ペンダントトップ2009/04/02 00:35

ペンダントトップ
フランスで、わたしの作品をつかったペンダントトップがつくられていた。まったく知らなかったもので、著作権についてはまだ交渉中の部分もあるのだけれど、もののできはとてもよい。大きさは2.5cm程度である。背景が黄色いので写真ではわかりにくいが、トリケラトプスが金で、ほかは銀である。
それにしても、「ティーバッグのトナカイ」は妙に人気があるなあ。某氏曰く、「前川氏の裏の代表作」だそうである。

遊びをせんとや生れけむ2009/04/05 20:57

『大吉百福』と『風流をさな遊び』
 昨日は、月一の折紙探偵団東京友の会の例会と、日本折紙学会スタッフ会議の日だったのだが、2時過ぎに会場に行くと、春休みということもあったのか、会場が満員だったので、例会前半の講習への参加は遠慮し、近所を散歩することにした。
 日本折紙学会の事務局のある白山から、薬師坂(白山坂)を上り、白山上から、そこかしこに咲き誇る桜を楽しみながら、大観音通りを東に進む。右側に鴎外の旧居である観潮楼跡を臨み、団子坂を下ると、不忍通りの交差点にでる。なお、団子坂は、名探偵・明智小五郎の初登場作品・『D坂の殺人事件』(江戸川乱歩)のD坂のモデルでもある。交差点を過ぎ、さらに進むと、谷中に向かう三崎(さんさき)坂のとっつきに、元治元年(1864年)創業の紙工芸品店・いせ辰がある。ここまで、歩いてほぼ15分。いせ辰を訪れるのは久しぶりだが、春たけなわの休日の午後、最近の谷根千(やねせん:谷中・根津・千駄木)散歩の人気もあって、こじんまりとした店内は若い女性が多く、「かわいー」の声が響き、立錐の余地がないほどだった。
 そのうら若き女性に紛れて、ヒゲのオジサン、つまりわたしは、千代紙、というより錦絵を二枚購入した。前から知っている図柄で、けっこうよい値だったので買い控えていたのだが、陽気に浮かれて、財布の紐がゆるんだ。
 ひとつは、絵師不明の『大吉百福』。ところ狭しとお多福さんが描かれた絵である。みな、あのにこやかな顔で、餅をついたり、お茶を淹れたり、かるたをしたりしている。その中に、折鶴を折っている絵があるのだ。
 もうひとつは、『風流をさな遊び』というもので、絵師は、『東海道五十三次』や『名所江戸百景』の巨匠・歌川(安藤)広重である。もっとも、この刷り自体は近年になって彫り直したもので、さらに言えば、元の錦絵は天保年間(1830-1843)、つまり、いせ辰の創業より前なので、それを写したものと思われる。購入した理由は、もちろん、これにも折り紙関連の図像があるためだ。男の子の遊びと、女の子(と小さい子)の遊びの二図があるのだが、その後者に「をりもの」、すなわち折り紙が描かれているのである。作品は、蛙と箱と兜と折鶴である。170年ぐらい前の折り紙だ。
 ほかに描かれている遊びは、「ままごと」「あやとり」「歌かるた」「ほたる狩り」「道中すごろく」「きさごはじき」(おはじき)「おひばね」(羽根つき)「手まり」「手だま」「狐釣り」「ぼんぼん」とあった。「狐釣り」は、絵から推測できる(写真左下)として、「ぼんぼん」がなんのことか不明で、気になった。
 そして今日、「ぼんぼん」の詳細は、あの本を見ればわかるだろうということで、図書館で『日本児童遊戯集』(大田才次郎 原著:明治三十四年)をあたってきた。以前、以下の記述を確認した本である。(表記は現代仮名遣いに変更)
折物
 折物は重(おも)に女児の好みのなす戯れにて、重に正方形の紙を種々に折りて多くの形状を造るなり。その種類を挙ぐれば、鶴、蛙、三宝、舟、三番、肥舟、狐、砲艦、帆掛舟、洋人、駕篭、菊皿、股引、ふくら雀、香箱、福助、十二煙草入れ、足袋、提灯、シャツ、風車、糸入、宮、三番叟、風船、兜、襦袢、その他尚多かるべし。
 三番(三番叟の略)が二度でている。まあ、それはよい。昨日の折紙探偵団東京友の会・例会の参加者のうち、子供たちはほとんどが男児で、岡村昌夫さんが述べているように、実は昔(江戸)にも、折り紙が好きな男児は多かったという記録もあるのだが、約100年前、こう書かれていたわけである。まあ、それもよい。当時も女児は「砲艦」は折らないと思うけれど。明治三十四年、すなわち、1901年には、1903年に発明される飛行機の後につくられたであろう「紙飛行機」がないことも、面白い。

