「更新されていないね」「じゃあ、日記でも」2012/03/29 23:50

マグカップ
22日-23日
折紙探偵団関西コンベンションに参加するため、深夜バスで大阪に移動した。前日まで、京都で天文学会が開催されていて、聞いておきたい発表もあったけれど、そちらには参加しなかった。深夜バスは初めてで、どんなものだろうと、すこしだけわくわくしていたのだが、席の位置がよくないこともあって、かなり疲れた。あれは若いひとの乗り物だなあ、というのが素直な感想だ。

2年ぶりぐらいの関西。きょろきょろと街を見回した。
阪急電車の中にあった四谷学院という予備校の宣伝コピーが「なんで、わたしが京大に!?」というものだった。東京では「なんで、わたしが東大に!?」である。地域に合わせて全部違っていたら面白いとも思ったが、下手をすると不平を言っているみたいになる。宣伝コピー文というのは、違和感をひっかかりにするものなのだろうけれど、そもそもが変な文ではある。

24日
コンベンション二日目に、ジェイソン・クーさんの「折り紙設計」に関する講演があった。講演後にも話をして、折り紙設計法をグラフ理論と結びつけることには、ちょっとした研究の鉱脈があるのではないかと考えた。枝の二次元での配置(順序)を区別する木構造の定義は、グラフ理論ではどう扱うのだろう。

ひとの作品講習は覗くだけで受講せず、ずっとティーバッグの包み紙によるモデルを試していた。マグカップが会心作である。(写真)

懇親会を途中で退出して、新神戸から最終の新幹線で帰京した。車中で読んだのは、一年以上積ん読になっていたミステリ・『殺す手紙』(ポール・アルテ著 平岡敦訳)で、ちょうど品川駅ぐらいで読み終えた。いままでに訳されてきたアルテ氏のクラシカルな探偵小説とは違うタイプのサスペンスだが、「ひねりにひねりました!」というプロットである。「ツイスト博士(アルテ氏のシリーズキャラクター)はでてこないけれど、ツイストのある作品」といえる( なんて、誰かが既に言っていそうな評だけれど)。そういえば、アルテ作品を年一作訳出する予定(平岡氏)という話もあったけれど、2011年は出なかった。

25日
親戚に子供が生まれたので、お祝いに行った。この子は、わたしの知らない未来を生きるのだなあ、としみじみ思った。夜、山梨に着くと、うっすらと雪が積もっていた。格言や言い習わしには、ただし書きが必要なものも多い。
暑さ寒さも彼岸まで- ただし、平地では。

26日
昼休みに、職場の観測所内で折り紙に関する取材を受けた。「設計する折り紙に先鞭をつけたことに関しては自負しています」なんてことを言ったけれど、ひとに言われれば素直にうれしいけれど、自分で言うものじゃないなあ、とも。

この日は、金星、月、木星がきれいに並ぶ日だったのだが、珍しく(!)プログラミングに熱中していて、そういえばと気がついたときには、沈んでいた。先日の金星と木星の「最接近」のときは写真を撮ったのに。

27日
放射線測定器に関して、キャリブレーションの意味で「校正」を使っているツイートを読んだ。内容はきちんとしていたが、表記に違和感があった。「校正」は、文章の直しのときに使う語で、機器のキャリブレーションは「較正」ではないのか。しかし、ちょっと調べてみると、計量法の条文にも「標準器による校正」なるものがあったり、区別はないようだった。「較正」や「キャリブ」のほうが一般的だと思うのだが、わたしが知っている業界だけのことなのだろうか?

「24時間、震度3以上なしか」と言った数分後に、千葉で震度3、その数十分後に岩手で震度5弱が起きたが、ふーんと思っている自分がいた。震度5弱って、並じゃないのに。

28日
『天文月報』(2012.4)に『わたしが見た日本』(P. W. Rybka)というポーランド人の学生さんの手記が載っていて、
「友達の少女が紹介してくれた折り紙に、私はたいへん興味をもち、紙の芸術の世界にのめりこみました」
と書いてあった。どこかで会う機会があるかもしれない。日本文化との出会いは「マンガ・アニメ、折り紙、俳句」ということであった。

連想して、わたしとポーランドとの出会いは、と考え、「ポーランド人の有名人は誰か」という、ひとり雑学テストをした。ショパン、キュリー、スタニスワフ・レム、アンジェイ・ワイダ、ロマン・ポランスキー..。 ウェブを検索して「答え合わせ」をすると、コペルニクスがそうであったことを忘れていた。ここで、ひらめいた。ポーランド人は、エスニックジョークでひどい扱いを受けることが多い。たとえば、電球ジョークというものがある。電球を交換するのに、電球を持ったひとが乗っている台をまわすのがポーランド人、というものだ。なんでポーランド人なのかわからなかった。しかし、もしかしたらこれは、地動説と関係しているネタではないのか。
バナッハ=タルスキの定理(パラドックス)で有名な数学者のバナッハとタルスキもポーランド人であることを知った。これをつかって、とんでもない話が実は論理的だったのである、という隠れたメッセージを込めたジョークがつくれないだろうか、なんて考えた。