ドデカキューブなど2013/09/08 14:00

アン・ラヴィン作、鋼鉄の折り鶴
鋼鉄の折り鶴
折紙探偵団コンベンションのオークションで入手した品のひとつで、金属溶接でできた折り鶴。凶器である。

棒状渦巻銀河
棒状渦巻銀河
野辺山観測所研究員のMさんから「棒状渦巻銀河(NGC1300的なもの)をつくってください」というリクエストがあったので、即席でつくってみた。
「シェー!ミーは棒状渦巻銀河ざんす」

「計算折紙の世界」展
先週末、やっと「計算折紙の世界」展(東京大学 駒場博物館)を観てきた。舘知宏さんのキュレーションに深く納得。

多面体乱舞
『八重の桜』のタイトル映像が、多面体の乱舞になっていて、「おお、菱形三十面体、ねじれ立方体、立方八面体」などと声に出してよろこんだ。

ドデカキューブ
ドデカキューブ
15cm用紙6枚組で一辺7.5〜8.8cmというかなり大きい立方体が組めるユニット折り紙のシリーズができた。名付けて「ドデカキューブ」。大きいという意味だけではなく、裏地が白く抜ける部分が12個あること、すなわち、ギリシア語起源の12のを意味する接頭語dodecaにかけているという、例によっての「伝わりにくいダジャレ題名」である。『折紙探偵団』次号に掲載する作品も、「立包帯、立風体、立帆体、パハ立方体」とか、ダジャレだ。

ふたつの久慈川
朝ドラの舞台を地図で確認していて、あらためて久慈川はややこしいなあと思った。岩手県久慈市に河口のある久慈川と、茨城県日立市・東海村にそそぐ久慈川があるからだ。直線距離で400kmも離れているのだけれど、やっぱりややこしい。茨城県久慈郡大子町に2年間住んだことのあるわたしには、後者がThe・久慈川である。この、常陸の久慈川の河口付近(東海村側)に「石神」という地名があるのを発見し、柳田國男の『石神問答』にでてくる「シャクジ」地名と「クジ」は関係があるのかもしれないと妄想した。
岩手の久慈のほうは、駅前にある、水戸芸術館のタワー(磯崎新)や、脇田愛二郎さんの彫刻に似ているモニュメントが気になる。脇田愛二郎さんは「パブリックアート愛好家」にはおなじみの彫刻家。ただ、久慈駅前のものは、たぶん氏の作品ではない。脇田作品よりやや単純で、正八面体を積み上げた形状だ。このタイプの構造物は街灯にも使われていて、たとえば、東急田園調布駅周辺にもある。

『東北の伝承切り絵』
東北の伝承切り紙他
三陸といえば、南三陸の伝承切り紙に興味があって、現地で実物を見てみたいとずっと前から思っている。『祈りのかたち-宮城の正月飾り』(宮城の正月飾り刊行会 )は絶版だけれど、『東北の伝承切り紙』(千葉惣次、大屋孝雄 著)は昨年出た本で、写真が美しく、紙造形に興味のあるひとに強く推薦。

『ノックス・マシン』
読みたい本がたまっていて、『ノックス・マシン』(法月綸太郎)をやっと読んだ。クラシカルな探偵小説好きで『知の欺瞞』が愛読書である者には、ツボだった。造語の「ソーカライズ」などに、にやにやである。『知の欺瞞』の著者・アラン・ソーカル氏に由来する「自然科学の用語を無理なアナロジーとして使うこと」を指す言葉。円城塔さんも似たネタを使っていたので、どこかで、法月さんと円城さんの対談をやってくれないかなあ、などと。

