『空想の補助線』の補助線2024/01/30 08:19

昨年末に刊行されたエッセイ集『空想の補助線』に関して、共同通信による著者インタビュー記事がいくつかの地方紙に掲載されたほかに、1/27の毎日新聞に、若島正さんの書評が載った。ありがたいことである。若島さんは数学科出身の英文学者で、詰将棋・詰チェスの世界でも知られたひとだ。この書評でも折り紙と詰将棋の類似性について触れていた。詰将棋といえば、今から約30年前、同人誌『折紙探偵団新聞』に、以下のように始まるエッセイを書いたことがあった。

◎おりがみのルール
「手順の構成美」「配置の簡潔美・自然美・象形美」「パズル性を含んだ難解巧妙な作品」「趣向の持つ叙情や浪曼性」「数学的才能と芸術的才能」「誰もが手を出してみたくなる」「クラシック作品」「無駄を省く、不純を省く、簡素化する」「好ましい意外性と驚き」「すでに完成された作品に関する知識」… 
 以上は、コンピュータ雑誌「bit 」92年10月号に載った「詰将棋・詰チェスにみる知的作品の美」(井尻雄士氏)からの引用である。コンピュータ雑誌に載った以上、システム設計やプログラム作成に関連づけた話なのだが、ご覧のように「我々」にもけっして無縁の話ではない。本格ミステリ作家、ゲームデザイナー等々、この文章に首肯する向きは多々あろうが、「我々」以上にピッタリくるのは「詰将棋・詰チェス」を除けば、たぶん「詰碁」ぐらいなものだろう、と詰まらない冗談が言いたくなるほど、ここで述べられているのは「我々」のことだ。

そして、『空想の補助線』には、奇妙な偶然に関しての話題もあるのだが、この書評にもまた、ちょっとした巡り合わせがあった。

まず、紙面において同書の隣りで紹介されていた短編小説集『ブルーノの問題』(アレクサンダル・ヘモン著)の訳者のひとりである秋草俊一郎さんが、X(twitter)で「となりの若島先生評を読んで『空想の補助線』を注文。前川淳さんの「悪魔」を一時期繰り返し折っていたことがありました」と記していたのだ。意外なところにわたしの読者いることに驚いた。

そして、それらの記事の下にある「なつかしい一冊」というコーナーでは、東直子さんにより、杉崎恒夫さんの歌集『食卓の音楽』が紹介されていたのだが、杉崎さんは、国立天文台に勤務されていたかたで、5年ほど前、このブログ(歌のあれこれ:長い記事で、杉崎さんの話はうしろのほう)でも氏の歌に触れたことがあった。読み返すと、『空想の補助線』に書いた内容ともすこしリンクしている。

『最後の三角形』など2024/01/22 21:06

◆『最後の三角形』
『最後の三角形』(ジェフリー・フォード著、谷垣暁美訳)を読み了わった。奇想に溢れ、テッド・チャンさんや安部公房さんを思わせる短編小説集で、最近読んだ小説では出色だった。所収の『アイスクリーム帝国』の以下の言葉からは、折り紙造形の勘所ということを思った。

表現の抑制は、表現の複雑さに劣らず、技術の熟達を示す重要な特色だ。

◆九角形
九角形のコップ
餃子の王将のお冷のコップが九角形だった。これはプラスチック製だが、ガラスの九角形のコップも前に見たことがある。

◆濡れない文字
石碑の「中」の文字は濡れにくい

雨から天気が回復していった日、墓参りに行った。共同埋葬施設の横の墓碑も濡れていたが、ふと見ると、「中」という字だけが乾いていることに気がついた。他にも乾きやすい字はあるようだったが、「中」は特別だった。このかたちに水が溜まりにくいのは間違いないが、単に中心が縦に長い直線であることだけではないようでもある。

『空想の補助線』(数理エッセイ集)2023/12/01 15:04

新著の見本が届きました。折り紙の教本ではありません。
『月刊みすず』に連載していた数理エッセイ10編に、書き下ろしの8編を加えた一冊です。ブックデザインは葛西薫さんで、帯の文章は漫画家の高野文子さんです。

空想の補助線

前川さんのこの本は、折り紙展開図みたいな本です。
ありえないことだけど展開図は夜空に浮いていて、わたしは手をのばし、
山線と谷線を確かめながら、このエッセイ集を読んでいきました。
 高野文子 漫画家


かつて赤瀬川原平さんに「白難解」(白っぽい表紙の難解本を出す出版社)とも呼ばれ、数々の殿堂入りの本を刊行しているみすず書房から、いわゆる物書きではなく偉い科学者でもないわたしのエッセイ集というのは、なんだか落ち着かない気分ですが、冒険心あふれる編集者である市原加奈子さんにのせられて、不思議な本ができました。

折り紙教室 ほか2023/11/20 10:38

◆折り紙教室 
11/23(木、祝)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。作品は、「辰」です。
辰

◆イベント参加の日々
11/12、北杜市郷土資料館企画展「和算を楽しむ者たち」の関連イベント「甲州算額めぐり」に参加。

三浦公亮先生に久しぶり会うことができた。

そして、以下へ続く。
12/15,16、折り紙の科学を基盤とするアート・数理および工学への応用Ⅳ

数学本など2023/09/10 09:01

◆数学本2冊
『数学者の選ぶ「とっておきの数学」』他
最近出版された「数学本」2冊にインタビューとエッセイが掲載されています。

1冊目、『ロビンソン・クルーソー』の初版ほどではないにしても、最近のライトノベルみたいというか、題名が長い。

2冊目、こんな題名ですが、わたしは「数学者」ではなく、巻末の執筆者一覧でひとりだけ肩書きが「折り紙作家」と異色なのでした。

◆折り紙教室 
三色キューブ
9/24(日)13:00-15:00、府中郷土の森ふるさと体験館で、折り紙教室を担当します。府中郷土の森博物館は入場料が必要ですが、教室自体は無料です。
作品は、「三色キューブ」です。

野辺山宇宙電波観測所オンライン特別公開2023/07/17 09:44


2023野辺山特別公開

国立天文台野辺山宇宙電波観測所では、7月22日(土)にオンラインでの特別公開を行います。

8月26日(土)には、現地での特別公開も開催されます。

7月22日オンラインの特別公開日に先立って、すでにいくつかオリジナルビデオが公開されていますが、その中に、わたしが担当した「折り紙でながれ星をおろう!」というビデオもあります。