◎『Pasta by Design』
まず、前の書き込みの補足である。パスタの幾何学的形状については、いずれ本格的に考えたいと思っていた。フジッリについて考えたのもそれゆえである。
ただし、これには先行研究がある。最近、数学雑誌の編集者さんから教えてもらったもので、
『Pasta by Design』(George L. Legendre)という本である。まだ入手していないのだけれど。
著者のルジャンドルさんという名前もインパクトがある。建築が専門のイギリス人のようだけれど、ルジャンドル変換などで有名な18世紀フランスの大数学者の子孫だったりするのだろうか。
『Pasta by Design』の表紙になっているファルファレ(蝶)は、可展面からの変形としてたしかに面白いが、コンキリ(貝)や、フッジリ(銃身)、カヴァタッピ(栓抜き、図)などのほうが、わたしは好きだ。食感ではなく、かたち自体がである。ジリというのもあって、百合の花ということらしいが、キクラゲみたいな「The・負曲率曲面」に見える。これらは、たぶん、型抜きでできているのではなく、製造工程によって「自然に」かたちづくられている。それらに比べると、ルオーテ(車輪)などは、すこし面白みが減る。
フッジリは、旋盤の削り屑や、ネコザメの卵(あまりよい写真ではないけれど、10数年前に下田海中水族館で撮影。検索するともっと鮮明な写真がいろいろある)にも似ている。ネコザメの卵も、あらためて見ると、常螺旋面というより、類似螺旋面に近い。ただし中央部は円柱ではなく紡錘形である。
紡錘形と言えば、そのかたちのパスタもあって、長粒種のコメみたいなかたちで、リゾーニという。これは、まさにコメの意味だ。小麦粉で米をつくるというのは、倒錯的だ。
昨年の九州コンベンションで、面白いパズルの話を聞いたことを思い出した。名づけて、「おりがみパヅル」。折鶴のパズルなので、パヅルなのである。探したところ、問題を書いたコピーはとってあったのだが、出題者の名前をメモし忘れていた。
問題:1枚の正方形の紙に切り込みを入れて連鶴をつくる。11羽のものはいかに?
ただし、以下の条件とする。
(1)紙を余らせない。
(2)鶴の翼は、左右どちらも別の鶴の翼に接続する。
解くのに1時間以上かかった。
解答はどうだったかなと思い出す過程から、「千羽鶴」のバリエーションを思いついた。『千羽鶴折形』の「風車」を無限化(写真では3段階まで)したものである。上の問題の解答とはまったく違うもので、羽での連結もやめているが、繰り返しパターンがわかりやすくてよい。1か所ではなく、向かい合う部分を分岐させるなどのバリエーションも考えられる。シンプルな発想なので、だれかがやっていそうではある。
◎蔵書
桑原武夫さんの遺族から京都市に寄贈された桑原さんの蔵書が、古紙回収に出されて処分されてしまったというニュースを聞いた。詳細を把握していないので、この件そのものへのコメントはひかえるが、ひとつ連想したことがある。
神保町の古書店の店頭で、趣味嗜好が明確な一群の本が並んでいるのを見ることがある。買い取って整理される以前のものだ。ある日見たのは、パズルと和算と数学の啓蒙書の取り合わせであった。「わたしに関心の近いひとが亡くなったのか」と思った。うちの蔵書の行く末を考えると、すこししんみりした。
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