七の花2007/10/03 21:52

 ヒガンバナは、ほんとうに秋分の日前後に咲くので、開花時期は気温と関係なく、日照時間に関連しているのだろうか、などと漠然と思っていたのだが、そういうわけでもないようで、寒冷地などでは8月末頃に咲くらしい。しかし、同じ地方で一斉に咲くのも、それ自体また不思議な現象である。
 『ヒガンバナの博物誌』(栗田子郎著)を読んで、この一斉開花に理由があることを知った。日本列島に分布するヒガンバナは、すべて、いわばクローンと考えられるのだそうだ。ソメイヨシノがクローンだというのは聞いたことがあるが、ヒガンバナもそうだとは知らなかった。
 ヒガンバナは、種子を結ばないか、結実しても発芽しない。それらは、球根の株分かれで増えてきたのである。原産地は揚子江流域と推定されている。大陸には種子を持つ系統もあるが、これらは、(とくに寒冷地というわけでもないのに)開花時期が早く、秋分の日前後ではない。
 日本列島への伝播には、人為説と、海流漂着などの自然によるという説がある。古代に食用(球根は毒抜きをすると食べられる)・薬用として渡来したという説には説得力があるが、そもそもが観賞用で、秋分の日前後に咲くものがつくられ、人工交配がゆえに不稔(交雑などの結果、受粉、結実できないこと)になった、なんて話も想像してみた。

 というようなヒガンバナであるが、同じ遺伝子であっても、よく見れば、まったく同じように咲くわけではない。じっさいに近所に咲いていたヒガンバナを観察したところ、花の数は、ひと株に5個、6個、7個などがあり、決まっていなかった。ひと株の花の数というのは、遺伝情報だけで決まるのではないということなのだろう。
 なお、7回の回転対称というのは、花として珍しい。写真にあるように、ヒガンバナの7つの花もきれいな回転対称のものは少ない。ホンシャクナゲの7裂の花弁(14本のオシベ)も、回転対称とはちょっと違う。

テレビ2007/10/05 01:57

 昨日、折り紙のことで、テレビの取材を受けた。番組は「アッコにおまかせ!」(TBS系10/7 11:45〜12:50)で、番組の終わり近くのコーナーになるらしい。話を聞いてから取材まで一日というスケジュールで、ばたばたとしているうちに、ビデオ撮りが終わった。気の利いたことは言っていない、というか、「ああ、あんなふうに言わなきゃよかった」なんて思うけれど、なんというか、まじめに(?)つとめた。
 テレビの現場で働いているひとというのは、ほんとうに若いなあ、元気だなあ、と感じた一日。

天使のはしご2007/10/05 23:29

 今日の昼過ぎ、ふと外を見ると、「天使のはしご」が見えた。雲間の太陽からの光が、散乱によって放射状の線として見える気象現象である。年に何回か見ることがあるので別に珍しいものではないが、「天使のはしご」と言われるだけあって、ありがたげで、宗教画の雰囲気がある。「ヤコブのはしご」「レンブラント光線」とも言うとのことだが、レンブラントというより、わたしはいつも、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒの『山上の十字架』のそれを思い出す。

七角形と言えば2007/10/08 10:49

 ちょうど7年前になるが、初めて行ったイギリスで(正確には、まず行く前にガイドブックで写真を見て)、50ペンスと20ペンス硬貨に感動した。なにに「感動」したかというと、それらが正七角形であることに対してである。その硬貨は、いまでもひとつずつとってある。正七角形と書いたが、正確には、「ルーローの七角形」で、このことに、さらに感じ入った。辺が直線ではなく、反対側にある頂点を中心とする円弧になっているのだ。ちょっとふくらんだ七角形である。こうすることによって「定幅図形」になっている。円と同様、どこをとっても幅が一定の図形である。定幅図形にしないと、自動販売機の内部などでつっかえることがあるので、そうすることは重要なのである。The Royal Mintというコイン販売店の説明によると、1969年から七角形になったようだが、デザインに関与したひとの名前はわからなかった。かつて、かのM.C.エッシャーがオランダの紙幣をデザインしかけたことがあった。イギリスの七角形コインにも、数学センスのあるひとがからんでいるはずである。
 なお、正七角形は、定規とコンパスだけでは正確に作図できないが、折り紙で、ふたつの点をそれぞれふたつの線上に同時に合わせる折り方(阿部恒さんが編み出した方法。不自然な折り方ではない)を用いると、正確な作図が可能である(初めてそれを示したのは故・藤田文章さん)。

 ところで、昨日テレビで紹介されたことで、このブログのアクセス数や、本の注文が急激に増えている。ありがたいけれど、落ち着かない気持ちだ。

ラジアン池2007/10/09 00:25

 20、50ペンス硬貨の縁が円弧になっている、という前の記事を読んだ妻が、出身高校(都立戸山高校)の「ラジアン池」の話を始めた。一見三角形に見える池が、実は1ラジアンを表しているという、高校の名物なのだそうだ。
 ラジアンというのは、角度の単位で、360度=2π(6.28....)ラジアンである。角度を半径1の円弧の長さで表したもので、これを使うと式がすっきりするので、技術者、研究者は日常的に使っている。1ラジアンは60度よりわずかにせまい57.29...度だ。
 それにしても、なんでラジアンなんだろうと思ったが、同校は旧制中学時代、東京府立第四中學校(四中)であり、四と中の字を組み合わせた校章(右図)を使っていた。これがπ中と読める、と、まあ、そんな話に由来するらしい。
 ただ、池ができたのは新制になってからである。また、なぜ半円形(πラジアン)ではなく、1ラジアンなのかは、わかるようでわからないが、池の形状は、つまり、上の左図である。さらにネットで調べたところ、ラジアン池は、2005年の校舎改築のさいにつくりなおされ、水面は(2π-1)ラジアン(中央図)になっていた。(都立戸山高校・1956(昭31)年卒業生のページ

横浜と幕張の多面体2007/10/13 10:34

 1週間ほど前、横浜でデルタ十面体の街灯を発見した。きちんとした確認はしておらず、この角度しか写真を撮ってないので、もしかしたらデルタ十面体ではない(面が正三角形でないなど)かもしれないと少し不安(?)だが、いずれにせよ正多面体や準正多面体、球でないのは珍しい。なお、右は、5年前東京ディズニーランドで発見した、ケプラーの小星形十二面体である。同所でわたしが一番感心したのはこの街灯で、こういう芸の細かさが、かの地の人気の秘訣なのだろうと思った。