メランコリアの多面体2011/03/01 00:09

メランコリアの多面体
 27日につくった切頂四面体を見ていて、アルブレヒト・デューラーの版画『メランコリア I』(図左上)の八面体(図左下)を思い出した。菱形の鋭角の頂点を切り取った五角形六面と、正三角形二面からなる八面体である。
 この立体は、以前折り紙でつくったこともあるが、今ひとつエレガントにはできなかった。今回、変則用紙による表裏同等折りに案外向いたテーマではないか、と思いなしたのである。
 もとになる菱形の比率は、画家・榎本和子さんの説に則って72度108度とした。以前つくった表裏同等立方体「ヘキサキューブ」と同じ構造になっている。

立方体内接正十二面体2011/03/02 22:33

立方体内接正十二面体
 変則用紙折り紙のユニット版を試してみた。変則用紙を使うことの利点は、余計な線がでないことで、立方体が内接する正十二面体が、6モジュールできれいにできた。

立方体と正八面体の相貫体2011/03/04 00:38

立方体と正八面体の相貫体
 立方体と正八面体の相貫体をいくつか試した。

 図左上と写真中上は、ユニットモデルである。面が互いに交差するという特徴だけをのこして、とにかく単純化してみた。切り込みのある正三角形八枚と正方形六枚である。折る部分がないので、もはや折り紙ではないが、きれいな結果になった。パズルとしても面白い。確認できていないが、これは、たぶん前例があるだろう。

 この十四枚組をもとに、表裏同等立方体の構造を使って、三枚組にしてみた(図右上)。十四枚組の場合、素材の厚みによる「ねじれ」が分散されるのだが、三枚組では、これがなかなかやっかいだった。やや厚みのある透明シート素材では、きれいには組めなかった。

 つぎに、相貫体の内部平面を無視して、外側だけの造形を、表裏同等の一枚折りでやってみた(図、写真下)。干渉しそうな面がうまく配置でき、これはきれいにまとまった。

「ちょっと欠け立方体」2011/03/06 14:42

「ちょっと欠け立方体」
 ここ10日ほど、変則用紙折り紙にはまってしまった。やるべきはことは多いのに、仕事中や食事中にもアイデアがわいてきて困った。まだほかにもあるのだが、やや食傷気味になり、すくなくとも凸多角形ぐらいの単純な用紙形にしてみたくなった。

 というわけで、まずできたのが、図・写真下の十二角形(「正」ではない)を使った「3Dダビデの星」だ。構造はきれいなのだが、まとまりはいまひとつである。
 このかたちが、立方体の8頂点のうち、6頂点を引き延ばした立体であることから、立方体に変形してみようと、展開図を調整してみた。こうして得られたのが、図・写真上の「ちょっと欠け立方体」である。紙の使いかたに無駄がなく、まとまりもよい。単純な用紙形からのモデルは、いかにも「折り紙」という気がして、そういう面での達成感がある。

 立方体に直感的にむすびつく平面図形は、当然のことながら正方形だが、こういう立体を見ていると、立方体というのは、正六角形で象徴される立体という気もしてくる。

六角柱と立方体2011/03/06 14:44

六角柱と立方体
 「ちょっと欠け立方体」の欠けた部分にぴったりはいる立体がどうなるか。それは、六角柱の末端を立方体状に切り落としたかたちである(内部空間はさらに広ので、ぴったり「埋まる」のではない)。なお、この六角柱の側面の鋭角部分の角度は、tanθが√2になるθである。
 このかたちは、水晶(石英の結晶)のようにも見えるが、じっさいの水晶の結晶の末端は正方形にはならないようだ。
 まずは、このかたちを、図のような三枚プロペラのような展開図でつくってみた、最後の組み合わせがパズル的で面白い。これを表裏同等にすると、図下、写真下中のようになる。頂点で接するふたつの立方体が、正六角形の面をはさんで綱引きをしているようなかたちである。
 写真右下は、これを√2用紙8枚組でつくってみたものである。√2用紙の幾何造形はかなり試したつもりだったが、これはやっていなかった。

「ただし角はない 」(?)2011/03/07 23:14

『正方形』(ブルーノ・ムナーリ)
 昨晩も、幾何モデルをこねくりまわしていたのだが、最終的に手のひらの上にあったのは、なんの変哲もない立方体であった。「つまらんものをつくってしまった」と、『ルパン三世』の十三代目石川五右衛門のような台詞をつぶやいた。
 これが、極端に複雑なかたちからできた単純な立方体であれば、それはそれで面白かったのだが、このモデルは、その点でも中途半端だった。
 ここで思ったのは、「単純なかたち→複雑なかたち」という「正統派」の折り紙と、「複雑なかたち→単純なかたち」という造形は同根のものではないか、ということだ。後者は、箱詰めパズルなどを思い浮かべているのだが、いずれもが、複雑さの中に単純さを、単純さの中に複雑さを見る、というのふたつの面を持っている、と言えなくもない。

