由無し言2013/04/03 00:23

おおよそ,くだらないことが記されるのはそのたやすさのせいである.これが広場に立った石版に鑿(のみ)で記せとかいう話になれば,内容を事前にかなり吟味せざるを得なくなる.
情報処理学会の学会誌『情報処理』の3月号に載っていた、円城塔さんの『世界創作の技法』というエッセイの冒頭をかかげて、よしなしごとを書いてみる。

よしなしごと
「よしなしごと」には、「由無し事」と「由無し言」の二種の表記がある。『大辞林』によると、前者がとりとめのないこと、つまらないことで、後者がつまらない言葉だそうだ。「よしな! 仕事」とも読める。

勤勉
最近つくづく思うのだが、周囲にいるほとんどすべてのひとがわたしより勤勉に見える。こう思うのは、わたしが謙虚だからだという可能性があるが、自身での検討の結果、みながわたしより勤勉なのはどうやら事実である。…というのは、謙虚な発言であろうか。いや、本当に謙虚なひとはこんなことは書かない。

大きなファール
長嶋茂雄氏の国民栄誉賞受賞のニュースで、いわゆる天覧試合でのホームランが映るたびに「大きなファールだな」と言っているわたしは、村山実さんのファンである。現役時代はあまり知らないけれど。

糸と斤
WEBのニュースサイトに「折紙」と見えた気がしたが、「維新」だった。見ると、たしかに維の偏と新のつくりは、紙と折のそれと同じであった。なお、維新から糸と斤(おの)(繋がりと武力)を取った残りの組み合わせは「雑」に似ている。

追悼・殊能将之さん
作家の殊能将之さんが亡くなったというニュースは驚いた。衒学趣味と皮肉をしのばせた文章を、嫌みのない筆致で書けるミステリ作家。物語には奇想が満ちていて、新作をたのしみにしていた。

三枚組み
三枚組みのユニット折り紙ができたので、題名を考えた。三位一体というのは大仰である。三すくみ、三つ巴などがあるが、三がつく単語には、三一というのもある。三一侍のさんぴん。蔑称である。一年の給料が三両一分だったからという。三一書房の由来は、これとは関係がないらしい。社会派バリバリの出版社なので、なんとなく「正・反・合」の弁証法に関係しているように思っていたが、それとも関係がないみたいだ。

電波望遠鏡の折り紙2013/04/04 13:05

電波望遠鏡の折り紙
国立天文台野辺山のサイトで、拙作の 電波望遠鏡の折り紙の図が公開された。

同観測所の夏のイベント(今年は8月24日(土曜))のときに使った作品が4回ぶんである。
「折り紙が得意でないひとでもなんとか折れる」というモデルのつもりだけれど、やはり難しいかもしれない。

2011年の組み合わせ作品は、上の写真のように、ひとまわり大きい「主鏡パネル」を使って鏡面を拡大できる。鏡面の裏は、図に示した「固定部品」を差し込むとよりよい。イベントでは、それぞれのパネルに願い事を書いて、寄せ書きのようにした。(回転放物面-パラボラ-じゃなくて、錐面だけれどね)

ボルヘス『El Hacedor』からのあれこれ2013/04/07 23:03

ボルヘス『El Hacedor』
東秀明さんから、彼の作品が表紙デザインに使われた二冊目(一冊目に関してはこれ)、アルゼンチンの作家・ボルヘスの『El Hacedor』をいただいた。スペイン語なので読めないけれど、装幀を愛でさせてもらった。

スペイン語といえば、Tejaという単語を最近覚えた。天文業界は、チリの5000m高地にできた大型電波天文台が大きなトピックなので、システムの名前などにもスペイン語(チリはスペイン語)にちなむものがちらほらある。当の大型電波天文台の名前もALMA「Atacama Large Millimeter/ submillimeter Array」(アタカマ大型ミリ波/サブミリ波干渉計)というのだが、これはスペイン語の「魂」にかけている。電波天文データ解析用ソフトウェアも「Common Astronomy Software Applications」の略でCASAという。これは「家」の意味だ。最近、このシステム上で動作するスクリプトを書いたのだが、「家」の上ということで、rooftop(屋根)という名前にしていた。しかし、ふと思って、スペイン語のTeja(瓦)に変えることにした。ただ、TEJAをなにかの略にこじつけようとしたが、これはうまいこと思い浮かばなかった。


昨日は、『El Hacedor』の内容も読みたくなって、訳書(『創造者』 鼓直訳)を買ってきた。詩と散文の断片を集めたような本で、著者自らは「雑録」と称している。

ざっとしか読んでいないけれど、いいなと思ったのは以下の一節。
語り伝えによれば、オデュッセウスは驚異に倦み、
緑ゆたかな慎ましいイタカを望みみて
懐かしさに泣いたという。芸術は驚異ではなく、
緑ゆたかなあの永遠なイタカなのだ。
(『詩法』より)

イタカというのは、ホメロスの叙事詩で有名なオデュッセウスの故郷のことだ。オデュッセウスの長い長い帰郷物語は、彼と妻・ペネロペによる『幸福の黄色いハンカチ』のような夫婦愛の物語の原型という認識だったけれど、なるほど、平凡な日常の輝かしさという側面もあるのかと、認識をあらたにした。

平凡な日常の輝かしさと言えば、昨日つけていたTVでたまたま見た、NHKの復興支援ソング『花は咲く』のアニメーションがとてもよかった。マンガ家・こうの史代さんのキャラクターをつかったもので、ちいさな海辺の町の日常が描かれていた。

太陽の折り紙2013/04/23 22:14

太陽の折り紙
わたしの『本格折り紙』という本では、個々の作品にテーマを設定し、かつ十二支や歳時記的なものなど、関連を持ったものを採用するといった方針で作品を選択したのだが、いろいろ悩む中で、作品選択の隠れたつながりのようなものも考えた。

そのひとつとして、カモノハシと太陽を載せようかと本気で悩んだ。なんのこっちゃと思われるだろうが、これは、UNIX系オペレーティングシステムに関する話である。それらのOSのいくつかにはマスコットがある。たとえば、Free BSDが赤い悪魔の子で、Linuxがペンギンである。悪魔とペンギンを採用したので、Darwinのカモノハシ、そしてSolarisの太陽(これはマスコットではないが)もどうだろうかと思ったのだ。まあ、載せたとしても、たぶん誰にも理解してもらえなかったこだわりである。

なお、カモノハシは、ずいぶん前だけれど創作したことがある。

そして、太陽は創作したことはないけれど、折り紙の太陽と言えば、ピーター・エンゲルさん作の顔のある太陽(写真左)が自宅に、以前太陽の研究者にもらった、その構造を理解するための折り紙(写真右)が職場に飾ってある。後者は、中心部に、フィラメント、黒点、その外側に光球、さらにその外側の八つの三角形には、電波、プロミネンス、X線、フレア、紫外線、磁場、イオン放射、コロナホール、一番外側にコロナ、中を開くとコアと書いてある。