面体の基本である、正六角形4面の交差モデルと同じ構造であるということに、いまさらながら気がついた。

立秋2017/08/07 22:10

嵐が近づいている。そして、立秋である。
数日前、3月ごろの話を、2、3ヶ月前と言ってしまった。光速に近いスピードで運動しているわけでもないのに、外の時間の経過が早くて、たいへん困っている。時間がない。ないようで、あるようで、やはりない。

◆プライベートギャラリー
昨日までの、プライベートギャラリーの公開では、いろいろなひとが来てくれた。下は、初対面となった「あそびをせんとや」の長谷川浩さんの「お土産」である。これは、組んだあとに畳めるところも面白い。
長谷川さんの組みパズル

◆オオハシみたいな鳥
オオハシぽい鳥
オオハシみたいな鳥ができた。多面体的な大きなクチバシが気にいっている。

◆オシドリ
オシドリ
14年前の作品「オシドリ」が「発掘」された。図を描いてみたい気もする。なお、「色を多く使うための複合折り紙」というアイデアは、笠原邦彦さんの作品から影響を受けたものである。

◆メモ蝶
先日、アニメーション映画・『メアリと魔女の花』(米林宏昌監督)を観てきた妻が以下のようなことを言っていた。
「メモ用紙を畳むと、それが蝶になって飛んでゆく魔法がでてきた。蝶は吉澤さんのものみたいだった」
たまたま、メモ用紙から折る「メモ蝶」という作品を考案したばかりであった。吉澤さんの作品とはやや構造が異なるものである。

◆多角形状の渦巻
天文関係者は、折り紙造形においても、らせん(渦巻)をモチーフとした作品に興味を示すことが多いような気がする。

関連しているような、していないような話である。
以前、ALMA望遠鏡で観測した、ちょうこくしつ座R星や、ペガスス座LL星の画像を見ていて、なにかに似ているなと思った。これが、堀内正和氏がデザインしたTシャツだということで、腑に落ちた、という話である。ガスが描く渦巻線の内側部分が多角形状に見えるところがあるところが似ているのだ。
ペガスス座LL星 ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), Hyosun Kim et al.
ペガスス座LL星 ALMA(ESO/NAOJ/NRAO), Hyosun Kim et al.

堀内正和デザイン
堀内正和氏デザインのTシャツ(ギャラリーTOM)

『Bamboo Waves』(ニコライ・ポリスキー)
これもちょっと、らせん(渦巻)状である。
1週ほど前、会期終了間際の「北アルプス国際芸術祭」で見た、『Bamboo Waves』(ニコライ・ポリスキー)という作品である。この写真ではスケールがわかりにくいが、巨大なものだ。同芸術祭で、布施知子さんが「無限折りによる枯山水」を展示していたので、見にいったのである。天候が悪い中、駆け足で数点を観ただけになってしまったのは残念だった。

折り紙講習会(東京府中市)など2017/07/10 23:49

◆折り紙講習会@東京府中市
案内が直前になってしまいましたが、7/16(日)、府中市郷土の森(東京都府中市)で、折り紙講習会をします。作品は、「ティラノサウルス」です。
小学生以上。要・事前申し込み。受講料(材料費込み):300円。

『秀麗な折り紙』(山口真著)
『秀麗な折り紙』
山口真さんの新著が刊行された。『端正な折り紙』の続編である。折り紙好きなら折ってみたくなる作品がたくさん載っているお買い得な本だ。
わたしは、「アーミーナイフ」(作図:小松英夫さん)を提供した。
アーミーナイフ

◆デッドライン
面白そうだったり、出番ですよと言われている感じの誘いをさまざま引き受け、もとからある予定とからみ合い、スケジュールが詰め込み状態になって、あたふたしている。

締切のあるものからこなしていくスタイルを、FIFO(First In First Out:待ち行列)にならって、FDFO(First Deadline First Out)と呼ぶのはどうかと考えたことがあるが、計算機のリアルタイム・オペーレーション・システム業界では、これを、EDF(Earliest Deadline First)と呼ぶのであった。

