感想 ― 2007/07/28 10:04
わたしが手をまわしたのではないかと疑われそうな絶賛もあるが、やはり「難しい」という感想もあった。それは、作品自体でもあり、図や説明でもあるだろう。しかし、「難しい」と言っていたひとが、「わかった」とひざを打つことになるという、著者にとって最高の喜びもあった。あとがきにも書いたように「わたしの個人的な「ユリイカ!」(わかったぞ!)を多くのひとと共有したい」というのが、本をつくった大きい動機なので、これはなによりうれしかった。
解説部分については、過剰なものと見るひともいるだろうが、三浦公亮先生からの「かこみの部分がとてもよく、参考になります」というコメントが、ほんとうにありがたかった。逆に、物足りないというひともいるかもしれない。
今週末には、日本折紙学会の隔月機関誌『折紙探偵団』の最新号も発行される。エッセイを連載中である。ふだんのわたしを知るひとからは想像がつかないだろうけれど、自分の文章が載った雑誌などは、面映ゆくてしばらくは身の回りから遠ざけてしまう。こうしたネットの文章にはあまりそういうことはない。なぜなのだろうか。
用語 ― 2007/07/20 08:08
AMAZONでは、いきなり在庫切れ。入荷数が少ないだろうから、早くも幻の本になっている。
さて。誤植はある意味わかりやすいけれど、それとは違って、いまになって「気になる用語」というものがある。
- その1
- ミウラ折りの学術的な名称として「二重波形可展曲面」と書いた。過去にこう記されていたのだが、これは、そもそも「developable double corrugation surface」の訳語のようなものだ。developable とsurfaceという単語は頭と末尾で離れているが、通常、developable surfaceは「可展面」と表記する(ただし、中国語圏では「可展曲面」のようだ)。surfaceは工学や数学では「曲面」とする場合が多く、曲面は平面をも含むが、ミウラ折りは平面の組み合わせであり、曲面という言葉は誤解を招くところもある。三浦先生も、最近の論文で「二重波形可展面」としていた。よって、変更の機会があれば、「二重波形可展面」にしようと思っている。
- その2
- 沈め折りの一種・open sink foldは、英語圏で成立した用語(概念)である。これを「開く沈め折り」とした。ふつうに和訳すれば、「開いた沈め折り」になるが、全体をいったん広げるようにして押し込むという手順の感覚を伝えたいとの思いがあって、このようにした。つまり、以下のようなことである。
「閉じた(ままの)沈め折り」⇔「開く(ようにして)沈め折り」
しかし、「開いた沈め折り」は、ある程度定着しているとも言え、「開く沈め折り」は、語感としてもよいと言い切れないところもある。
- その3
- 「平織り」、つまりモザイク模様のような折り紙のことに関して、tessellation origami と書いたが、通例では、origami tessellationという語順のようだ。
なお、折り紙の本の場合、重要なのは、文章よりも図である。これは、(営業的に言えば)折り紙が特別に得意ではないひとが図を見て折り、つまづいた部分を修正してあるので、大きな間違いはない。はずである。
誤植 ― 2007/07/16 15:23
ある意味わかりやすい間違いで、本文や図のキャプションは正しいので、笑って見逃してください。
『本格折り紙』誤植諸般の事情(初版の事情とも言う、って、こういうときにもダジャレかい)で、チェックが甘くなってしまった箇所である。
51ページ ユニマット折り紙(誤)→ユニット折り紙(正)
108ページ 正面体(誤)→正多面体(正)
前者は、最近大きな爆発事故を起こした会社の名前だ。
校正の重要さ・おそろしさを戒める「校正おそるべし」というシャレ(論語の「後生畏るべし」から)は、明治の世からある定番らしいが、はじめて知ったのは、花田清輝氏の同名のエッセイによってだったと記憶する。「芭蕉扇」(『西遊記』で、火焔山の火を消す扇)が、すべて「芭蕉翁」(松尾芭蕉のこと)になってしまったという内容で、孫悟空が松尾芭蕉を振り回すという図はそれはそれで面白いかもしれない、なんてことを花田氏は書いていた。
芭蕉翁と言えば、誤植に関する俳句があることを、ネットを検索して知った。
「また一つ誤植みつけぬみかん剥く」(久保田万太郎)自分の文章の校正をしているさいに詠んだのだろうか。そこにあるのは、諦念というか諦観というか、まさに俳諧の境地だ。わたしもみかんをむきたくなったけれど、季節外れだ。
何年か前にでた本だが、誤植の精霊(?)のひき合わせか、つい先日読んだ北村薫さんの『ミステリは万華鏡』(2002/09)にも次のような話があった。あるミステリ小説を文庫化したさいに一行完全に欠落してしまったために、推理のつじつまが一部で合わなくなっていた。しかし、その本は、一読者の疑問があるまで何十版も版を重ねてしまっていたのである。
新著『本格折紙』 ― 2007/07/13 21:55
書店に並ぶのは7月20日前後とのことです。
ありていに言えば、このブログを始めたのにも、販売促進という意味があります。
この文章も、営業モードなのか、それまでの記事と違って「ですます調」になっています。
あはは。わかりやすいですね。
『本格折り紙 −入門から上級まで−』 前川淳
日貿出版社 2200円+税
副題に「入門から上級まで」とあるように、折り紙好きのひとはもちろん、折り紙になんとなく興味を持っているひとにも勧めることができる本をめざしました。一方で「本格」ですから、専門性の高い本という一面もあります。後者に関しては、どこまで読者に伝わるものができたのか、わたし自身は評価はできませんが、さまざまな思いを込めました。
未発表作品・新作もたくさん掲載しています。既発表作品も、図は描きおこしです。
帯の文は、ミステリ作家の綾辻行人さんに書いてもらいました。
横溝正史賞の『首挽村の殺人』(大村友貴美著)と勘違いして買っていくひとがいるはず(?)です。
帯の文と言えば、かつて、綾辻さんの『時計館の殺人』に「神か悪魔か綾辻行人か!」という惹句がありました。わたしと綾辻さんが逆の立場だったら、以下のようなネタを使ったような気がします。
「紙の悪魔だ。 綾辻行人」
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