こよりアート など2019/12/18 20:13

◆こよりアート
先日来の「こよりの犬」に関する調査(?)は、犬の造形に関することはともかく、こよりに関する話がいくつか集まって、まだまだ続いている。共時性めいていたのは、妻が買ってきた『ビッグイシュー』(12/1:372号)に、「表現する人:紙のこよりで、自然のエネルギーのうねりを追う HITOTSUYAMA STUDIO」という、こよりをつかった現代アートの記事が載っていたことだ。かなりリアルな造形である。『ビッグイシュー』はまれにしか求めないので、思いがけないめぐりあいであった。
HITOTSUYAMA STUDIO@『ビッグイシュー』

こよりの調査から派生して、折鶴に関しても興味深い話があったのだが、それはまた別の話。

◆ゲノム・エンジン・オリガミ
テッド・チャン氏の第二短編集『息吹』(大森望訳)の一編『ソフトウェア・オブジェクトのライフサイクル』に、ゲノム・エンジンというシステムソフトウェアがでてくる。プラットフォームの違いでいくつか種類あって、その中にオリガミというものがあった。

「向きづけされた遺伝的アルゴリズムを用いたマイクロカーネル(Oriented GA (Genetic Algorithm)-applied  Microkernel)」の略でOriGAMiという設定はどうだろう、などと考えた。考えすぎとは思うが、テッド・チャンさんならそんなことまで設定しているかもしれない。もうひとつのシステム名・ファベルジェは、ロシアの有名な金細工師の名前らしく、これもセンスがよい。

◆紙と紙飛行機
市川優人さんの第26回鮎川哲也賞作『ジェリーフィッシュは凍らない』に、紙飛行機と紙の話がでてきた。

航空工学とは乱暴に言ってしまえば、『航空機』を開発する学問です。『航空機に使われる素材』を開発する学問ではありません。紙飛行機で喩えれば、より遠くまで飛ぶ紙飛行機の形や折り方、飛ばし方を考えるのが航空工学であって、紙そのものを作るのは彼らの本来の仕事ではないのですよ

この記述は、「紙飛行機」が「折り紙飛行機」を指す場合が多いことの例にもなっている。これは、折り紙の文献調査をするときの注意点である。「紙飛行機」が、紙などを使った模型飛行機で「折り紙飛行機」でない場合もあるからだ。

◆クリスマスツリーのエンブレム
クリスマスツリーのエンブレム
先日、講習会用のシンプルなクリスマスツリーを考えたとき、別の造形のアイデアも漠然と頭の中にあった。それをじっさいのかたちにしてみた。ツリーのシルエットをインサイドアウト技法でエンブレム風にしたものだ。わるくない。

◆ふたつの正八面体
ふたつの正八面体
ふたつの正八面体を、共通する軸にそって90度回転させた状態で貫入させた立体はどうなるか。どこまで貫入させるかは、とりあえず面の中点までとする。明快で、造形としての面白さもあるので、これを折り紙でつくってみようとした。直感的に、すっきりした構造になるように思えたのである。しかし、そうでもなく、面上の「穴」の、直角に見える部分も、120 - atan(√3(√2-1))=84.34...°という値なのであった。とりあえず2枚組でつくってみたが、あまりエレガントな構造にはならなかった。

◆哀悼
若いひとが亡くなるのはつらく、歳を重ねていても大事なひとが亡くなるのは苦しいだろう、という思いで、花代を送り、弔電を打つことが続いた、年の暮になった。

◆「暮」という文字
最近の『数学セミナー』は、劉慈欣さんの『三体』が売れているのに便乗(!)して、最新号で三体問題を特集するなど、なんだか攻めている。一年前の投稿コーナー『数学短歌の時間』も、思えば不思議な企画だった。選歌されなかったが、ブログに載せたところ、気にいってくれたひとがいた歌があった。

Q.E.D.示す墓石の記号には打ち捨てられた思索も眠る■

数学の論文で、Q.E.D.(証明終了)が「■」で示される場合があり、これは「墓石」記号とも呼ばれる。最後の■は、文字化けに見えそうだし、きわめてニッチな歌だ。気にいってくれたひとも数学関係者であった。

そのひとが、すこし前、わたしのブログに書いてあったこの歌の「ぼせき」の「ぼ」が「暮」になっています、と教えてくれた。ハカでなくてクレなのである。えっと思って確認すると、たしかにそうなっていたので修正した。いつも使っているMacBookで「ぼせき」と打つと、「墓石」より前にこの字が出た。初期設定に近い別のMacでもそうなったので、学習によるものではなさそうだ。いくつか辞書を調べたが、こんな言葉は見つからなかった。Apple Japan、日本語の辞書がテキトーだぞ。

関連して辞書をめくっていて、「暮歯」が老年を示すことを知った。使う機会はあまりなさそうな言葉ではあるが、鯨や象の歯にできるという年輪の話が思い浮んだ。

暮と墓の共通部分は「莫」である。否定と果てのなさを意味する字だ。命を失って土になるのが墓、日がないのが暮、水が少なかったり無かったりするのが沙漠である。獏はじつは獣ではなく、募るのは力がないからだろうか、などと考えた。じっさいのところは、莫はたんに音符のようで、模型は木のこともあり、幕は布である。

コメント

_ かしま ― 2019/12/20 07:33

こんにちは。小学6年のかしまです。前川さんの作品、トリケラトプスとゴジラを折りました。よかったら見てください。折り紙を折るのが好きです。(代筆:母)

_ maekawa ― 2019/12/20 08:21

見ました。
小さな紙でうまく折ることができていますね。

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