くらき夜の山松風は騒げども2019/12/09 21:23

◆哀悼
会費を払って報告を読むだけだが、わたしもペシャワール会の会員だ。会則5項の「会員はそれぞれ可能な範囲で、自ら創意工夫して自由なやり方で支援活動を行う」に得心していたが、これも、中村哲さんが好きだったという最澄の「一隅を照らす」の精神を反映したものか、とあらためて思った。

尊敬できるひとがいるということは、この世界で生きていることの大きな救いなので、喪失感が強い。今年は1月に、アフガニスタンの絵を多く描き、ペシャワール会報にもその絵がよく載っていた甲斐大策さんも亡くなっている。

場所:文京区白山1-33-8 朝日マンション2F JOASホール
日時:12/14(土)10:00-17:00
誰でも聴講できます。

◆Starry Night
クリスマスカードをつくる教室をします。
日時:12/15(日)13:00-15:00
クリスマスカード

思いきってシンプルな作品。今日たまたま見た次の短歌は、上のカードの雰囲気を、さらに子供らしくした感じがした。

手作りの夜に包まれ眠る子らクレヨンの月折り紙の星 前川泰信
(日経歌壇2019/12/07 穂村弘選)

同姓だが、この前川さんはまったくの他人である。ナースリー(幼児見守り的)な歌柄と折り紙と夜いうモチーフから、次の歌も連想した。

いもうとの小さき歩みいそがせて千代紙かひに行く月夜かな 木下利玄

月がでていないと夜の道は暗すぎるので、この歌は「月夜かな」でなければならない。しかし、クリスマスの夜に似合うのは、月夜よりも星月夜だ。ちなみに、星月夜というのは「暗夜に、星の光が月のように明るく見える夜」(『広辞苑』)の謂で、月のない夜のことである。今年の12月24、25日の月齢は27から28なので、夜空に明るい月はなく、暦としては絶好の星月夜になる。

追記(12/12):12/26の新月には日食もある。東京では15:35が食の最大、食分は0.389)

古歌には星より圧倒的に月の歌が多いが、次のような歌もあり、それらは、冬の星月夜に合っているようにも思える。むろん、建礼門院も永福門院もクリスマスなんて知るはずもないが。

月をこそながめ馴れしか星の夜のふかきあはれを今宵しりぬる 建礼門院右京大夫
くらき夜の山松風は騒げども木末の空に星ぞのどけき 永福門院

二首目、松風とあるが、唐松であれば葉は散るので、『モチモチの木』(斎藤隆介、滝平二郎)のような、黒々とした冬木立の間から見える星々のさまも想像する。

星月夜と言えば、1980年代の歌謡曲『旅の手帖』(石野真子)に、「星あかりで書く旅の手帖」「星あかりで読む旅の手帖」(松本隆作詞)という歌詞があったのも思い出す。当時、露営の貧乏旅行をよくしていたわたしは、この曲を耳にして、星明かりで文字を書いたり読んだりするのは無理だよねと思っていた。蛍の光でそうする以上に難しい。中国の故事に「月光読書」というものもあるが、経験上、満月でも読書はかなり難しい。さらに、新月の星月夜の照度は満月の1/10の0.02ルクスなので、事実上、文字の判読は不可能である。

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