広島の千羽鶴 ― 2007/08/06 23:59
冷徹に考えれば、小さな紙を折り畳んで鳥の形をつくることだけで、白血病を治すことなどできない。争いのない世界を実現することもできない。しかし、そこに込められた祈りを軽んじるのは愚かなことである。絶望的な状況の中で希望を持つことは、そのこと自体、ある種の勝利なのである。自分の文章、しかも、えらく美文調だけれど、『まだまだ折紙散歩』−いつも見ていたヒロシマ−(『折紙探偵団』75号) から引用。
広島市の中心街は紙屋町という。爆心地の旧市街名は細工町という。街はまさに紙細工のように燃え盡きた。だが、ひとりの少女の無垢なる思いと、その死を悼む者たちの祈りによって、焦土から生まれ変わった「平和」の二字を冠する緑豊かな公園に、一羽の折鶴が翼を広げた。その折鶴は、鎮魂のモニュメントであるとともに、未来への道標でもある。
とくにこの日に合わせたわけではないのだが、今夕、『夕凪の街 桜の国』(こうの史代原作、佐々部清監督)を観てきた。わたしも背筋を伸ばそう」という思いを呼び起こされた。
映画の中身からすると、そこに注目するのはどうかとも思うが、お盆を前に紙細工で飾り付けられた墓地のシーンを見て、そうそう、これは「紙民俗研究家」として調べたいと思っていたテーマなんだという思いも呼び起こされた。この習慣は各地に見られるが、瀬戸内と東北に顕著なような気がしている。
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