ヤムンツェルの多面体など2008/10/29 22:48

ヤムンツェル他
 写真左は、多摩美術大学情報デザイン学科十周年記念論集・『創造性の宇宙』(港千尋、永原康史監修)の口絵にあった図である。ニュルンヴェルクのヴェンツェル・ヤムンツェルというひとの多面体の図で、1568年のものだ。この口絵は、本文とは直接関連がなく、本のつくりにおけるプロムナードギャラリーのようなものなので、キャプションにある上記以上の情報はなかった。ヤムンツェル(Jamunzel?)に関するネットの検索にもなにもかからなかった。
 欧米には、脈々と多面体研究の伝統があると聞いている。ヤムンツェルさんもそのひとりなのだろう。オイラー(1707-1783)よりも、デカルト(1596-1620)よりも前に、ヤムンツェルは、証明はしなかったかもしれないが、オイラーの多面体定理に気がついていたのではないだろうか、なんてことも思った。図版上にVとあるので、I - IVも見てみたい。多面体を囲んでる円が、一筆書きのようになっているのも面白い。
 そして折紙者は、図・左中の多面体に「薗部ユニット90枚組」を見るはずだ。

 この本自体は、ぱらぱらめくっているだけだが、高橋士郎氏による「ムカルナス-空虚の装飾」という論文が面白い。ムカルナスというのは、今回初めて知ったが、イスラム建築の鍾乳石状装飾のことである。以前、代々木の東京ジャーミイ(写真右:礼拝堂扉、礼拝堂階段横)を見学させてもらったさいにも感嘆したが、イスラム建築の幾何的形象には、ほんとうに圧倒される。
 伊藤俊治氏の「ディープ・コスモロジー 宇宙からのイメージ」にあったOURSプロジェクトの話も興味深かった。彫刻作品を折り畳んで宇宙に運び、軌道上で展開する、といった計画である。
 物としての本自体も面白い。糸綴じで、ページを開いたままで置けるつくりになっている。こうした本は、料理の本、そして、綾取りや折り紙の本に相応しい。しかし、この本の場合はそれだけではなく、カバーを外すと、背表紙がない(糸綴じの部分が見える)という際立った特徴があるのだ。ほかで1度だけ見たことがあるが、この本と同様、永原康史氏の装丁だったのかもしれない。