『紙の動物園』 ― 2014/06/21 02:11

「ぼくの母さんは中国人だった。母さんがぼくにつくる折り紙は、みな命を持って動いていた」という惹句が表すように、折り紙が重要なモチーフとして使われている。移民や母と子の思いのすれ違いというテーマが、心に染みる物語だ。
2011年ヒューゴー賞ショート・ストーリー部門、ネビュラ賞ショート・ストーリー部門、世界幻想文学大賞短編部門賞の三冠を獲得している。
そして…だ。丹地陽子さんの描く、折り紙の虎(作中重要な役割を持つ)のイラストレーションである。どこかで見たものだなあ…って、わたしの作品じゃないか! 『ビバ!おりがみ』(1983)に載ったもの(写真)を参考にしているのが、まず間違いない。
さらに、ちょっとした符合なのだが、『紙の動物園』という題は、この『ビバ!おりがみ』が出版されたころに考えたことがある。動物作品を集めた折り紙の作品集をつくるなら、『折り紙動物園』ではなく『紙の動物園』がよいと思ったのである。これは、文学青年的なてらいによるものだ。つまり、テネシー・ウィリアムズの『ガラスの動物園』からの連想である。
リュウ氏の『紙の動物園』は原題は、The Paper Zooではなく『The Paper Menagerie』である(menagerieは巡回サーカスなどの動物ショー)。そして、ウィリアムズの『ガラスの動物園』も、『The Glass Menagerie』である。彼がウィリアムズを意識してつけた題であるのは明らかである。『ガラスの動物園』も切ない家族の物語だ。
という、わたしにとって、いくつかのことがゆるく絡みあったような話なのであった。
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