 折り紙で正方形が好まれるのには、さまざまな理由があるが、そのひとつは、正方形が単純な図形、原理的なかたちとして認識されているからである。それは、かたちを見いだすときの規範である。
 三年生だったときの九月から十月にかけて、ぼくは正方形なものを研究していた。ぼくは街にある正方形なものを見つけるたびに記録していた。(略)
 やがてぼくは三角形や円や曲線の研究も始めたが、今でもやはり正方形が一番ステキだと信じるものだ。
『ペンギン・ハイウェイ』森見登美彦著)
無限は正方形をしている。ただし角はない。
中国の古いことわざ
『正方形』(ブルーノ・ムナーリ著 阿部雅世訳)

オリガミとオリカソ2011/03/10 23:04

スターバックスのOrigami
 職場で、「こんなものがありましたよ」と見せてもらったのは、「Origami」という商品名のコーヒードリップパッケージである。その後、コンビニエンスストアでも見つけた。
 スターバックス社の商品で、同社のサイトによると、以下のようなことらしい。
 器具が要らないシンプルなドリップタイプは、実は日本以外ではあまり目にしません。スターバックスには、この日本独自のユニークな商品形態が、とても新鮮に思えました。 大切に丁寧に、折ったりたたんだり開いたり。「まるでオリガミのよう」とイメージが重なります。折り紙の繊細さ、手作り感や精緻さにヒントを得た「STARBUCKS ORIGAMI(R)」。日本の文化をアルファベットで表現することで、すこしエキゾチックなテイストを加えた名前になりました。

 ドリップのパッケージが日本特有というのはちょっと意外だったが、それ以上に、この文章、「スターバックスには、...新鮮に思えました」と、スターバック(ス)が主語になっているのが、翻訳調で面白く、スターバックさんが何人かいて、彼らが、「折り畳みドリップって日本的だよね」「日本人は、小さく畳むのが好きだからね」などと話しているという風景を想像した。

 ちなみに、Origamiという単語は非日本語圏でも定着していて、「折り畳み」「コンパクト」「繊細」などをイメージさせることばにもなっている。MicrosoftのモバイルPCのためのOrigamiプロジェクトなどというものもあった。盛り上がらないまま、消えたみたいだけれど。

 さらに、これで思い出したのは、イギリスのフラットワールド社からでている、Origamiならぬ、「Orikaso」なる、プラスチック製の折り畳み容器だ。Oriは「折り」だが、Kasoがなんだかわかるだろうか。これは「可塑」なのだ。これから想像する社内会議は以下だ。

「これって、オリガーミみたいだね」
(わたしの知る限り、欧米人はオリガミを、こんな感じで発音する)
「オリガーミという響きはエキゾチックでよいね」
「商品名に使いたいね」
「ところで、オリガーミってどういう語源なんだ?」
社員たちは辞書をひく。(origamiは、英語の辞書にも載っている)
「オリはfoldで、ガミはpaperのことです」
「そうかpaperか。じゃ、プラスチックのことは、日本語でなんていうんだ?」
社員たちは、ネットの翻訳ソフトかなにかで調べる。
「日本語でもプラスチックというみたいですが、カソ(可塑)という言葉がありますね」
「オリカソ。オリカソ。いいじゃないか」

 わたしも「いいじゃないか」と思うのだけれど、微妙に日本語ぽくないのは、plasticがそうであるように「可塑」も形容詞的な言葉で、かつ、全体が湯桶読みだからだろうか。いや、それより前に、日常では、可塑ということばをまず使わないということが大きい。プラスチックは、一般には、可塑性(物質)というより、いわゆる合成樹脂を意味している。オリジュシ、オリプラ…。でも、オリカソのほうがいい。なんとなくラテン系言語みたいで、面白い響きだ。

停電時は水道凍結にも注意2011/03/14 12:44

 地震と津波の被害を受けたかたに、心からのお見舞いを申し上げます。

 地震のあと、山梨でも半日以上停電になったが、まだまだ冷え込む寒冷地においては、水道の凍結も要注意だ。通常は、電熱線と湯沸かし器の凍結防止機能がはたらいているが、同日深夜、数時間使わなかったカランからシャーベット状の氷が出たので、元栓を閉めて水抜きをした。