デッドラインというのも、考えてみれば、けっこう物騒な言葉だ。収容所でその線を越えると銃殺される境界の意味もあるらしい。

デッドラインというと、ウィリアム・アイリッシュの往年のミステリ『暁の死線(Deadline at Dawn)』も思い出すが、アイリッシュは、「明朝が締切です」という編集者の言葉から、このタイトルを思いついたのに違いない、と思っている。読んだのはずっと昔で、BGMに、Eaglesの『Lyin' Eyes 』や中島みゆきさんの『ホームにて』が似合うなと思った記憶がある。「都会で傷ついた、ア・ボーイ・ミーツ・ア・ガール」ものの元祖(?)である。

◆切頂八面体と野球のヘルメット
切頂八面体/2=ヘルメット
切頂八面体を、正六角形を中心にして対称的に辺で切って2分割したもの(正六角形×4、正方形×3)の展開図が、正方形内にきれいにおさまることがわかったので、折ってみた。そして、このかたちの正六角形ひとつを対角線で折り返すと、野球のヘルメットに似ている、ということに気がついた。耳当てが左右についているので、スイッチヒッター用・汎用のヘルメットである。

野球のヘルメットについては、思い出すことがある。はるか昔、高校でのことだ。自由と自治が校是の高校だったので、予算を、クラブの部長(学生)が集まって、会議をして決める。わたしも、某サークルの代表で参加していた。

野球部 「ちゃんとしたヘルメットが3つしかありません。満塁になると困ります」
他の部1「ヘルメットぐらい、個人で買えよ」
一同  「そうだ、そうだ」
他の部2「だいたい、おまえら、満塁にならねえだろ」
一同  「そうだ、そうだ」

結果がどうなったか、覚えていない。

『読書で離婚を考えた』(円城塔、田辺青蛙)
夫婦で本を勧め合うというエッセイ。連載時から話は聞いていたが、三谷純さんの『立体折り紙アート』が、円城さんによる田辺さんへの推薦図書になっている。円城さんは、この本を「読んだ」のであって、モデルをつくった形跡はない。いっぽう、田辺さんは、本文中に「見ていて楽しい(けれど)チャレンジすらしていません」とあるのだが、あとがきには「ぐにゃぐにゃになった紙の塊ができて」とある。料理をレシピ通りにはつくったことがないというひとが、いきなり凝った折り紙モデルをきれいにつくることの困難さは、想像するに難くない。

折り紙の本を「ただ読む」というのは、悪くないと思っていてる。円城さんの解説には、オルークさん、ドメインさん、ハルさん、そしてポール・ジャクソンさんの本も出てくる。

えーと、『読書で離婚を考えた』というこの本自体は、題名はこんなだけれど、犬も食わない話というか、「リア充爆発しろ」ってやつです。

ぼんやりしていても、いろいろある2017/06/07 23:04

「やるべきことがたまっているが、なんだか、ぼんやりしている」
と、ずっと言っているような気がする。

◆忘れていた
日本折紙学会の会員の継続を忘れていたことに気がついて、すぐに申し込んだ。会のスタッフなのに忘れていたのだ。困ったものである。

◆西川誠司著『折り紙学』
『折り紙学』(西川誠司)
学校図書館向けの『○○学』シリーズの一冊として企画された本。折り紙文化のアウトラインの説明として、さすが西川さんというバランス感覚だ。類書もない。わたしも、いろいろと協力した。

◆『切り紙に潜む物理』
『日本物理学会誌』に磯部翠さんと奥村剛さんの『切り紙に潜む物理』という論文が載っていた。きちんとは読んでいないけれど、面白そう。この研究は、数か月前にニュースにもなっていた。

