『空想の補助線』(数理エッセイ集)2023/12/01 15:04

新著の見本が届きました。折り紙の教本ではありません。
『月刊みすず』に連載していた数理エッセイ10編に、書き下ろしの8編を加えた一冊です。ブックデザインは葛西薫さんで、帯の文章は漫画家の高野文子さんです。

空想の補助線

前川さんのこの本は、折り紙展開図みたいな本です。
ありえないことだけど展開図は夜空に浮いていて、わたしは手をのばし、
山線と谷線を確かめながら、このエッセイ集を読んでいきました。
 高野文子 漫画家


かつて赤瀬川原平さんに「白難解」(白っぽい表紙の難解本を出す出版社)とも呼ばれ、数々の殿堂入りの本を刊行しているみすず書房から、いわゆる物書きではなく偉い科学者でもないわたしのエッセイ集というのは、なんだか落ち着かない気分ですが、冒険心あふれる編集者である市原加奈子さんにのせられて、不思議な本ができました。

折り紙教室 ほか2023/11/20 10:38

◆折り紙教室 
11/23(木、祝)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。作品は、「辰」です。
辰

◆イベント参加の日々
11/12、北杜市郷土資料館企画展「和算を楽しむ者たち」の関連イベント「甲州算額めぐり」に参加。

三浦公亮先生に久しぶり会うことができた。

そして、以下へ続く。
12/15,16、折り紙の科学を基盤とするアート・数理および工学への応用Ⅳ

野辺山宇宙電波観測所特別公開2023/08/24 08:03

国立天文台野辺山宇宙電波観測所(長野県南牧村)
8月26日(土) 9:30 - 16:00

この日だけは特別、45宇宙電波望遠鏡に触ることができます。

野辺山宇宙電波観測所オンライン特別公開2023/07/17 09:44


2023野辺山特別公開

国立天文台野辺山宇宙電波観測所では、7月22日(土)にオンラインでの特別公開を行います。

8月26日(土)には、現地での特別公開も開催されます。

7月22日オンラインの特別公開日に先立って、すでにいくつかオリジナルビデオが公開されていますが、その中に、わたしが担当した「折り紙でながれ星をおろう!」というビデオもあります。

折り紙教室など2023/02/19 20:03

タイミングを逸して、今年になって初めての更新となってしまいました。

◆折り紙教室
2/23(木)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。
作品は「ねこ」です。
ねこ
目玉シールは、折り紙造形ということでは若干邪道気味だけれど、これはこれで面白い。

◆『折紙探偵団』購読キャンペーン中
『折紙探偵団』(隔月刊、年6号)の購読を申し込むと、今期のものだけではなく、希望のバックナンバーが無料でついてくるキャンペーン中です。

1月末に刊行された『折紙探偵団』(197号)には、「折り紙に逢える宿」という記事(エッセイ)を寄稿し、文脈にぴったりだったので、若山牧水の歌を二首引用したのだが、折り紙(折鶴)のでてくる次の歌を出し惜しみしてしまった。

やまざとは雪の小うさぎ紙のつる姉と弟の春うつくしき 牧水

いい歌だし、記事の内容にも合っているので、引いておけばよかった。

◆テッテ的
今年の初め、調布市文化会館「たづくり」で『つげ義春と調布』展を観た。原画ではなく複製原画だったが、主催の調布市立図書館の司書さんにディープなつげファンがいるのか、なかなかに「テッテ的」であった。そう、「この場合テッテ的というのが正しい文法」なのである。そしてその足で、『ねじ式』誕生の場所である、調布市富士見町の中華・八幡で昼食を摂るという聖地巡礼をした。久しぶりに行った八幡は、猫娘ゆかりでもあるので、猫娘関係の色紙が多数飾られていた。

本当に仲良しなのか鶴と亀
暮-正月につくった新作。
ほんとうに仲良しなのか鶴と亀
こうして並べると、坂東乃理子さんの現代川柳と、その付句にぴったりの古川柳が、どうしても思い浮かぶ。

本当に仲良しなのか鶴と亀 坂東乃理子
鶴の死ぬのを亀が見ており 『武玉川』(現代表記)

髭みたいな藻のついた「蓑亀」という図像になじみのない欧米のひとは、亀の尻尾がどうしてこうなっているのだと思うだろうが、甲羅に緑藻がつく亀というのはじっさいにいるのだそうだ。淡水の亀特有らしいのだが、この折り紙のデザインの前脚は海亀である。