 と、それはさておき、「狐釣り」「ぼんぼん」である。で、あったあった。(この本、ちゃんと買っとかないといけないな)
「狐釣り」は「釣り狐」として以下のように説明されていた。
釣り狐
 二童相対し、細紐を以て罠をつくり、その端を二人にて持ち居り、(略)罠のかなたに一童あり終始狐の挙動をなし、両児の隙を窺い手速く罠のこなたにある茶碗などを奪わんとなすを、両児は又その手を罠にて締め捕らえんと待ち受け、互いに機を待つ様おもしろし。(以下略)
 なるほど。一方、「ぼんぼん」は、「盆/\/\は」として、以下の記述があった。
盆/\/\は
児童四、五人ずつ手を引き合って一列となり(多勢となれば幾列ともなり)、七月盂蘭盆会の頃に往来を押し歩行き、左の盆歌を同音に謡うなり。(以下略)
 なんだかわからないが、妻曰く「ちいさい子って、手をつないで、わいわいしているだけでも、遊びなのよ」
 まあ、そうかもしれない。
遊びをせんとや生れけむ、戯れせんとや生れけん、遊ぶ子供の声きけば、我が身さえこそ動がるれ。
(『梁塵秘抄』(約800年前の歌謡集))ということである。

アイコンとしての折り紙飛行機2009/04/18 02:34

折り紙飛行機
 折り紙飛行機がいつ頃からあり、どこで生まれたのかのをすこし調べたのだが、ほとんど不明だった。常識的に考えて、飛行機の発明後、つまり20世紀以降と思われる。

 折り紙飛行機の歴史は、薮の中、というか雲の中だが、それがアイコンとして定着しているのは面白い。最もよくある象徴性は、「Air Mail」だ。わたしの持っている、「Air Mail」用のスタンプにも折り紙飛行機が描かれている。というか、そういうものを選んで買ったのだが、折り紙作品として、そのような象徴記号として使われるモデルは、ほかに、折鶴、パハリータ(小鳥)、兜ぐらいではないだろうか、と思う。

 Macのメールソフトウェアでは、送信済みのアイコンが折り紙飛行機で、下書きは、折りかけの飛行機だ。

 フランスでは、郵便ポスト(黄色い!)にも、それらしきものが描かれていたし、ずばりそれをデザインに配した、情報・物流関係会社ポスターもあった。写真は、「おおこれはよいアングルだ」と、それを同時に撮ったもの。そしてなにより、フランスから来た手紙のスタンプにもそれが描かれていた。

 ほかに、折り紙飛行機には、「ある種の自由」といった象徴性もある。奈良教育大のポスターなどがそれだ。

「五×五」2009/04/22 22:25

「五×五」
トヨタファイナンスの会員向け雑誌『ハーモニー』5・6月号の「Rediscover Japan - 日本再発見- Vol.7 ORIGAMI」の記事に協力した。今日、見本誌が送られてきた。 これ向けの新作として、伝承の兜を一枚から25個折りだした作品をつくった。記事では作品の一部の写真しか掲載されていないが、全体は、上の写真のようなものである。名付けて「五×五」。