◆パルマーさんの多面体
パルマーさんの多面体
10日ほど前、折紙探偵団九州コンベンションに参加したさいに、クリス・パルマーさんから多面体模型をいただいだ。スクリュー構造になって、内部にスペースがある。パルマーさんは、会うたびに、新しいアイデアを見せてくれる。

◆『メッセージ』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)
私的なベストSFと言ってもよい、『あなたの人生の物語』(テッド・チャン著)の映画化作品。チャン氏の小説を映像化するなら、『地獄とは神の不在なり』がよいのではないかと思っていたが、『メッセージ』(原題:Arrival)は、すばらしいできだった。原作で印象的だった、光学の「フェルマーの原理」の話がなかったのは、ちょっと残念だけれど。

たとえば、こんな言葉を思い出す。
 人は、時間の中で生きるのではなく、永遠の中で生きることは可能であろうか。
(ウィトゲンシュタイン『草稿1914-1916』:『ウィトゲンシュタインの生涯と哲学』(黒崎宏)内の部分訳から引用)

◆[P]athematics
先日読んだ小説・『私自身の見えない徴』(エイミー・ベンダー著 管啓次郎訳)に、こんな言葉があった。
Matehematics(数学)の中にはatheist(無神論者)の文字がそっくり含まれている。でも私にいわせれば、それは正反対。

なるほどなあ、と。ただし、すっぽりはまっているのではなく、アナグラムになっている。無神論者(atheist)ではなく、無神論(atheism)もある。そして、atheを含む単語には、以下のようなものもある。

bathetic:竜頭蛇尾、わざとらしい
pathetic:悲しい、無力な

ということで、内容の薄い数学を表現する言葉を思いついた。

bathematics : 内容のない数学
pathematics : 弱々しい数学

完全一致で検索すると、そこそこヒットした。意図的ではなさそうなものもあって、中にはamazonで書名がbathematicsになっているものもあった。ひどい。数学界でいう「ジェネラル・ナンセンス」(一般化しているだけ)や「トリビアル」(自明)を揶揄する表現にぴったりかもしれない。まあ、かくいうわたしも、pathematianというか、なんというか。

◆窪東公園のジャングルジム
窪東公園のジャングルジム
国分寺市・窪東公園の多面体トラス状のジャングルジムが面白い。内側のロープによる構造もよい。

◆武蔵野美術大学のピラミッド
武蔵野美術大学のピラミッド
先日行った武蔵野美術大学のピラミッドは、ルーブルのそれよりずっと小さいのであった。

「生きている折り紙」など2017/05/19 22:16

◆「生きている折り紙」
以下のイベントの案内が届いていた。
第94回サイエンス・カフェ札幌「生きている折り紙」 by 繁富(栗林)香織さん
@ 紀伊國屋書店札幌本店、5/27(土)。事前申し込み不要。
詳細:costep.open-ed.hokudai.ac.jp
細胞膜を使った、文字通り「生きている」折り紙の話。栗林さんは、先日も折り紙応用技術的なニュースの解説でTVに出ていたらしい。
この日、わたしは九州。主催のCoSTEP(北海道大学の科学技術コミュニケーションに関する社会人大学的なもの)では、わたしも来年の1月に講師をする予定。

最近、折り紙周辺のニュースがちょこちょこと。

◆テントウムシ
数日前、東京大学の斉藤一哉さんのテントウムシの後ろ翅の折り畳みの研究がニュースになっていて、なんで今なのだろうと思ったら、論文が公けになったということだった。ニュースでは、バイオミミクリ(生物をまねた応用)が強調されがちだが、研究自体に、誰にも伝わる面白さがある。テントウムシは、メタルの巻尺みたいな構造があって、後ろ翅を広げるのが得意で、しまうのは「手繰り寄せ」なのでやや時間がかかる(よって「シミチョロ」をよく見かける)とか、カブトムシは収納するのが得意だけれど、広げるには大きく羽ばたいて遠心力を使うとか。

