先々週、母が逝った。年初には父が逝き、今年は、父と母を亡くした年になった。
実家から『日本大歳時記 座右版』(水原秋桜子他監修)をもらってきた。1700ページのコンクリートブロックのような大著で、35年前の出版である。父も母も作句をするひとではなかったので、なぜこの立派な歳時記を求めたのか詳しいところはわからないが、こうした本を傍らにおいておきたい気持ちはわかる。ぱらぱらとめくっていると、次の句が目にとまった。
父逝きしこの年の瀬の青き空 田中鬼骨
この句の父を「父母」に変えて読んでみた。そして、青空をモチーフにして、野辺山観測所からの八ヶ岳の稜線を折ってみた。
空はどこからが空なのかということで、次の歌も思い浮かんだ。
どこまでが空かと思い 結局は 地上スレスレまで空である 奥村晃作
同様の発想では、次の句もすばらしい。
雁よりも高きところを空といふ 今瀬剛一
こちらのほうが「詩的」といえばそうだが、奥村さんの歌の身もふたもない感じ、当たり前が反転しての不条理な感覚も、読む者をつかんで離さない。
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