『いちめんのなのはな』と『いちぐうののぶどう』2019/01/29 20:03


『いちめんのなのはな』と『いちぐうののぶどう』

布施知子さんから、平織り作品ふたつを手にいれ、額装した。いずれも、手染めの和紙を折ったものだ。もともと題名はついていおらず、そもそも具体的ななにかを表現したものではなかったのだが、布施さんとも相談して、色とかたちの印象から、『いちめんのなのはな』『いちぐうののぶどう』と題した。『いちめんのなのはな』は、もちろん、山村暮鳥の詩からとったものである。

『純銀もざいく』

『黄金もざいく』

「いちめんのなのはな」の「本歌取り」として、「いちぐうののぶだう(のぶどう)」をつかった詩も考えた。まず、「一隅」なので、「いちぐうののぶだう」は、詩句として一回のみにして、ほかは「ゆうぐれのそまみち(夕暮れの杣道)」で埋めた。元の詩で聴覚に訴える句は、やはり音を示す句にした。「かすかなる雁が音」と「小牡鹿(さをしか)の鳴く声」である。「小牡鹿」はすこし耳慣れない語で、文字数がうまく合うものが浮かばなかったからだが、きれいな言葉である。

『いちめんのなのはな』は、文字を視覚的に扱う「コンクリート・ポエトリー」の先駆とも言える詩である。『いちぐうののぶだう』を「ゆうぐれのそまみち」で埋めたのは、菜の花がであるのに対し、杣道がであるという理屈である。それを表現する記法として、文字のつながりを牛耕式の九十九折りにすることも考えたのだが、読めなくなるのでやめた。やめたのだが、これは、面ではなく線なのである。さらに、を対照させたのは言わずもがなだが、風景の基本も、として対比させた。

『いちめんのなのはな』は、たいへんわかりやすいように見えて、「病めるは昼の月」という句の負の印象と、純銀もざいくという題辞の謎が気にかかる詩でもある。諸説あるようだが、なにが銀なのかは謎のままにして、対照させて、題辞は『黄金もざいく』とした。

そして、布施作品の額の色は、さらに反転して、菜の花が金色、野葡萄が銀色になっている。

『いちめんのなのはな』と『いちぐうののぶどう』など

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