◆『正解するカド』
『誤解するカド 』というSFアンソロジーがでていて、折り紙的、幾何学的な響きがある題名だなあと思っていたら、この題名の元になった『正解するカド』というアニメーションの中に、球体折り紙が出てきて、筑波大学の三谷純さんが監修していた。

謎の星空2017/05/09 22:49

原故郷のスラヴ民族
先日、国立新美術館のミュシャ展で観た、『スラヴ叙事詩・原故郷のスラヴ民族』。これに描かれた星空がぴんとこなくて、もやもやした。

まず、注目したのは、画面左上のU字をひっくり返した星の並びである。これは、かたちとしては、かんむり座(北のかんむり座)が近い。その右に四角があり、これをヘルクレス座とすれば、位置関係は合う。しかし、かんむり座は、北極星をはさんでカシオペア座と反対側にある星座で、U字の開いたほうを地平に向ける位置は、北半球では考えられない。南のかんむり座と見ると、その右にある星の並びがさそり座に見えてこなくもないが、そもそも、南のかんむり座は、中部ヨーロッパからは見えないだろう。

しし座の頭とするのが一番それらしいかもしれない。その右下のY字ぽいのは、明るい星が多すぎるけれど、かに座、下の地平線近くの円弧は、うみへび座と、こいぬ座。その右の縦長の五角形は、ぎょしゃ座に見えなくもない。1月から5月、中部ヨーロッパの西の空では、これに近いかたちで見えるかも。しかし、ぎょしゃ座の左にあるはずの、ふたご座はどこに行った。その右上にあるV字はなんだ。画面の右のほうもよくわからない。うーん、やはり、かなり苦しい。

というわけで、ミュシャは、基本は写実描写のひとだが、この星空は写実ではなく装飾的なものである、というのが、とりあえずの結論だ。...あ、なんかいろいろ書いたけれど、よい絵です。

『Pasta by Design』など2017/04/28 23:50

◎『Pasta by Design』
まず、前の書き込みの補足である。パスタの幾何学的形状については、いずれ本格的に考えたいと思っていた。フッジリについて考えたのもそれゆえである。

ただし、これには先行研究がある。最近、数学雑誌の編集者さんから教えてもらったもので、『Pasta by Design』(George L. Legendre)という本である。まだ入手していないのだけれど。

著者のルジャンドルさんという名前もインパクトがある。建築が専門のイギリス人のようだけれど、ルジャンドル変換などで有名な18世紀フランスの大数学者の子孫だったりするのだろうか。

さらに、『The Geometry of Pasta』(Caz Hildebrand、Jacob Kenedy)という本もある。ただし、こちらは、書名ほど幾何学ではないみたいだ。

『Pasta by Design』の表紙になっているファルファレ(蝶)は、可展面からの変形としてたしかに面白いが、コンキリ(貝)や、フッジリ(銃身)、カヴァタッピ(栓抜き、図)などのほうが、わたしは好きだ。食感ではなく、かたち自体がである。ジリというのもあって、百合の花ということらしいが、キクラゲみたいな「The・負曲率曲面」に見える。これらは、たぶん、型抜きでできているのではなく、製造工程によって「自然に」かたちづくられている。それらに比べると、ルオーテ(車輪)などは、すこし面白みが減る。
カヴァタッピ

フッジリは、旋盤の削り屑や、ネコザメの卵(あまりよい写真ではないけれど、10数年前に下田海中水族館で撮影。検索するともっと鮮明な写真がいろいろある)にも似ている。ネコザメの卵も、あらためて見ると、常螺旋面というより、類似螺旋面に近い。ただし中央部は円柱ではなく紡錘形である。
ネコザメの卵

