福紙のバタフライ 他2026/05/14 17:24

◆福紙のバタフライ
本のページが折れ曲がったまま裁ち切られて、余分な紙がついているものを稀に見るが、製本業界では、福耳、福紙、恵比須紙などと呼ぶらしい。
工程上のエラーの結果なのだが、縁起のよい名前がついている。最近、これの極めて珍しいものに遭遇した。

ここのところ、いわゆる黄金時代の作家のミステリを読んでいる。10-20代に読んだはずのものも多いのだが、読み落としていたものも少なからずあり、それらを古書店で見つけ出して読むのがたのしい。

下にあげた、ハヤカワ・ポケット・ミステリ799『引き潮の魔女』(J・ディクスン・カー、小倉多加志訳、1963刊行)もそうしたもののひとつである。文庫にもなっている(それも版は切れている)が、これは初訳時のものだ。

『引き潮の魔女』

本文の促音(小さい「っ」)が、小さくなっていない!とか、奥付けに訳者の検印や住所が書いてあったり、といったことが、時代を感じさせ、定価は280円である。

そして、もしかしたら、この本は一度も読まれたことがなかったかもしれないのであった。紙の函が残っているのも保存状態がよい(ポケミスのビニールカバー以前のものは現役では知らないし、函には「お手元に綺麗なままの本をお届けしたくこんな簡単な函をつくってみました。いわば包装紙がわりです。お買い上げ後にはお捨てください」と書いてある)のだが、そんなことより「福紙」が袋とじみたいになってページを開くことができないところがあるのだ。

コレクター品的には、そのままのほうがよかったのかもしれないが、わたしの場合は読むのが目的なので、切り離して読んだ。すると、切り離した部分のかたちが蝶のようになっていて、その妙に、思わず声を上げた。

福紙

本そのものが、ジョン・ファウルズの『コレクター』(蝶の採集を趣味とする男のサイコ・サスペンス。映画が有名)だったら、オチもピッタリだが、あれはハヤカワ・ポケミスではない。(ちなみに、わたしはミステリ読者だが、あの手のサイコ・サスペンスは好きではなく、最近のミステリはその手のものも多いので、黄金時代の作家に遡っている読んでいる面も強い)

なお、『引き潮の魔女』自体は、足跡のない殺人という、いかにもカー的な話で、執筆(1961)時から半世紀ほど遡った歴史ものでもあるが、その設定が大きく生かされているわけでもなかった。これでいいのかと思ったのは、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』のネタを完全に割っていることである。

◆折り紙教室@府中
5/17(日)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。
府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。
作品はカッパです。

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