『折る幾何学』の表紙や扉の絵を描いていただいた高野文子さんによる色紙である。透明樹脂でつくった「ねじれ立方体」(『折る幾何学』収録)の中に悪魔を封じ込めたものを贈ったお返しだ。海老で鯛を釣った。
ほんとうにうまいなあという絵で、たとえば、「折り紙人形」の空洞部分の輪郭にも躍動感がある。「表紙の少年の顔は前川さんにちょっとだけ似せました」というのが高野さんの言だったが、この色紙の人物は、「お腹がちょっとでているところがあなたに似ている」というのが妻の感想である。
擬人化された正八面体が描かれているのは、『折る幾何学』内の、「正八面体が好きだ」「正八面体は健気だ」という、誰に通じるのかわからない話(一応、理論化してあるけれど)に基づいている。
この八面体くん、書中の扉絵にも登場しているが、正八面体好きとしてうれしい以上に、一種のなつかしさを感じて、なんだったかなあ、とひっかかっていた。それに関して、昨日、あっ!と、思い出した。
レイ・ブラッドベリの『もののかたち』(The Shape of Things 1948)という小説の印象と重なっていたのだ。
『もののかたち』は、分娩機なる機械の不具合により「次元」の混乱がおき、我々の世界では青いピラミッドとして生まれた赤ちゃんと夫婦を描いた話である。『クレージー・ユーモア 海外SF傑作選』(福島正実編 1976)というアンソロジーに収録されていて(斎藤伯好訳)、高校生のころに読んだ。
あらためて読むと、「クレージー・ユーモア」というよりは、もっと批評性のある小説だった。
『明日の子供』(Tomorrow's Child)という別タイトルもあるようで、昨年出た
『歌おう、感電するほどの喜びを![新版]』にも収録されていた。
正八面体は、単視点ではピラミッド(四角錐)としてしか認識できない。そして、『もののかたち』のなかで、青いピラミッドの子供は「ピイ」と呼ばれている。ということで、最近できた6枚組みの正八面体モデルも、通称ピイちゃんとなった。
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