両断多面体22011/10/01 10:52

両断多面体2
平面で二分割されている多面体を、変則用紙の一枚折りでつくる両断多面体シリーズのつづき。

正二十面体もできた。このシリーズで自分でもうけていたルールのひとつ「面が二重になる部分をつくらない」に反してしまったけれど。

正四面体は単独ではきれいにいかないので、双子にしてみた。同じ展開図で別の組みかたもあるが、写真のパターンがよい。
展開図もX、切り込みもX、出来上がりもX(見る角度によっては単独のXになる)で、ゼロックス社の立体商標に採用してほしいぐらい(?)のすっきりしたできになった。

落葉松とビュフォンの針2011/10/02 22:47

落葉松とビュフォンの針
先日の台風で落葉松(からまつ)の大きな枝が折れた。今日それを片付けようとして、小さな葉を頭からあびた。まだ落葉には早いが、枯れていたので、派手に散らばった。しばらくたって、上着のポケットに中など、思いもかけないところに大量にはいりこんでいたことに気がついた。落葉松の葉は細かくて数が多いがゆえの厄介さがある。上の写真は、昨冬、車のボンネットに降り積もって朝霧ではりついたものだ。

こうした葉の散らばりかたから、「ビュフォンの針」が実測できるかも、と考えた。「ビュフォンの針」というのは、18世紀の科学者・ビュフォンが示した、次のような命題である。

針の長さと同じ幅の平行線をひいた床に針を落とすと、線と針が交差する確率は、2/πになる。

折れた枝を紙の上でふって、葉をまくと、これぞランダムという感じにばらけた。が、よく見ると、落葉松の葉の長さ自体にばらつきが多く、曲がっているものも多い。しかし、「えいや」と単純化して、平均的な長さを見積もり、それで平行線をひき、カウントしてみた。 めんどうなので、狭い範囲でおこなった。みじか過ぎるものも無視した。結果、葉は85本。線と交差する葉は44本であった。πになるはずの値は3.9になった。葉の長さの見積もりも適当な目分量で、分母も少ないので、微妙な値ではあるが、それらしい値と言えないこともない。

両断多面体シリーズ32011/10/03 23:51

平面で切断されたサッカーボール
両断多面体2で示した正二十面体は、抜けている面が二面あるのに、二重になる面も二面あって、若干不満だったが、正二十面体の頂点を切り落とした切頂十二面体(サッカーボール多面体)にしてみたところ、六角形の面二十面を、重なりのない面にすることができた。しかも、スリットが「切断面」の縁まで達さないので、面の余計な延長もなく、すべてきっちり正六角形の面になった。

ねじれ立方体など2011/10/08 11:00

ここ数日、空いた時間は、ほとんど「ねじれ立方体」関連のことを考えていた。予定表が埋まっているときに限って、関係ないことに熱中するのは、なぜなのだろう。試験前になると、小説を読んだり、パズルに熱中していた学生時代と変わらない。

発端は、切断面のある一枚折りで、ねじれ立方体をつくろうと考えたことである。ねじれ立方体(snub cube)というのは、正方形6面、正三角形32面からなる半正多面体である。歪立方体、変形立方体、ねじれ立方八面体などとも呼ばれる。正方形6面が立方体の面の位置にあり、面の向きを変えずに回転して縮小されることでできた隙間を、正三角形でつないだ立体だ。カリフォルニア工科大学のベックマン研究所前にある噴水が、この立体になっている(写真)。Sculptural Works California Institute of Technologyというページによると、鉄貯蔵タンパク質フェリチンの対称性を模したものということだ。(鉄貯蔵タンパク質フェリチンに関しては、このページ(日本蛋白質構造データバンク)の図を参照されたい。ナノスケールのカプセルで、自然のみごとさに感心する)

Snub cube at Caltech

Snub cubeという言葉だが、なぜtwistなどではなく、snubなのかがわからないので、これもすこし調べてみた。snubは、「鼻であしらう。船や馬などを急に止める。ぶっきらぼうな、獅子鼻の、ずんぐりした」といった意味だ。Snub cubeは、『プラトンとアルキメデスの立体』(ダウド・サットン著、青木薫訳)によると、ケプラーが名づけたラテン語の「クブス シムス」の訳ということだった。羅英辞典によると、cubusは、cubeのことで、simusには、たしかにsnub-nosed(獅子鼻の)の意味もあるようだが、splayed(斜めにする)ともあった。英語のsnで始まるsnob(鼻にかける)、snore(いびき)、sneeze(くしゃみ)、sniff(嗅ぎまわる)のような「鼻単語」よりも、「曲がった」という、より一般的な形容詞なのではないだろうか。単なる直訳なのか、「ぶっきらぼうなキューブ」というのは、どこかジョークぽくなっている。

さて。この立体は、正方形と正三角形という、いわば単純な面からなるのだが、まさに「ねじれて」いるので、対称面、切断面はけっこうややこしい。いくつか「両断シリーズ」を試したが、どうも扱いづらい。というか、わたしは、この立体に馴染みが薄かった。折り紙でも工作でもつくった記憶は、1回あるかないかだ。

そこで、まずは、ユニット折り紙の手法でつくってみることにした。使うパターンは、図の左端を基本にして、その6枚組にした。三角形8面を凹にするつくりである。写真左は、余計な折り目なしの、図左端の変則八角形でつくったもので、かなりきっちり組めた。厚手の紙を使うと、このままパッケージになりそうだが、組むのは易しくはない。このパターンを正方形用紙からとることは難しくない。AとBのふたつが考えられ、Bのほうがやや効率がよい。写真右はBからのものだが、折るだけで作図したので、余計な折り目がついた。

