句読点の話2013/05/28 23:05

連載をしている『数学セミナー』は、句読点が「,」「.」である。同誌にかぎらず、科学関係の出版物では、邦文であっても、句読点を「,」「.」にすることが多い。しかし、ふと気になって、ちょっと調べると、けっこう多いのが「,」「。」であることがわかった。

「,」「。」:『Newton』『日経サイエンス』『パリティ』『科学』
「,」「.」:『数学セミナー』『数理科学』『天文月報』『日本物理学会誌』『応用物理』『情報処理』『天文ガイド』
「、」「。」:『natureダイジェスト』

これは、『公用文作成要領』(昭和27年4月4日付け内閣閣甲第16号内閣官房長官依命通知)において、「句読点は,横書きでは「,」および「。」を用いる。」とされていることに由来するものと思われる。
句読点は、縦書きと横書きで打つ位置が異なり、活字時代にはこれが重要だったことが影響しているのかもしれない。「。」も同じではないかと言えそうだが、じっさいにどうであったかは別にして、「。」は対称性が高いので、正方形の活字を回転することで縦書きでも横書きでも流用が可能である。

ネット上の文書は、ほぼ横書きだが、「,」「.」か「、」「。」のどちらかであり、『公用文作成要領』推奨の「,」「。」は、ざっと見たかぎりでは見つからなかった。 組み合わせ的には「、」「.」も可能だが、これを意図的に使っているひとや誌面は、たぶんない。ただ、MacOSのことえりやWindowsのIMEは、4種とも設定可能である。

コメント

_ 尾崎織女 ― 2013/06/04 03:25

前川さん、ご無沙汰いたしております。ときどき、こちらを訪問し、とても楽しく読ませていただいおります。
↑↑このこと、最近気になっていて、調べてみようかなと思っていたことだったので、なるほど・・・なるほど・・・と、とても嬉しく拝読いたしました。ありがとうございます。

↑↑このこととは、まったく関係のないことですが、先年、香道の師匠にお手紙を書いた折、文章に句読点を打ってお出ししたところ、注意を受けました。“香道の世界においては、目上の相手にお便りするときに、句読点を打つのは失礼に当たります。王朝物語に始まって、和文には句読点など打ちません。漢文なども返り点などを打つのは教養のない人への親切です。自分より知識が上の相手にお手紙するとき、この世界では句読点など一切つけないのが常識ですよ”と。
そういえば、祝賀会や結婚披露宴などのご案内状には句読点のないものが多いなと気付きました。近代教育が支えるこの文化より先行して存在していた日本古来の文化常識について、それに則って暮らしておられる方々がおられることを知らされたようで、なんと一面的な自分であったかと反省いたしました。

_ maekawa ― 2013/06/05 21:46

句読点や濁音符が一般化したの近代から、というのは忘れがちですよね。明治十八年の坪内逍遥の『小説神髄』でも使われていないとか。

現代でも句読点を打つのが失礼になることがある、という尾崎さんの話は、なるほどでした。近世以前にも句読点はあるようですが、漢文の訓点と同じく、訓読しやすくするための添字である、ということですね。

和歌や俳句の分ち書きも連想しました。基本は、分ち書きをしないですべて続けて書くものなので、古句を「さみだれや 大河を前に 家二軒」みたいに分ち書きで引用すると、「わかっていないな」ということに…。逆に、啄木の歌を三行にしないと、これまた違うことになります。

香道と言えば、2:3の長方形から折るたとう紙(パッケージ)のことを、香道で「折りすえ」というようですが、これの由来は気になっています。「折りすゑ」は、近代以前に、紙を折ってさまざまなかたちをつくる「折り紙一般」を意味していた言葉のようなので。

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