『涙香迷宮』2016/09/27 23:48

法月綸太郎さんの『挑戦者たち』にあった、いろは48文字の「読者への挑戦状」も面白い趣向だったが、「新いろは歌」を扱ったとんでもないミステリ『涙香迷宮』(竹本健治)が出ていることを知って読んだ。刊行から半年も経っていたのに、認識していなかったのは不覚だった。
作中には、「ん」を含む48文字からつくられた、50もの新いろは歌が出てくる。驚くべき技巧作品もある。作中では黒岩涙香の作ということになっているが、つまりは竹本さんの作だ。呆れるほどの好事家ぶりである。

刺激をうけて、折り紙をテーマにして、ひとつつくってみた。ミステリの読書において、謎や展開より気になることができて、読むのを中断して、「関連問題」を何時間も考えたことなど、ほとんど記憶がない。
をりかみいろは歌(「いぬと」歌)

いぬとつるかめ ほふねみえ
ちひさきむすこ をりあそへ
しろくれなゐの うらおもて
やまたにわけよ はせんゆゑ

犬と鶴亀 帆舟見え
小さき息子 折り遊べ
白紅の 裏表
山谷分けよ 破線故

4行目は、破線が谷折りで鎖線が山折りという、折り紙業界の内輪ネタである。天文ネタは、竹本さんがすでにやってるので、二番煎じになってしまうのであった。

一番苦労したのは仮名遣いだ。できたと思っても仮名遣いの間違いに気づいて、その一角から全体が崩れ去ることが数回あって、時間がかかった。上のものは合っているはずだが、三重は「みへ」で、「見え」は「みえ」、笑みは「ゑみ」など、難しい。

考案過程は、あちらを出したらこちらをへこませるという、エッシャー風の敷き詰め絵(テセレーション)を描いているときの感覚に似ていた。

コメント

_ akiko ― 2016/09/29 00:38

素晴らしい詩ですね!
先日「本格折り紙」を入手してひとつずつ折っています。
雛飾りまで進みました。とても楽しいです。
多面体が大好きなので、新しい本も買おうと思います。

_ maekawa ― 2016/10/01 23:07

ありがとうございます。

をりかみいろは歌をさらに考えました。

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