正弦曲線と折鶴2009/10/25 17:17

正弦波
 堀江敏幸さんのエッセイ集『正弦曲線』に、「折紙で赤い鶴を折り、ネギを切るひと」と題された一編があった。黒田三郎さんの『夕方の三十分』という詩を紹介し、その詩の一節「折紙で赤い鶴を折る/ネギを切る」を、そのままエッセイのタイトルにした一編である。堀江さんの文で折り紙に遭遇したのは、三回目だろうか。
コンロから御飯をおろす
卵を割ってかきまぜる
合間にウィスキイをひと口飲む
折紙で赤い鶴を折る
ネギを切る
一畳に足りない台所につっ立ったままで
夕方の三十分

僕は腕のいい女中で
酒飲みで
オトーチャマ
小さなユリの御機嫌とりまで
いっぺんにやらなきゃならん
半日他人の家で暮したので
小さなユリはいっぺんにいろんなことを言う
(『夕方の三十分』(黒田三郎)から)

 本のタイトルの『正弦曲線』は、『優雅な袋小路 -正弦曲線としての生』というエッセイなどからとられたものだ。「サイン、コサイン、タンジェント」という言葉の呪文じみた響きや「正弦」という言葉の字面の話題からはじまって、うねうねした波を思う内容である。

 正弦曲線と言えば、一ヶ月ほど前、小海町高原美術館で観た「オリバー・マースデン展」も思い出した。
 一周期のサイン波だけが描かれた、たしか『サイン波の調和』と題された、4号か5号ぐらいの小さい絵があった。正確には、ベージュ色のキャンバスに白い絵の具を塗り、正弦曲線のところだけキャンバスの色を残すという描きかただった。写真の撮りかたなのか、色調が記憶と違うが、このページにちょっと写っている。横長5mぐらいの大きいキャンバスを使った、回転対称の心拍のような波形を描いた「波の調和」という作品もあった。電波観測所の玄関に飾るのに最適な絵かもしれない。

 堀江敏幸さんの本は、装丁がいつも美しいが、この本はまた特別だ。ふつうの単行本よりやや小さく、エンボスのついた函入りになっている。装丁家は間村俊一さん。
 最近、函入りの本というのは少なくなったと思うが、じっさいはどうなのだろう。20年前に物故した、本の装丁をたくさん手がけた叔父がいたのだが、四半世紀前は、いまよりも函入りの本が多かったように思う。

コメント

_ Joker ― 2009/10/25 19:25

『正弦曲線』と「ネギを切る」のところまで読んで「ネギを斜めに切って、皮を広げるとサインカーブができるよ」という話かと思ったら違っていました(笑)。

そういえば、円錐曲線って展開するとどうなるんだっけ。……と、余計なことが気になり始めました。

_ maekawa ― 2009/10/25 20:18

ネギ(円柱)と正弦曲線の話は、たしかに。
円錐は、展開したものはけっこう変な関数になるはず。

_ カトレア ― 2009/10/27 07:05

アタシゃ コッチ↓へ、関数ならぬ関心を 持っちまった,ヨ !!

【コンロからご飯を 。。。。。】 から 【小さなユリは 。。。。。】
迄を 真似て ,,, アタシなりに並べ ,,, て ,,, みた ,,, ん ,,, だわさ!^^

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