『千代紙 折紙』2011/02/06 22:22

 ひとつ前の記事に書いたように、『数(日本の名随筆89)』の一編を再読したのだが、『日本の名随筆』というのは、『日本の名随筆』(本巻)『日本の名随筆・別巻』の各百巻からなるアンソロジーシリーズである。1980年代から1990年代に編まれたもので、本巻は『花』『鳥』など一文字、別巻は『映画』『骨董』など二文字のタイトルがつく。
 このシリーズで、既に持っていたものは、『紙』『数』『石』『野球』であった。『石』は最近買ったものだ。われながら、たいへんわかりやすいラインナップだと、笑ってしまった。
 昨日、本巻の『宙』『藝』、別巻『星座』を入手した。『藝』をもとめたのは、ウェブのリストを見ていて、『千代紙 折紙』(芝木好子著)という一編があることを知ったためである。芝木さんが河合豊彰さんを訪ねた話が記されていた。
なにごとにせよ、初めに創り出すことが大変であり、意義があるのは言うまでもない。模倣は少しも苦労ではない。河合氏は今の具象から次第に抽象へゆきたいと考えているそうである。しかし、どの道一枚の四角い色紙のなかからあらゆる可能性を引出して、一つの造形のゆきつくのだから、新しく生まれたものを手にする時の思いは格別だろう。
(『千代紙 折紙』芝木好子著  『杏の花」1977より)

四角の中の五角2011/02/07 21:47

四角の中の五角
 以前、『堀内正和 アトリエのない彫刻家』展(ギャラリーTOM 2006)で、『四角の中の五角』と題された彫刻作品の雛形をみた。四角錐を切断し、その切断面を正五角形にしたものだ。ありそうでなかった(すくなくともわたしは、ほかで見たことがない)もので、「さすが堀内さん」と思ったのだが、細かい比率を確認しないままになっていた。ふと思い出して、計算してみたところ、以下だった。

 四角錐は、側面が正三角形のもの(つまり正八面体を半分にしたもの)である。
 底面と切断面の二面角は、tanθ=1/φ(φは黄金比)となるθ(約31.7度)である。

 四角錐が「素直な」比率だったのは、ちょっと予想外だった。

四角の中の五角 その22011/02/09 21:30

四角の中の五角
 図は、堀内正和さんの『四角の中の五角』をふたつ合わせただけのものだが、くさび状になると、また違った印象になった。

 『四角の中の五角』といえば、アメリカ国防総省ペンタゴンがそうなっている。正方形の区画の中にペンタゴン(五角形)があるのだ。ただし、当初はきれいな正方形だったワシントンD.C.であるが、いまは、ポトマック川の西側はワシントンD.C.ではない。国防総省もそこにある。

四角の中の五角 その32011/02/12 23:13

四角の中の五角
 堀内正和さんの『四角の中の五角』を、自分でもじっさいにつくってみた(図・写真 上)。展開図が「亀」と「キューピッド」みたいだ。不等辺四角形と不等辺三角形は、正三角形を分割したもので、その分割点の比率は、黄金比(約0.61:約0.38)になっている。

 さらに、より「折り紙的」技法ということで、透明素材による一枚折りを試してみたものが、図・写真下である。まとまりのよさを優先して、展開図の対称性はくずした。
 「合格→五角」ということで、合格のお守りにどう?

ふたつの立方体2011/02/13 09:32

ふたつの立方体
 正方形二枚組である。鏡像ではなく、まったく同じものふたつを、回転対称に組み合わせる。展開図の内側の長方形は1:√2である。けっこう難度の高い面白いパズルになった。

四角の中の五角 その42011/02/14 22:49

(1)近似値
 記憶だけで検討していた、『四角の中の五角』であるが、オリジナルの確認をしていなかったことに気がついた。『彫刻家 堀内正和の世界展 図録』(2003年11月)で確認したところ、オリジナルは近似を使っているようだった。
 写真を読み取ると、正三角形の面に、各辺を八等分した斜めの格子が描かれていて、切断面がその格子点に基づいているようなのである。つまり、黄金比φ=(1+√5)/2=1.618..ではなく、8/5=1.6、5/3=1.66..という値を使っている。

(2)五面体
 正四面体には正方形の切断面があり、立方体(正六面体)には正六角形の切断面がある。そして、五つの面を持つ立体・四角錐には正五角形の切断面がある。このことから浮かぶ問いは、もうひとつの五面体である三角柱(五面体はグラフ的には2種しかない)からも正五角形の面が切り出せるだろうか、というものだ。しかし、残念ながら、これはできないのであった(きちんと証明はしていないけれど)。

(3)無理数の近似における「7」
 (1)に関連した話である。無理数の近似といえば、次のようなものがある。精度にばらつきはあるが、みな7を使っているのがクールだ。

√2 ≒ 7/5 ≒ 10/7
√3 ≒ 7/4 ≒ 12/7
自然対数の底 e ≒19/7
円周率π≒ 22/7

 √2≒7/5や、√3≒7/4は、折り紙で使ったこともある。使う機会はあまりなさそうだが、上の式から得られる e≒1+√3と、π≒√2+√3いった式も、ちょっと面白い。
 いっぽう、黄金比φには、7を使ったよい近似がない。黄金比の近似は、フィボナッチ数列の2項の比で表せるが、この数列に7はない。(フィボナッチ数列:1,1から始めて、2項の和を次の項にする:1,1,2,3,5,8,13,..)
 √5ならば、φ≒5/3から、√5≒7/3と、「7がらみ」の式も得られるが、これはちょっと精度が低い。