凍るシャボン玉など2013/02/03 13:45

1月14日 道祖神祭り
1月13日、山梨に移動するさいに秩父から雁坂峠のルートを使い、峡東地区の道祖神祭りの飾り付けをいくつか見た。写真は、山梨市三富川浦のものである。
翌14日は、山梨県立博物館で開催中の「どうそじんワンダー・ワールドAGAIN やまなしの道祖神祭り」を観覧し、学芸員・丸尾依子さんの講座も聴講した。
以前大和村で見た祭り飾りの亀の子束子の謎がわかった。飾りを解体したあとそれを配るのだが、そのさいに実用品を入れるということだそうだ 。ただ、なにを入れるかにも象徴的な意味があるらしい。

道祖神祭り(山梨市三富川浦)

某月某日 ダイヤモンド富士
多摩の自宅から、ダイヤモンド富士が見えた。より理想的には、前日か、前々日がよかったが、その日は、自宅にいなかった。
ダイヤモンド富士

某月某日 凍るシャボン玉
以前から試してみたかった、シャボン玉を凍らせるということをやってみた。気温はマイナス7度ぐらい、冷えきった車のフロントグラスに接触すると、それは凍った。より低温のときにも試してみたい。
野辺山は、この冬、マイナス20度を下回ることも数回あった。ミニコミ誌『だたら八つ』N.22(2012年秋冬号)『野辺山マイナス30.5度の記録』によると、野辺山観測所隣りの矢出川湿原は、アメダスポイントよりも低温になり、昨冬、マイナス30度以下を記録したという。

凍ったシャボン玉

丸石神 その342012/10/17 22:50

丸石神その9『暗黒神話』によせられた「北落師門」さんのコメントが気になって、先日、甲斐市亀沢(旧敷島町)の丸石神を見にいった。

まずは、『暗黒神話』のイラストの元になったと思われる木造の祠の中の丸石神。
敷島町亀沢丸石神2

そして、真ん中に石棒のあるもの。
丸石神(甲斐市亀沢)

以下は、次のような声が聞こえてきそうなもの。
石垣の石「おれたちは石垣なのに、向こうは神様だもんなあ」
丸石神(甲斐市亀沢)

また、 以前から注目していた県道六号(穂坂路)・甲斐市竜地(旧双葉町)の二座の丸石さんもゆっくりと見てきた。どちらも幕末のもので100m弱しか離れていない。台座には「道祖神」ではなく、「衢神」と書いてある。天孫降臨のさいにニニギを先導したサルタヒコがいた天の交差点・「天の八衢」(あめのやちまた)で使われている字だ。下の写真のように、「丸石神・火の見櫓隣接の経験則」がどんぴしゃ の例でもある。
丸石神(甲斐市竜地)

丸石神(甲斐市竜地)

雑記2012/09/10 22:05

某月某日 15度鳳凰
鳳凰
角度が15度の倍数の折り目を使った鳳凰ができた。ひさしぶりに、幾何立体ではないモデルだ。とはいっても創作のモチーフはきわめて幾何学的である。じっさいの鳥の羽根はこんな構造ではない。幾何学的なかたちをそのままなにかに見立てるたのしさが中心にあってできた造形だ。15度折り目をやったひとならわかる、45、60、75の不等辺三角形という、どこかずれているようできっちりしている三角形が味である。
幾何学的なかたちをそのままなにかに見立てることがうまくいったと思っているのは、七面鳥(サブフラクタル)、孔雀(ミウラ折り)、ペンギン(円錐)、ニワトリとヒヨコ(デルタ多面体)などで、今回の鳳凰を含めて、なぜかみな鳥類である。思えば、折鶴もまたそうだ。鳥類は獣よりひとからの距離があるので、幾何学的形状の見立てによる違和感がすくない、ということもあるのだろうか。