◆7BEE
野辺山45m電波望遠鏡に搭載された最新鋭の広帯域七素子受信機「7BEE ( 7-BEem Equipment for Nobeyama 45m Telescope)」が、順調にその能力を発揮しつつある。最近、食物を7BEEふうに並べてしまう癖がついた(左上端は、「高槻城」という大阪府高槻市の菓子)。
広帯域七素子受信機「7BEE」

七曜

◆比喩としての折り紙
『怪物のゲーム』(フェリクス・J・パルマ、訳)というミステリで、折り紙をつかった表現にふたつ遭遇した。

ラウラとの関係は課外授業と並行して進展したが、折り紙でもするようなどこかもったいぶったスローペースであった。

今もバソルは折り紙でもするつもりなのかナプキンをいじって、オラーヤが沈黙を破るのを待っている。

ひとつ目は、折り紙を用いた比喩表現として典型的な「繊細」や「脆い」といったものではないのが珍しい。折り紙では手順や正確さが重要なことが多く、それをもったいぶっていると感じるむきはたしかにあるのだろう。なお、この小説自体は、面白いのだけれど、誘拐犯の「怪物」から課せられる課題がほんとうにイヤなものなので要注意。

イベントなど2022/10/23 18:03

◆折り紙教室@府中 
コウモリ
10/30(日)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当。講習作品はハロウィンに合わせて、「コウモリ」。
…簡単でいて面白い作品を考えるのは難しい。

10/24-11/11
「OrigamiUSA・日本折紙学会共同WODイベント」に参加する。

◆第27回折紙探偵団コンベンション
11/25-11/27、第27回折紙探偵団コンベンションに参加する。わたしの講習作品は「鯉」。
NishikiGoi

◆『数学セミナー』
『数学セミナー』2022年11月号の特集『私の選ぶ「推し図形」』に「正八面体が好きだ」というエッセイを寄稿した。「推し図形」というのは、まあ、『数学セミナー』でなければありえないテーマだ。

早川のポケミスの新刊『 鏡の迷宮 パリ警視庁怪事件捜査室』( エリック・フアシエ、加藤かおり訳)は、七月革命直後のパリを舞台にした話だが、ストーリーに絡む人物として、師範学校を放校になる直前のエヴァリスト・ガロアが登場する。急進共和主義者の会合で、酒場のメニューを折って符牒にするという折り紙ネタ(?)的な話もでてきた。化学者から捜査官となった、若き警部ヴァランタンを主人公とするこの話はシリーズ化され、本国では第2弾もでている。今後、ガロアについても書き遺している数学者・マリー=ソフィ・ジェルマンも登場するのではないかと期待している。

◆「マエカワ」について
先日、海外からのメールで、Maekawaを、Makaewaと間違えていたひとがいて、マカエワというのは中央アジアぽい響きがあるなあ、と思った。アガサ・クリスティー賞受賞の同志少女よ敵を撃て』(逢坂冬馬)に、カザフスタン人のアヤ・マカタエワという人物がでてくる。なになにエワというのは、ロシア人名の女性語尾と似たものかと思ったのだが、それとは違うようで、カザフスタンには、国民的詩人のムカガリ・マカタエワというひとがいて、男性であった。

10年以上前にバンクーバーの日系文化センター博物館を訪れたさい「前川商店」の看板を見たのだが、横文字での綴りはMAIKAWAであった。aeはドイツ語などのaウムラウトの代用表記でもあるが、英語では長音と認識されてミーカワとなってしまい、マイカワのほうがマエカワの発音に近いからだろう。
前川商店

前川の横文字表記ということでいえば、テキサスに稲作を導入したことで知られる、前川一族(?)中の偉人・前川真平に由来するヒューストン市の地名・マイカワの綴りはMykawaで、産業機械で知られる前川製作所はMaykawaである。

そういえば、以前、『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』(ガイ・ドイッチャー著、椋田直子訳)という本を読んでいて、フィンランド語のmakeaという単語が「甘い」の意味だと知った。フィンランド人にとって、マエカワという姓はちょっと甘い感じがするのかもしれない。

make-workという形容詞表現もマエカワにすこし似ている。これには「雇用創出」のような意味もあるが、「人を遊ばせないためだけの無意味な仕事」という含意もある。なんだかなあとも思うが、カミュの『シジュフォスの神話』を思い浮かべると、生きること自体がそういうことだとも、思ったりして。