異国の客2008/05/07 12:58

MFPP
 平均よりは海外渡航の機会は多いとは思うが、旅馴れているとはとても言えないので(折り紙界で言えば、布施知子さんと山口真さんはちょっと比類がない)海外旅行は気合いがはいる。ましてや初めての土地となると、それが大きい。そして、その気合いというのは、わたしの場合、読む本に反映する。関心をとりあえず読書で満たすのは、先日まで『ダライ・ラマ自伝』を読んでいたりと、旅行に限らず、身に付いた癖みたいなものではある。今回は、渡航前に永井荷風の『ふらんす物語』を読み、旅先では、池澤夏樹さんの『異国の客』などを読んだ。本の選択は、しゃらくさいと言えばしゃらくさいが、箇条書き的ではない「文学的な」情報を、じっさいの経験にゆるやかにリンクさせるのは、ディレッタント道(?)の基本である。
 池澤夏樹さんと言えば、彼も、読書というのは自慢するようなものではなく、悪癖みたいなものだと書いている。そして、ここでも「ゆるやかにリンク」するのだが、先日読んだ氏の新刊『星に降る雪/修道院』の『星に降る雪』の主人公の職業が、わたしにきわめて似ているので驚いた。わたしは、この主人公と野辺山宇宙電波観測所で職場を同じにしていたことになる。池澤さんには、1987年の自動車事故で亡くなられた、星間分子研究のリーダーだった鈴木博子さんを彷彿とさせる火山学者を主人公とする『真昼のプリニウス』という小説があるなど、「こちら方面」の話が多い。20年ぐらい前、彼が野辺山に取材に来たときのことも覚えている。計算機室には文学小僧はわたしひとりだったので、「芥川賞作家です! あの福永武彦さんの息子ですよ。ええっ、福永武彦さんも知らない? 加田伶太郎名義でミステリも書いてます。モスラの原作も書いています。なんでみんな知らないんだぁ」と、やきもきした記憶がある。
 追記5/10:当時のわたしは(いまも?)典型的なミーハーだ。しかも、池澤さんの才能を福永さんで計るなど、失礼である。

 さて。MFPPのコンベンションでは、いろいろと収穫があった。思いがけない収穫は、10年以上ぶりに会った桃谷好英・澄子さんといろいろ話をしたこと。
 写真は、講習後に悪魔の面をかぶっておどける青年。後ろの「一番」のTシャツは、会長のジャン=クロードさん。冗談連発(ほとんどわからなかったけれど)で宴会を盛り上げるアランさんも写っている。
 どうかなーと思ったので、講習では使わなかったけれど、非公式講習で思いの外ウケたのが、写真右の「エッフェルたとう」だ。フランス語でも、La tour Eiffelならぬ、Ta tour Eiffelでちゃんとダジャレになると、お墨付きをもらった。なお、Tatou(畳紙)という語は、あっちでも、折紙者ならけっこう知っている。
 同時期に開催されていた折紙探偵団関西コンベンションに参加できなかったのは残念だった。