電気ひげそりのペンローズタイル2009/07/05 17:58

マルチパターン網刃
 電気ひげそりの網刃を交換した。メーカーはブラウンで、本体購入は何年か前だが、そのときの機種選択の決め手は、「マルチパターン網刃」だった。典型的なひげ剃りの網刃が正六角形のハニカムパターンであるのに対して、「形の異なる4つの網目を5つの方向に配列した」というもので、並進対称性ではない準結晶構造になっている。幾何学的アイデアを実用に直結した例として、とても面白い。
 web上でこの特許の詳細が読めるが、ブラウンの技術者が、ペンローズさんの論文か記事を見て、「これだ!」と叫んだんじゃないか、なんてことを想像させる。(ドイツ版プロジェクトX?)

笹の葉さらさら2009/07/11 11:09

松本七夕人形
 7月7日の関東甲信越の晴天率は30%以下とのことで、今年も例年のごとく星空は見えなかったが、勤務先の野辺山宇宙電波観測所では、「世界天文年全国同時七夕講演会」なるイベントがあった。織姫星(こと座のVega)が太陽系外の惑星探査にとって重要な天体である、という話だったが、そう言えば、カール・セーガンさんの『コンタクト』でも、通信を送ってきたのはVega系の惑星だった。

 太陰太陽暦の7月7日は、今年は8月26日だそうで、このころの晴天率は60%ぐらいらしい。
 写真は、何年か前に見た、長野県松本市の郊外にある重要文化財・馬場家住宅で再現された、江戸時代の七夕飾りである。再現の元になった資料は、江戸後期の学者・菅江真澄の記述とスケッチで、ちいさな紙人形が糸に吊るされているのだが、素朴なつくりの人形が折り紙細工的だ。星空に映えるだろう。
 松本は、知るひとぞ知る七夕の街で、市立美術館や人形店で、各種の七夕人形を見ることができる。中でも興味深いのは里山辺という集落の、御幣のようなひらひらがついた人形だ。ただ、これはどうやら、松本近辺が起源ではなく、山梨の笛吹川流域の七夕人形が伝播したものらしい。七夕のあとに泥棒除けになるということで、人形がオルスイさんとも呼ばれていたり(詳細は日本七夕文化研究会の信清由美子さんの報告参照)、近隣の道祖神祭りの飾り付けが七夕の笹竹に似ていたりと、紙による飾りに興味がある者としては、笛吹川流域は、いずれじっくり調べてみたい土地である。より一般的には、天竜川と花祭り、鶴見川と杉山神社のように、古い民俗が河川の流域に広まっているという現象も興味深い。

アイロニカルな居酒屋2009/07/14 01:04

アイロニカルな居酒屋
 環状八号線外回り、世田谷区上野毛で見かけた店。渋滞で、ちょうど目の前に停まったので、車中から携帯電話のカメラで撮影した。

 「やきとり」と書かれた赤提灯が下がる居酒屋なのだが、以前営業していた店の古い装飾テントがそのままのこってる(のこしている)。それが、「観賞魚 小鳥 ペットの店」なのである。

読んだ、読んでいる本から2009/07/20 16:45

 『自然界の秘められたデザイン-雪の結晶はなぜ六角形なのか-』(イアン・スチュワート著 梶山あゆみ訳)を読んでいる。著者は、スチュワートではなくスチュアートと表記されてきたが、作家のデニス・ルヘイン(レヘイン)さんなどの例もあり、そういうことは珍しくない。まあ、それはよいのだけれど、邦題はちょっと…と思った。原題は、『What Shape is a Snowflake ?』で、雪の結晶はなぜ単純な正六角形ではないのか、という意味が含まれている。そこが主題であるとも言える。訳者ではなく、営業関係者が決めたのだろうなあ。

 『ケプラーの八角星-不定方程式の整数解問題-』(五輪教一著)と、『自然の中の数学 下』(J.アダム著  一樂重雄、一樂祥子訳)という本は、読むというより、ぺらぺらめくっている。前者には、『はじめての多面体おりがみ』(川村みゆき著)が参考文献にあげられ、布施知子さんの名前も見えた。数学教育で折り紙が使われているのを知ると、うれしくなる。

 並行して本を読むのは、あまり褒められたものではないけれど、『伊勢神宮-魅惑の日本建築-』(井上章一著)も読んでいる。こちらは、内容と同時に、(井上章一さんの本を読むときはいつもそうだが)書きっぷりが気になっている。井上さんは、漢字を仮名に開く率がめっぽう高い。あらわす、とめる、のこす、というような「やまとことば(?)」には、漢字はまず使われず、「じじつ」とか、「いっぱんに」などの副詞的用法での漢語もほとんどが仮名だ。やり過ぎの気もしなくもないけれど、嫌いではないし、読みにくくもない。わたし自身、いま校正している文書で、「じっさい」を「実際」になおされたのだが、「じっさい」のままにしてもらおうかなと思った。

 そして、昨晩は、これらの本を中断して、『宵山万華鏡』(森見登美彦著)を読んだ。まさに数日前が、京都祇園祭の宵山だった。わたしは行ったことがないが、折り紙の友人であるオーストラリア人のGさんはリピーターで、「アノフェスティバルハタノシイデス」と言っていた。『宵山万華鏡』ほどの幻想的体験は起こりようもないが、日本人でもエキゾチックな非日常感覚を満喫できそうな祭りで、行ってみたい。ただ、わたしの知る限り、紙による造形に関しては、あまり珍奇な、というか独特のものはない。

日食など2009/07/25 15:42

日食
 22日の日食は、野辺山宇宙電波観測所・太陽電波観測所でも、抽選による約100名の参加者を集めた観測イベントがあった。あいにくの天候で残念だったが、中国の武漢と硫黄島の皆既日食中継画像、曇りでも見える電波画像などをみなで見つめた。
 硫黄島の映像は、その場所だけが暗く、すこし離れた部分に陽が射しているので、水平線近くの雲がぐるりと明るい「360度全方向の夕焼け」がわかった。じっさいに体験したひとによると、月の巨大な影がゆっくりと移動をする、スケールの大きい感覚があるという。
 それにしても、太陽と月の見かけの大きさがほぼ同じというのは、「The 偶然」というような偶然である。

 23日には、はるかに継ぐ開口合成用電波天文衛星ASTORO-Gの技術的課題の多さを、関係者から雑談でうかがう機会があった。
 はるかと言えば、先日、はるかの基本構造の設計や三浦折りで著名な、三浦公亮さんのミニインタビューのインタビュアー を務めた。4月から日本折紙学会の顧問になっていただき、機関誌に記事を載せるためである。「2足のわらじはいいよ」という話が、個人的には一番ぐっときてしまった。