カーボンナノチューブとフラーレン ― 2007/09/26 00:59

15年ぐらい前、発見直後の飯島さんによる、竹カゴの構造とカーボンナノチューブの類比という発表を聴いたことがある。国際シンメトリー学会という「かたち好き」の集まりにおいてで、わたしは折り紙研究家としての参加だった。
折り紙とカーボンナノチューブは、日本物理学会誌の8月号表紙でも不思議な接近(?)を見せている。(永田紀子さんの情報) カーボンナノチューブを使ったシートよる折鶴である。(斉藤毅さん他の論文) シート素材ができると折鶴を折ってみたくなってしまうのは、日本人の性なのかもしれない。
カーボンナノチューブとノーベル賞と言えば、ナノチューブの「親戚」であるフラーレンの発見でノーベル賞を受賞することになったクロトーさんの講演も聴いたことがある。そのときは、フラーレンの代表・C60を表す32面体の折り紙モデルをプレゼントし、お返しに、C60発見時のスペクトル線の図をいただいた。「C60(?)」と、?つきなのが、いかにも一次資料のコピーという感じで生々しいが、「玄人」(クロトー)の印鑑も面白い。
ただ、いまこの折り紙モデルを見ると、結合構造的には、32面体の稜線をモジュール化したほうがよりよかったと思う。モデル自体は好きなのだが。
九字(ドーマン) ― 2007/09/28 00:31

その軒瓦は、古いものではない。三重県鳥羽市の海の博物館の軒瓦である。五芒星(☆晴明紋:セーマン)と九字(ドーマン)は、志摩地方の海女が身につける魔除けとしても知られるので、博物館の屋根をこの瓦で飾った、ということらしいが、施工した業者さんのちょっとしたミスなのだろう。
向きは違うが、この軒瓦の九字紋はよくできている。格子の前後関係もきちんと刻印されているのだ。そう、九字紋の格子には前後関係の決まりもある。これは、いわゆる「九字を切る」という所作に基づいている。「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」と唱えながら、指を縦横に動かす呪文、忍者なんかがするあれだ(中央図)。できあがった図形は、秩序だってはいるが、単純な対称図形ではない。
家紋としては、遠山金四郎がそうだったらしい、遠山九字直違紋がある。(右図:ただし、中央図と比べると、前後(または上下回転)が逆になっている点には注意されたい)
この紋は、かつて『数学セミナー』に連載されていた、伏見康治先生の家紋の幾何学的研究において、最もややこしい紋としてとりあげられていた、と記憶する。
なお、『魔よけ百科』は、オカルトとは無縁の、魔除けの図像を博物学的に見るという本である。この本で初めて知った、九字に関するちょっとうれしい知識もある。鎧を納める具足櫃に「前」という字が書かれることが多いそうなのだが、これは「前」の字が九画であることから、九字を意味するためであるという。「前」の字が九字(ドマーン)を表すのであれば、姓に「前」の字を持つわたしは、自分のサインが魔除けになる。
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