準正多面体と半正多面体2015/10/22 22:19

『彩菊あやかし算法帖』(青柳碧人著)を読んだ。江戸中期の常陸の国、狐狸妖怪が算術の勝負を仕掛け、才気煥発な娘が迎えうつ、という連作小説である。この説明でも明らかなようにファンタジーなので、和算の考証に関する野暮なつっこみはしない。たのしく読み、続編も期待している。ただ、数学に関してひとつだけ重箱の隅をつついておきたい。

『彩菊と逢魔が手毬唄 』の地の文に出てきた切頂二十面体を指す「準正三十二面体」という名である。これは誤りである。この誤りを広めてしまったかもしれないという、宮崎興二さんの話もあるので無理もないのだが、よくある間違いなのだ。

準正多面体は、面が正多角形で、頂点だけではなく辺も区別がつけられない(頂点推移的、辺推移的)な立体で、正多面体でないものをいう。切頂二十面体(サッカーボール)は、正五角形と正六角形が接する辺と、正六角形どうしが接する辺の2種があるので、準正多面体ではないのだ。それは、準正多面体を部分集合に含む半正多面体に属する。準正多面体は、面が交差しない多面体では、立方八面体と、二十・十二面体しかない。