折紙探偵団コンベンションなど2009/08/17 17:54

テトラポッド(舘知宏)
 8/13は多面体フォーラム、8/14-8/16は折紙探偵団コンベンション、その他コンベンションの準備など、多忙な「夏休み」が終わった。なお、コンベンションに関しては、ほんとうに忙殺されていたひとは別にいるわけである。ごくろうさまでした。
 多面体フォーラムは、開催自体が4年ぶりだったけれど(だったからというべきか)、かなり濃い出席者が集まっていて、エキサイティングだった。鳴川肇さんの世界地図の新式投影法は面白い。四面体は、展開図で平面を埋め尽くせるんだよなあ。すばらしいなあ。

 折紙探偵団コンベンションも、コンベンション15回、会20周年記念大会ということで、参加者も例年より多く、盛況だった。
 初日講演のJAXAの岸本直子さん、『Origami Tessellations』のEric Gjerdeさんの話は、楽しく刺激的で、山口さん、西川さん、木村さんによる20年を振り返るプレゼンテーションはなつかしかった。
 会場の(今回初めて使わせていただいた)東洋大学白山キャンパス6号館は、ホテルかショッピングモールかというぐらいきれいで、中村和也さんのつくった全長5m(?)の「ティラノサウルス全身骨格」(故吉野一生さんデザイン)が、ベストフィットしていた。
 そして、アメリカのGjerdeさん、ドイツのWeberさん、ヴェトナムからのGuongさんとHieuさんという吉野一生基金招待ゲスト、多く海外参加者の国籍のバラエティーが、折り紙の世界、世界の折り紙の幅を感じさせてくれた。
 などと、妙にカタログ的文章(?)が並ぶが、実感である。

 個人的には、「鹿」と「電波望遠鏡・他」の講習、「紙テープの結び目について」という講義をした。どれも盛況でありがたかったが、「紙テープの結び目について」は、これを機会にちょっとまとめておこうと、例によって思ったのだが、これも例によって「序説」になってしまった。
 展示作品では、舘知宏さんのテトラポッド(写真:一枚折りで曲線的)が一番のヒット。数学的に正しい可展面かどうかは、舘さんも未確認のところがあるとのことだ。
 オークションでの「収穫」もひとやま。

野辺山観測所特別公開2009/08/23 09:36

野辺山観測所特別公開
 野辺山宇宙電波観測所・太陽電波観測所の特別公開で、折り紙教室をした。
 講習作品は、今年の旧七夕(8月26日)にあわせた「星の短冊」(西川誠司さんのモデルにアイデアを得たもの)と、「星」、「電波望遠鏡」の三種。そういう「演し物」があることを知らずにたまたま来所した折り紙ファンも数名。長野を家族旅行中の少年は、使い込んだ拙著を持ち歩く「折り紙少年」で、むこうもびっくりだけれど、こちらもびっくり。
 写真右上のアルマというのは、日米欧の協力でチリに建設中の電波天文台の名前。書いたのは天文台のエライひと。

得意技のことなど2009/08/28 00:13

新型電波望遠鏡
 なにかひとつの特技があって、いざとなるとそれを発揮するというのは、エンターテインメント作品の王道だ。誰もがヒーロー・ヒロインになれるというパターンである。先日観た映画『サマーウォーズ』(細田守監督)もそうだった。
 じっさいでも、そういうケースはちょっと燃える。たとえば、エンジニアとしての最大の「見せ場」はトラブルシューティングである。首尾よくトラブルが解消できたときは、素直にうれしく誇らしい(トラブルの原因が自分のつくったものだと別だけれど)。
 折り紙でも、新しい理論の構築や事実の発見・作品の創作というのは、研究者・作家のよろこびだが、講習会などで、さっとリクエストに応えられたときなどの充実感はそれに匹敵する。先日の講習会で、詳細はいまもって謎なのだけれど、「ハワイの貝殻」がほしいという子がいて、巻貝と二枚貝を即席で折ったところ、一応納得してくれたみたいだった。

 というわけで、特技、得意技は持っているに越したことはない。しかし、ひとの価値というのは、そういう「なにができるか」ではなくて、「いつもにこにこしている」とか「誰にでも同じ態度で接する」「なんだか、話すと楽しい」ということのほうにあると、最近はしみじみ思うのである。逆に言えば、人間の「うつわ」でひとを微笑ませることはできそうもない、と省みて思ったら、得意技によって頑張るしかない。

 今日は、観測所公開日の七夕短冊の片付けもしたのだが、当日は気がつかなかった「わにがかえますように」という願い事を発見した。「おひめさまになりたい」とどちらが実現性が高いだろうか。そうした願いを見ると、子供はみんな「うつわ」が大きいとも思う。

 さて。『サマーウォーズ』は、評判に違わない、佳品だった。つっこみどころは多いけれど、それが多くできるのが、よい作品の条件のような気がしないでもない。たとえば、長野県上田市で納品を待っているスーパーコンピュータとはなんだろうかという疑問が涌いた。信州大学繊維学部か? しかし、そこでスパコンを使う目的はなんだろう。布のしわのつき方の高解像度シミュレーションとか。おおっ、ちょっと折り紙の科学じゃないか。すごいぞ、信州大学繊維学部。って、妄想だけれど。はたまた、臼田宇宙空間観測所とか。映画中に「はやぶさ」をモデルにした「あらわし」も出てきたし。いや。もしかして、ちょっと遠いけれど、野辺山観測所か。まあ、じっさいは、地元電器店が納品ということはないよねえ。
 数学少年がヒーローというのもよかった(暗号解読のディテイルなどにつっこまないのが大人の態度というものである)。先日、野辺山観測所で観測実習があったさい、ある学生を「なんか、数学オリンピックにでそうな感じ」と評しているひとがいたが、この映画を観ていたかのかもしれないなどとも思った。

 以上の話とはぜんぜん関係なく、昨日ちょっとひらめいて、新型折り紙電波望遠鏡ができた。こちらのほうが折りやすいかもしれない。鏡面が真っ平らなのが難。

愛のかぶと焼き2009/08/29 21:20

愛のかぶと焼き
 布施知子さんから、「愛のかぶと焼き」をもらった。ふつう兜焼きというと、魚の頭を使った料理だが、これは、小麦粉煎餅でつくった「折り紙の」兜である。幅・約20cmと、でかい。布施さんの郷里は、大河ドラマ『天地人』の当地として盛り上がっている長岡市与板町で、帰郷したさいに発見したとのことだ。来年にはなくなっている可能性が高い珍品である。
 わたしがコレクションしているのは折鶴モノで、兜は対象外なのだけれど、こういう妙なものは、もらうととてもうれしい、というか、「前川さんなら喜ぶぞ」という布施さんの思考回路におけるわたしの位置というものが、自分のことながら面白い。なんだか、自分が「まえかわじゅん」ではなくて、妙なものコレクターとして名高い「みうらじゅん」になったような気がする。