『七』と『第七官界彷徨』2011/02/15 22:37

『七』と『第七官界彷徨』
 昨日、7という数字のことをちょっと考えたので、花田清輝さんの小説『七』を思い出し、読み返した。(『七 錯乱の論理 二つの世界』(花田清輝著)所収) 
 ドイツを舞台に、日本人学生の目を通して、七という数に取り憑かれた若き学者・ペーテル・ペーテルゼンなる人物を描いた短編である。
七は、七という数の持つ力は、僕がいくら捨てようとしても、また僕が、そんなたわけたことがあるものか、といくら自分自身を説得しようとしても、いっかな僕から離れようとはしない。しつこく僕につき纏って僕を食べ尽くそうとする。そんな変ちきりんな、そんな莫迦なことがあるもんじゃない、とあなたもまた思われるでしょうが。
 ペーテルはこういいながら、あの悲しげな微笑みを浮かべたのであった。
(『七』花田清輝)

 ポーや、ホフマン、ロアルド・ダールなどを連想させる、奇妙な味の小説だ。花田さんがこれを書き、懸賞小説として入選したのは、21歳、1931年のことだという。留学の経験などなく、完全にBookishな知識からつくった話である。翌年、ドイツではナチスが第一党となり、中国東北部には満州国がつくられる。そんな時代である。寓話じみた体裁もあって、旧さはまったく感じさせない、というか、いまも新鮮な小説だ。

 読み返したのは20年ぶりぐらいで、当時は読みすごしていたが、地球の歳差運動(自転軸の公転面に対するすりこぎ運動)、あるいは章動(歳差運動のぶれ)の周期が7年であるかのような記述があり、疑問がわいた。いったいどこから来た話なのだろうか。章動にはいくつかの成分があるが、18.6年、半年、半月などであり、歳差(太陽と月の引力による日月歳差)の周期は約25800年である。

 と、まあ、細かい話はおいて、『七』といえば、花田さんが「ながいあいだ、わたしのミューズでした」と称した尾崎翠さんの代表作も、『第七官界彷徨』と、「七」をタイトルに持つ。80年も経ったことを思うと、これも、なんとも新しい小説である。

私はひとつ、人間の第七官にひびくやうな詩を書いてやりませう。そして部厚なノオトが一冊たまつた時には、ああ、そのときには、細かい字でいつぱい詩の詰まつたこのノオトを書留小包につくり、誰か一番第七官の発達した先生のところに郵便で送らう。さうすれば先生は私の詩をみるだけで済むであらうし、私は私のちぢれ毛を先生の眼にさらさなくて済むであらう(私は私の赤いちぢれ毛を人々にたいへん遠慮に思つてゐたのである)
 私の勉強の目的はこんな風であつた。しかしこの目的は、私がただぼんやりとさう考へただけのことで、その上に私は、人間の第七官といふのの定義をみつけなければならない次第であつた。これはなかなかの迷ひの多い仕事で、骨の折れた仕事なので、私の詩のノオトは絶えず空白がちであつた。
(『第七官界彷徨』尾崎翠)

 花田さんは「十代の終わりに読んだきり」とも書いているが、これは記憶違いのようで、年譜によると、『第七官界彷徨』の前半が初めて活字になったのは1931年で、『七』と同じ年なのであった。
 これが1932年なら、昭和七年で、かつ1932=276×7で7の倍数となり、話はきれいにまとまるのだが、そううまくはいかない。

『Shadowfolds』2011/02/20 21:47

『Shadowfolds』
 昨日、でがけにポストを見ると、『Shadowfolds』(Jeffrey Rutzky, Chris K. Palmer 著) が届いていた。布を使った折り紙的工芸の本で、同書には、推選文を書いた。

 ちょうど、多面体好きの集まり・多面体フォーラムに参加するところだったので、会では、最近の「四角の中の五角」の報告のほか、この本の紹介もした。なんともグッドタイミングだった。

  なお、PalmerさんのShadowfoldsのアイデアの大元は、藤本修三さんの「平織り」という技法にある。その藤本修三さんの作品を集めた本として、『おりがみ あじさい折り 藤本修三ワールド』(プロジェクトF編)という本が最近でている。

 (最近、他にも興味深い折り紙本が何冊も出版されていて、折り紙の世界の広がりを感じさせる)

正八面体スケルトン2011/02/22 22:35

正八面体スケルトン
 「表裏同等折り」の正八面体のよいものができた。正方形をいっぱいに使い、まとまりもよい。
 中央の正方形は穴にすることもできる。右端の写真のように、さらに切り込むと、「正方形の紙」ではなく、「正方形の穴」を折っている感じになる。

「雪華箱」2011/02/23 23:27

「雪華箱」
 穴開き変則用紙シリーズ。いつシリーズになったのか、わたしも知らないが、なかなか面白いものができた。
 雪の結晶のようなかたち(ふつう、雪の結晶に中央部に穴はないけれど)からできた立体なので、「雪華箱」と名付けた。立体は、△8□6の立方八面体である。組むのはけっこう難しいが、組みあがればそこそこ安定する。