紡錘形と言えば、そのかたちのパスタもあって、長粒種のコメみたいなかたちで、リゾーニという。これは、まさにコメの意味だ。小麦粉で米をつくるというのは、倒錯的だ。

◎「おりがみパヅル」と「入れ子風車」
折紙探偵団九州コンベンションが近づいてきた。まだ申し込んでいないが、今年も参加の予定である。

昨年の九州コンベンションで、面白いパズルの話を聞いたことを思い出した。名づけて、「おりがみパヅル」。折鶴のパズルなので、パヅルなのである。探したところ、問題を書いたコピーはとってあったのだが、出題者の名前をメモし忘れていた。

問題:1枚の正方形の紙に切り込みを入れて連鶴をつくる。11羽のものはいかに?
ただし、以下の条件とする。
(1)紙を余らせない。
(2)鶴の翼は、左右どちらも別の鶴の翼に接続する。

解くのに1時間以上かかった。
ネットを検索したら、出題者のブログに記述があったが、わたしが偉いひとみたいに書いてあって、汗顔である。

解答はどうだったかなと思い出す過程から、「千羽鶴」のバリエーションを思いついた。『千羽鶴折形』の「風車」を無限化(写真では3段階まで)したものである。上の問題の解答とはまったく違うもので、羽での連結もやめているが、繰り返しパターンがわかりやすくてよい。1か所ではなく、向かい合う部分を分岐させるなどのバリエーションも考えられる。シンプルな発想なので、だれかがやっていそうではある。
入れ子風車

◎蔵書
桑原武夫さんの遺族から京都市に寄贈された桑原さんの蔵書が、古紙回収に出されて処分されてしまったというニュースを聞いた。詳細を把握していないので、この件そのものへのコメントはひかえるが、ひとつ連想したことがある。

神保町の古書店の店頭で、趣味嗜好が明確な一群の本が並んでいるのを見ることがある。買い取って整理される以前のものだ。ある日見たのは、パズルと和算と数学の啓蒙書の取り合わせであった。「わたしに関心の近いひとが亡くなったのか」と思った。うちの蔵書の行く末を考えると、すこししんみりした。

東京ミッドタウンの螺旋面2017/04/26 21:08

防衛庁の跡地にできた「東京ミッドタウン」は、再開発から10年経つそうだが、行ったのは、先々週の週末が初めてだった。隣接する国立新美術館のミュシャ展を観に行ったのである。妻がミュシャを好きなのだ。


DESIGN SIGHT@東京ミッドタウン

「DESIGN SIGHT」という建物が、すこし折り紙的だった。設計は安藤忠男氏。安藤さんは、国立競技場のコンペティションの審査や、動線のはっきりしない渋谷駅などでいろいろ言われていて、わたしも渋谷駅は行くたびにイライラしているが、これは、とてもクールである。

 

ベンチ@東京ミッドタウン

誰のデザインかわからないが、街路樹を囲むベンチも面白かった。この写真では、壊れているようにも見えなくもないが、高さが変化しているのだ。様々な座高のひとが利用可能ということかとも思ったが、低いところが低すぎるので、機能的な発想ではないのだろう。

 

孔の空いた円に切り込みをいれて、切った部分を持ち上げると、ほぼこのかたちになるが、素材に伸び縮みがないとすると、そうはならない。このベンチの理想的な幾何モデルとなる「常螺旋面(right helicoid)」は、可展面(平面から変形可能な面)ではない。切り込みをいれた孔の空いた円を、なるべく面を水平に近く保つようにして、この方法で曲面にしようとすると、途中で大きく曲率が変わる曲面になってしまう。面を伸び縮みさせずに、よりなめらかな曲面とする方法は、面を円錐状に変形させ、末端をやや重ね合わせるようにして、縁をなめらかな弦巻線にすることだ。それは、弦巻線の接線の軌跡である「類似螺旋面(helical convolute)」という曲面となる(はず)。

helical convolute


と、考えていて、ふと思った。マカロニ、というかパスタに螺旋面状のものがある。フッジリと言われるものだ。漠然と、螺旋面だと思っていたが、はたして、それはたしかだろうかと。で、気になって、スーパーで買ってきた。中心に孔(基本の弦巻線が巻きつく円柱)はないものの、面は円錐状になっていて、常螺旋面より類似螺旋面に近いのであった。(下図:左:類似螺旋面、右:常螺旋面)

