◆眼のなき魚
一年ぐらい前、石川美南さんの折り紙を詠んだ短歌から、牧水の「眼のなき魚」の歌、夢野久作の歌、立原道造の掌編小説を連想し、
このブログで触れた。
先日、歳時記をめくっていて次の句に遭遇した。
年暮るる目のなき魚の如く生き 稲垣きくの
作者は、戦前の無声映画などで活躍した女優で、かつ俳人でもあったひとだという。この句もまた、牧水の歌に想をとったものなのだろう。一年ひっそりと生きたという詠懐である。年の暮の句では、其角の句も思い浮かぶ。
行く年や壁に恥ぢたる覚書 其角
いかにも其角という句だ。彼は、皮肉な眼でその風景を詠んだだけで、自身は恥じてなどいないのだろうが、わたし自身は、覚書こそ貼り出していないが、今年も、片付けるべきことが終わらなかったなあ、と、行く年に悔いの心をのこしてしまった。
◆『旅する小舟』
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