 悲惨な状況が明らかになる中、日常をすごそうと思っているが、11日の夜の鮮やかな星空や、朝の陽射しの中で小鳥がさえずっているのを聞くと、「ここはなんて平和なのだろう」と、ある種、呆然とした感じになった。
 仙台在住の親戚は無事だった。当地で医者をしている姪は、手術中だったという。
 昨日、一昨日の中央道上りは、自衛隊や赤十字の車両、電源車などが、何台も東に向かっていた。

また、きっと2011/03/16 23:22

66年前の三月十日、東京大空襲の日、23歳の医学生の日記である。
十日(土) 晴
(略)
 電車の中では三人の中年の男が、火傷にただれた頬をひきゆがめて、昨夜の体験を叫ぶように話していた。
(略)
「−つまり、何でも運ですなあ。……」
 と、一人がいった。みな肯いて、何ともいえないさびしい微笑を浮かべた。
 運、この漠然とした言葉が、今ほど民衆にとって、深い、凄い、恐ろしい、虚無的な−そして変な明るさを持って浮かび上がった時代はないであろう。東京に住む人間たちの生死は、ただ「運」という柱をめぐって動いているのだ。
 水道橋駅では、大群衆が並んで切符を求めていた。みな罹災者だそうだ、罹災者だけしか切符を売らないそうだ。
 「おい、新宿に帰れないじゃないか」
 二人(引用注:著者と友人)は苦笑いしてそこに佇んだ。
 焦げた手拭いを頬かむりした中年の女が二人、ぼんやりと路傍に腰を下ろしていた。風が吹いて、しょんぼりした二人に、白い砂塵を吐きかけた。そのとき、女の一人がふと蒼空を仰いで、
「ねえ……また、きっといいこともあるよ……」
 と、呟いたのが聞こえた。
 自分の心をその一瞬、電流のようなものが流れすぎた。
 数十年の生活を一夜に失った女ではあるまいか。子供でさえ炎に落として来た女ではあるまいか。あの地獄のような阿鼻叫喚を十二時間前に聞いた女ではあるまいか。
 それでも彼女は生きている。また、きっと、いいことがあると、もう信じようとしている。人間は生きてゆく。命の絶えるまで、望みの灯を見つめている。……この細ぼそとした女の声は、人間なるものの「人間賛歌」であった。
『戦中派不戦日記』(山田風太郎)

 昨日、この部分が読み返したくなり、書棚の奥から上記書を探しだした。
 わたしの身の回りも、すこしだけ非日常化したが、昼は仕事で、夜は多面体モデルをつくったり本を読んだりという、以前と同じ平穏な日々をすごしている。

スリット多角形モジュール2011/03/16 23:42


スリット多角形モジュール

 スリットのある多角形のモジュールの、ひとまずのまとめである。上段の左からの三種、正八面体、立方八面体、二十・十二面体の骨組みは、それぞれ、正方形、正六角形、正十角形のモジュールの組み合わせで、体積を持たない「立体」になっている。上段右端の斜方立方八面体の骨組みは、正八角形のモジュールで、これには、体積があるが、面に囲まれていない部分があるのは同じだ。どれも、各頂点の形状が合同となる興味深いかたちであるが、面に囲まれていない部分があるので、多面体の定義にはあてはまらない。
 多角形を円に変更しても面白い。左下のふたつがそれである。
(確認はできていないが)前例のありそうな技法・造形ではある。

 立方体と正八面体の相貫体に似ているが、正三角形八枚で、ケプラーの星型八面体もつくってみた(図・写真右下)。ケプラーの星型八面体が、ふたつの正四面体の相貫体であることが、よくわかる。

 どれも素材を大きく曲げて組み合わせる必要があり、とくに最後のモジュールの挿入が、パズルとしての難関になる。

 と、ここまででひとつのまとめと思っていたが、いまさっき、以下のことに気がついた。
 立方体と正八面体の相貫体は、立方体と正八面体という双対関係(面と頂点を入れ換える)にあるふたつの立体からなる。ケプラーの星型八面体はふたつの正四面体からなるが、正四面体の双対は正四面体自身である。ということは、双対関係にある正十二面体と正二十面体でも同じ技法で相貫体ができるはずだぞ、と。
スリット多角形モジュール2
 思いついたのが停電の直前で、停電明けにつくってみたら、きれいなものができた。