ねじれ立方体

さらに、この折り目の変形を試行錯誤するうちに、Aパターンからの6枚組みで立方八面体になるものができた(写真左下)。このモデルは、途中で現れる模様などが「折り紙的」にじつに面白い。さらに、上のねじれ立方体と同様の三角形八面を凹でまとめるという技法を使って、正方形の三等分の折り目で、斜方立方八面体の6枚組もできた(写真右下)。これは、単純な(まさにひねりがない)ので先例がありそうだ。

立方八面体、斜方立方八面体

ねじれ立方体に戻って、正方形の面を穴にすることを考えると、このブログの「ユニット貼り紙など」で示した正三角形からのモジュール8個で、きれいに組むことができた(写真左下)。写真右下は、同じモジュール20枚組のねじれ十二面体である。かなり脆弱になるが、ねじれ十二面体は、正多面体、半正多面体の中で、最も球に近い立体なので、ころころとしてよい感じである。しかし、モジュール数が20個になると、それを折るだけでたいへんである。わたしはあまり数の多いユニット折り紙をしないけれど、布施知子さんや川村みゆきさんは、いったいどうやってモチベーションをあげているのだろう、とあらためて思った。試行してうまくいかなったときは落ち込むだろうなあ。

ねじれ立方体、ねじれ十二面体

このユニット折り紙のように、これらの立体は、鱗紋のような「正三角形4枚つながり」の組み合わせで構成できる。それは、以下の表のようになる。表題の赤い部分が接合線である。

ねじれ多面体表

この表から、正二十面体を「ねじれ四面体(snub tetrahedron)」として解釈可能であることに気がついた。よく知られたことなのかと、snub tetrahedronで検索すると、Wikipedia(英語版)にもその旨が書かれていた『多面体』(P.R.クロムウェル著 下川航也 他訳)にも「問題 なぜ「歪四面体」がないのかを説明せよ。それを作ろうと思っても、よく知られた多面体になるはずだ」とあった。

この発想はさらに敷衍が可能である。かなり強引だが、正八面体を「ねじれ三面体」と考えるのである。三面体? 「二角形」3面からなるかたちである。「二角形」は、球面を三等分した舟形(図)と考えればよい。正八面体では、この舟形がスリットに変形するわけだ。なお、正四面体を「ねじれ零面体」や「ねじれ一面体」と考えることはできない。そもそもこれは、接合線の規則からはずれているからである。

三面体(?)

葉っぱ玉など2011/10/10 23:11


葉っぱ玉など

木蔭

ねじれ十二面体の構造を、かるく折った菱形でつくってみた。まずは、写真左のように、ホチキスでとめてみた。じっさいにつくってみると、すかすかした感じがなかなかよい。菱形が葉のように見えたので、葉脈を印刷した菱形でもつくってみた。こちらは、ボンドで接着した。

「葉っぱ玉」のほどよい「すかすか感」は、写真のような木蔭の密度を連想させる。そういえば、シェルピンスキーのギャスケットを使った日除けを、以前ニュースで見たことがあった。検索すると、京都大学の酒井敏さんによる、フラクタル日除けなるものだった。

この葉っぱ玉の6枚組み(正二十面体構造になるもの)をあらてめて見ていて、川畑文昭さん命名の「フラストレーションユニット」(組みが脆弱なので組むのにいらいらするが、糊付けなしでなんとか組めるユニット折り紙)の技法で、6枚組みの正二十面体ができるのではないかと考えた。いろいろやってみたが、糊なしでは難しかった。じっさいにきれいに組めるものとして、1:√3長方形によるモジュール4つ、同じ比率であるが1/3の大きさの長方形のモジュール2つの6枚組によるものができた。

摺紙成禽術(?)など2011/10/25 22:47

『諸怪志異 第三集 燕見鬼編』(諸星大二郎著)
気がつくと、ブログ更新が二週間あいていた。二週間はあっという間だ。二ヶ月も二年も、往々にして、あっという間で、ややもすると、二十年もそんな気がする。

ということで、この二週間から、話題をいくつか。

『諸怪志異 第三集 燕見鬼編』(諸星大二郎著)に、紙を畳んで鳥をつくり、それを生きた鳥のように飛ばすというシーンがでてきた(写真)。『宇治拾遺物語』にある安倍晴明のエピソードに似ている。剪紙成兵術という仙術があるけれど、これは、さしづめ、「摺紙成禽術」である。

◇故マーティン・ガードナーの誕生日に、「マーティン・ガードナーの生涯を祝う会」という集まりに参加した。遊戯数学好きの会合である。スリンキー(階段を降りるバネ玩具)を伸ばした状態で落下させるとどうなるか、という話題が面白かった。「スリンキー 落下」で検索するといくつかヒットする。重心は自由落下だと思うが、バネが縮むまで下部が停まって見える不思議な動きになる。

◇甲府の病院で放射性物質テクネチウム99mの過剰使用が問題になったが、先日、こんな話を聞いた。テクネチウム99mを使った検査をして帰宅すると、線量計が振りきれた、というのである。この話も世田谷のラジウムも、線量計を持つひとが多くなったからこそと言える。「そういう時代になったのである」という思いがある。なお、テクネチウム99mは、生体にとどまることはなく、半減期も6時間余とのことだ。半減期6時間余ということは、3日間で約4000分の1になるという計算である。