らせんマカロニ(フッジリ)


まいまいず井戸2017/04/24 21:48

日曜日、府中市郷土の森博物館の学芸員の佐藤智敬さんの誘いで、府中市郷土の森で折り紙教室の講師を担当した。以前、同博物館の「お稲荷さんの世界」展を観に行ったさいにできたちょっとしたつながりである。学芸員というのは、研究者でもあるわけだが、いろいろとアンテナを張って、幅広く頑張っているなあと感心する(某大臣の難癖とは違って)。

府中市郷土の森は、博物館の建物内だけではなく、野外の展示もある。私的な見どころとしては、「まいまいず井戸」の復元がある。らせん好き(ってなんだかよくわからない属性だが)なら見逃せない物件である。「まいまい(ず)」はカタツムリのことで、井戸に向かう道が、らせん状になっているのだ。
まいまいず井戸

郷土の森のこの井戸は、府中市内の別の場所で見つかったものを復元したものだが、本物としては、羽村市の駅前に、昭和30年代まで現役だったものがあり、これも、以前見にいったことがある。そこにある案内板には、「鑿井技術の未発達の時代に筒状井戸の掘りにくい砂礫層の井戸を設ける必要から、このような形態をとるにいたった」とあった。

この形態の井戸を指すとものとして、「ほりかねの井」という言葉もある。歌枕として、埼玉県入間市の堀兼神社の境内にある井戸のことだが、そもそもは「掘り難い」の意味で、武蔵の国周辺に多いこの井戸のかたちを指す言葉であるともされる。三十六歌仙のひとりである伊勢の読んだ以下の歌が、一番古いらしい。

いかてかと思ふ心は堀かねの井よりも猶そ深さまされる

上に「らせん好き」と書いた。別のところにも書いたことがあるが、らせんということばはけっこうややこしい。螺と螺で、DNA的な「弦巻線」と、蚊取り線香的な「渦巻線」を区別することもあるのだが、かならずしも一般的ではない。そして、この井戸の道のかたちは、弦巻線とも渦巻線ともすこし違ったconical helix(円錐弦巻線)である。弦巻線が、円柱にそったものであるのに対して、これは円錐にそっている。弦巻線と渦巻線の双方の特徴を持ったかたちとも言えなくもない。
conical helix

まいまいず井戸的なものといえば、野辺山宇宙電波観測所の展示室にあるブラックホールの玩具の、ボールの軌道もそうだ。この曲面は円錐ではなく、Flamm's Paraboloidと呼ばれる曲面だが、ボールのたどる軌道は、まいまいず井戸的である。
ブラックホール玩具

というわけで思いついた、伊勢の歌の現代物理学版が以下である。

いかでかと思う心は重力の井よりもなおぞ深さ勝れる

どうしてだろうと思う心は、重力井戸より深い。
なんか、かっこよいではないか。ちなみに「重力井戸」という用語は、物理学や天文学の用語というよりは、SF用語的なものだが、じっさいにある言葉だ。

そう言えば、先日読んだ『麗しのオルタンス』や、読み始めた『誘拐されたオルタンス』(ジャック・ルーボー著、高橋啓訳)に登場する、架空の国「ポルデヴィア」には、らせん崇拝があり、カタツムリが重要な動物とされているのであった。この国の井戸は、まいまいず井戸が相応しいだろう。

府中市で折り紙教室など2017/04/16 09:16

◆府中市で折り紙教室
4/23(日)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。

◆春まだ浅き
4/14NRO
(4/14の写真)
み山には松の雪だにきえなくに宮こはのべのわかなつみけり
(深山には松の雪だに消えなくに都は野辺の若菜摘みけり)
『古今和歌集』よみびと知らず