某月某日 諏訪に丸石道祖神?
以前、図書館で見た『石仏調査ハンドブック』という本に載っていた「道祖神塔(丸石の道祖神)(年不明)長野県諏訪市小和田南」とキャプションのついた写真の道祖神を確認しにいった。甲斐の民俗である丸石道祖神が信州諏訪にあったら、それだけで発見なので、前から気になっていた。しかし、みつけることができなかった。何度か同じ場所をうろうろする不審者のような行動をしたのち、立ち話をしている地元のひとに「つかぬことをお訊きしますが」と訊いてみたのだが、思いあたるものはないということだった。八十代のカクシャクとしたお爺さんで、そのひとと話をしていたひとが「町内のことでこのひとが知らないことはないよ」という長老だったので、写真のキャプションの間違いで、やはり諏訪には丸石道祖神はないのだろう。なお、諏訪地方ではちいさな祠の周りにもちいさな柱が四本建っていた。つまり、ミニ御柱で、これには感心した。

某月某日 折鶴のシール
窓のシール
折紙探偵団コンベンションのオークションで競り落とした、マルシオ・ノグチさん提供の折鶴のシールを、はめごろしのガラス窓に貼ってみたら、これがなかなかよかった。

某月某日 折り紙の重心
『折紙探偵団』の原稿をふたつ書いた。ひとつは、書いている途中で思いついたことがあり、後半の内容が、当初想定していたことから大きく変わった。折り紙モデルの重心に関する話である。発展性があるテーマかもしれないという期待がすこしある。

某月某日 理論物理学教程
神保町の古書店で『ランダウ・リフシッツ理論物理学教程 弾性理論』を手にとって棚に戻した。20年以上読まねばと思っている本なのだが、すぐには読まない(読めない)し、古書価も高い。一生読めないような気もしてくる。

某月某日 八ヶ岳の鹿
八ヶ岳の鹿
山梨県道28号線(北杜八ヶ岳公園線)を長野県方面に向かい、八ヶ岳高原大橋を渡ってほぼ坂を登りきると、左側に牧草地がある。ここは、通称「鹿牧場」という。じっさい、棲んでいるんじゃないかというぐらい、高い確率で野生の鹿がいる。増えすぎて、食害に困っているとも聞く。

某月某日  すこしは働いた
ずっと遅れていたプログラムの修正ができて、データを処理したが、まだおかしいところがあるかもしれない。(なんてことをわざわざブログに書くと、仕事もしていますといういいわけみたいな感じになる)

某月某日 小笠原流と人体文様付有孔鍔付土器と蛇籠
南アルプス市ふるさと文化伝承館小笠原流のこころとかたちという展示を観にいった。南アルプス市の旧櫛形町は、武家の礼法を伝える氏族・小笠原家の発祥の地なのである。この展示も面白かったが、同館の縄文遺物の展示もよかった。とくに鋳物師屋(いもじや)遺跡から出土した人体文様付有孔鍔付土器に惹かれた。愛嬌のあるひとのかたちのレリーフがついた土器である。興味深いのは、その指の数が3本であることだ。同じ遺跡の円錐形土偶などもそうで、館のスタッフのひとにも説明してもらったが、縄文土器の人物の指は、3本、4本、6本などまちまちだそうだ。ここで思い出されるのが、数概念を「1、2、3、たくさん」、「1、2、たくさん」とする言語があることだ。この土器の指の造形は、単に「さきがたくさん枝分かれしている」ということであり、何本という数の概念とは結びつかないということを示していそうである。ただ、縄文人の数の概念は、粘土板につけられた刻みなどからきわめて発達していたという話も聞いたこともあり、それとの関係はよくわからない。
蛇籠
南アルプス市の東部は、富士川水系の御勅使川(みだいがわ)の氾濫が歴史をかたちづくってきた土地である。ということで、堤をつくるための「蛇籠」も展示されていた。「蛇籠工法」は、中村哲さんのペシャワール会が、アフガニスタンの水路整備でもつかっているものだが、ここに展示されていた伝統の竹の蛇籠(中に砕石をいれて積む)は、末端が閉じたカーボンナノチューブにそっくりで、工芸品としても美しい。円筒状の六角の籠目の端を閉じるためには、五角形の穴があるのが幾何学の示すところで、じっさいそうなっている。

某月某日 ゆるキャラ化した半跏思惟像
半跏思惟像
北杜市高根町で見た半跏思惟像が、摩滅もあって、ゆるキャラのオーラを発していた。

某月某日 こんなところに五芒星
神楽殿の五芒星
北杜市高根町の伊勢大神社の神楽殿にのこっていた紙垂が陰陽道的な五色だった。(ただし、西は、ふつうみどりではなく白だとも思う。みどりは五色の吹き流しや幕などで黒のかわりに使われることが多い) こうした紙垂はほかでも見たことがあったのだが、見上げると、天井に五芒星があってちょっとびっくりした。

丸石神 その332012/04/09 21:31

藤垈の水芭蕉と丸石神
昨日、笛吹市藤垈(ふじぬた)で水芭蕉を見てきた。水芭蕉の開花時期等を調べる過程で、垈(ぬた)という漢字が、山梨県の地名でしか使われない「地域文字」であるということを知った。(国立国語研究所のこのページの「漢和辞典にない文字」の項 参照)

垈のつく地名と言えば、韮崎市相垈(あいぬた)にすばらしい丸石神があるが、藤垈にもみごとな丸石神があった。藤垈のそれは、「火の見櫓・丸石神隣接の経験則」に合致して、火の見櫓の近くにあったが、ふと、「垈地名・丸石神存在の経験則」なるものが頭をよぎった。まあ、これは成り立たたないと思うが、地域文字などというものがあること自体がミステリーなので、想像がふくらんだ。他には、甲斐市双葉町大垈、南アルプス市加賀美垈原、市川三郷町垈、南部町成島大垈といったものが、検索にかかる。

「石子順造的世界」と「重森三玲 北斗七星の庭_展」2012/01/09 23:43

昨日今日と、連日で展覧会に行ってきた。
府中市美術館の石子順造的世界展と、ワタリウム美術館の重森三玲 北斗七星の庭_展である。

石子順造的世界

石子順造的世界-キッチュ-

「石子順造的世界」は、つげ義春ファン、丸石神好きとして、外せない展覧会だ。評論家・石子順造氏の足跡に沿って、美術、マンガ、キッチュという三分野の展示があり、マンガコーナーの展示に『ねじ式』(つげ義春著)の原画、キッチュコーナーの展示に丸石神の写真とくるのだ(写真)。それはそれでうれしかったのだが、言ってみれば、「あるとわかっているものを確認しにいく」かたちだった。が、美術コーナーにちょっとしたふいうちがあった。石子さんらが作家選考をした1968年の「トリックス・アンド・ヴィジョン」展の一部が再現されていたのだが、そこに…

「まさか こんな所に 堀内正和が いるとは 思わなかった」

ということで、わたしが最も好きな彫刻家・堀内正和さんの作品があったのだ。
(野暮を承知で付言すると、上は、『ねじ式』の冒頭「まさか こんな所に メメクラゲが いるとは 思わなかった」のパロディである)

石子さんは、評論を読むと、わたしとはかなり違う思索をするひとなのだが、堀内正和、つげ義春、丸石神など、どこか嗜好が似ている、と再認識した。というより、わたしが石子さんから影響を受けたということなのだろう。

なお、展覧会の図録は、驚くほどコストパフォーマンスが高い文献になっている。300ページ余・2000円、カラー多数、『ねじ式』原画写真収録である。

そして、重森三玲展は、偶然出会った東福寺方丈の庭に魅せられ、北庭の写真をずっとコンピュータの壁紙にしている者として、やはり外せない展覧会だ。

デスクトップ-東福寺方丈北庭-

東福寺方丈北庭(小市松の庭)は、世人の認める氏の代表作なのだろう。喫茶室には「小市松ケーキ」なるものもあり、おいしくいただいた。

重森三玲展-小市松ケーキ-