◆『数学セミナー』
『数学セミナー』5月号に、三谷純さんが、拙著『折る幾何学』の書評を寄せている。「近代折り紙の、新しく自由な世界が本書の中に凝縮されている」などと書いてあって、恐縮した。

『数学セミナー』5月号では、数学オリンピック金メダリストの中島さち子さんが、数学オリンピックを舞台にした青春映画『僕と世界の方程式』について、円城塔さんが『僧正殺人事件』などについて書いていた。今期からの『数セミ』は、こういう数学周辺情報を積極的に載せるようになっている。

『僕と世界の方程式』は、わたしも観た。主人公のネイサンより、脇役ルークの「僕には数学しかないのに」と思いつめた姿が胸につまされた。人間ドラマ中心で、数学の魅力や数学をからめたジョークなどはそんなに描かれていないけれど、以下の会話などはにやにやした。(うろ覚えで書いている)

マーティン(教師)「14の特徴は?」
ネイサン(少年)「自然数。ポジティブ・インテジャー(正の整数)」
マーティン「そう、ポジティブに、自然にってことさ」

ほぼどんな数字でも使えるけれどね。

いっぽう、『僧正殺人事件』である。少年の頃に読んで最も面白かったミステリは、ヴァン・ダインの『グリーン家殺人事件』と『僧正殺人事件』だった。評判の高い◯◯◯◯・◯◯◯◯の『◯の◯◯』を、『グリーン家殺人事件』の直後に読んで、「なんだ。グリーン家のまねじゃん」と思ったことを鮮明に覚えている。その後、大学2年のとき、「(化学科、物理科の)新入生にひとこと」といった企画で、次のように書いた記憶もある。
「入学おめでとう。君もこれで、青酸カリウムや放射性物質で遊べるぞ。僧正」
科学者が主要人物として登場する『僧正殺人事件』をネタに、ブラック・ジョークを気取ったもので、わかるひとにはわかるだろうという、お年頃らしい「ひけらかし」である。しかし、数十人の新入生の中に、ミステリ好きがいた可能性はきわめて低いので、ひとり相撲である。ちなみに、大学での危険物の管理は厳格であり、明確にジョークとして通用していた。念のため。それにしても、わたしはなんで大学で、ミステリ研(的なもの)にもSF研にもはいらなかったのだろう。心情が思い出せない。

『僧正殺人事件』をネタにということでは、10年ぐらい前に、山田正紀さんの『僧正の積み木唄』というミステリがあった。面白い趣向で、一気に読んだが、いくら疑似科学と断っても本職の物理学者があの数式はないだろう、あのミスディレクションは『僧正』の肝なのに...などとも思った。ただ、本作は『僧正殺人事件』へのオマージュというより、金田一探偵オマージュで、金田一ものを改めて読んでみたくなり、何冊か読んだ記憶もある。読者にそう思わせるのは、作者にとって「金田一もの」がただのネタではないということだ。

円城さんがほかに紹介していた、ジョルジュ・ペレックと、ジャック・ルーボーは読んでいない。面白そうなので、昨日、ジャック・ルーボーの邦訳を3冊買ってきた。
読みたい本がたまって困る。

◆「その官僚は、はじめから終わりまで一言も何も言っていないのと同じであった」
前にも書いたけれど、国会の「官僚的」な答弁を聞くと、太宰治の『家庭の幸福』を思い出す。この小説は、ちょっとした『教育勅語』のパロディー的な文章もあって、妙に同時代的である。70年も前の小説なのに。

◆4価のゴールドバーグ多面体
ニュースを見落としていたけれど、昨年の『Nature』12月22日号に載った論文で、フラーレンとは違うタイプの多面体構造の分子の発見が報じられていた。プレス発表はここにある。この多面体は、四角形と三角形から構成され、頂点に集まる辺の数が4である。なお、それらの多くは、四角形が平面図形ではなく、「ねじれ四角形」になる。