謹賀新年2018/01/03 16:09

◆謹賀新年
折鶴蒲鉾
あけました。

◆『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(トラヴィス・ナイト監督)
観た。思った以上に「折り紙映画」であった。
「ほんとうに折っただけなの?切っていないの?」(うろ覚え)なんてセリフが出てくる。
紙のサイズに比して大きすぎるモデルがあるのは気になったが、バリントン・J・ベイリー氏の奇妙な小説『宇宙の探究』に出てくる「オリガミ宇宙」のような性質に近いと考えればよいのかもしれない。

このオリガミ宇宙は、わが宇宙がつまらないものに思われるほど豊富な内容を持っている。そこの物体は、折りたたまれることによって、まったく新しい資質を展開するのである。人は(つまり実在は)一枚の紙を正しく折ることにより、椅子、テーブル、飛行機、家屋、果実、花、生きた動物、男や女、その他事実上なんでもつくることができるのだ。(略) 質量も大きさも不変量ではなく、折りたたむことによって増やす(または減らす)ことができるから、一辺一フィートの紙が乗客百人を収容する旅客機にもなりうるのである。
(『宇宙の探求』小隅黎氏訳、『シティ5からの脱出』所収)

ただ、クボの術は、そこまで自由自在ではない。その証拠に、大きなものをつくるための、一種の複合折り紙も出てきた。「おお、ユニットおりがみ!」と内心つぶやいた。

クワガタが重要なキャラクターとなっていたので、15年ぐらい前に展覧会で展示した『クワガタの誕生』の写真を載せておこうかな、と。
クワガタ
『クワガタの誕生』

T3パズル
日本テセレーションデザイン協会の荒木義明さんによる「T3パズル」。裏表で相補的なパターンになっていて、模様を描いて遊ぶ。
折鶴の連続模様をつくってみた。

くろよんロイヤルホテル
暮れに、大町市のくろよんロイヤルホテルで、鳥海太郎さん布施知子さん夫婦と、前川夫婦で会食をした。このホテルにはアートルームというものがあって、その一室は、布施知子さんの作品によって飾られている。
くろよんロイヤルホテルアートルーム


氷柱
くろよんロイヤルホテルで見たつららである。短いつららをノイズとしてそれをばらつきとすれば、長いつららは3σ(標準偏差の3倍)ありそうなので、有意なシグナル(?)である。

つららの語源は、「連なる」にあるという説もあるので、このように連なっているのが、まさにつららの姿なのかもしれない。まあ、でも、古文にでてくる「たるひ(垂氷)」のほうが語源として、本質的のような...

◆円柱をつぶす
円柱をつぶしたさいの錐面と柱面
甘酒の紙パックをつぶしたときにできる、ふたつの錐面と柱面の組み合わせからなる立体が、けっこう面白いなあ、と。紙が厚いので、しわになったり破れたりせず、可展面のまま、変形するのである。

「静かなブーム」?2017/12/28 23:00

オリガミの魔女と博士の四角い時間
12/30 22:00-22:30にスペシャルが放映される。

(The Paper Magician チャーリー・N・ホームバーグ著、原島文世訳)
紙の魔術師
100年前のロンドンを舞台にした折り紙魔法ファンタジーで、ディズニー映画化権取得ともある。まだ読んでいないのだが、表紙のイラストのモデル(少なくともツバメ)は、シッポ・マボナさんの作品だ。

折り紙はいつの時代も「静かなブーム」なのだが、フィクションで折り紙を扱うブームは、やはり来ているような気がする。なお、『KUBO』と『ブレードランナー2049』は、まだ観ていない。

◆「かっこつきの言葉」
「静かなブーム」とかっこつきの言葉を使ったが、最近読んだ小説の、以下のくだりは笑った。

あの「扉」は「出口」だ。
これでよし。
答えがわからないものごとを相手にするときは、「」に入れてしまえばうまく行くものなのだ。
『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』(ダグラス・アダムス 安原和見訳)

◆菱形十二面体(四凹面)
菱形十二面体(四凹面)
一枚折り(√2用紙)だと安定しないだろうと思っていた構造が、試して見たら思いのほか安定した。剛体折りができない構造なので、むしろそれがセルフロックとなって安定するのである。なんでもっと早くやっていなかったのか。パズルとしても悪くない。

◆シェイクスピアがデバッグについて述べたとされる文章
今日、担当していたプログラムに潜在的なバグを見つけた。修正できたが、焦った。

以下は、シェイクスピアがデバッグについて述べたとされる(!)文章である。
(『Practical C Programming』(Steve Oualline)による)

Bloody instructions which, being taught return to plague the inventor.
血だらけの命令は、その考案者に災難として返ってくる。
出典は『マクベス』)

◆30年前はつい昨日のようだが、やはり忘れている
以下、『数学セミナー 2017年10月号』のインタビューの応答で、使われなかった話である。

問:動物などの作品と、幾何学的な作品で違いはありますか?

答:あまり違いはありません。かなめはアイデアです。たとえば、即興で動物をつくる場合などでは、既知の基本形を使って特徴をぱっと見せることができればよいと考えますが、きちんと作品にしたいと思ったときは、デフォルメや見立てにどう新しいアイデアを盛り込むかを考えます。アイデアの重要性という意味で、具象的な造形と幾何造形に違いはありません。

この回答をしたときに、頭に浮かんでいた「ぱっと見せることができれば」の造形は、家人へのウケだけをねらって即席でつくったパンダの赤ちゃん(写真)であった。生まれたばかりのパンダで一番意外なのは、尾の長さである。
ピンクピン太郎

なんでこの話を思い出したかというと、パンダの「第一形態」の名が、TVニュースのインタビューでの少女の命名により「ピンクピン太郎」である、ということを数日前に知ったからである。

インタビューといえば、最近、『折り紙工学、複雑な立体を1枚で表現する技術の可能性』(DIAMOND Online)という舘知宏さんのインタビュー記事を読んだ。その中に「舘の折り紙との出合いは、小学2年生のときにさかのぼる。本で折り紙作家、前川淳の「悪魔」という作品を目にし、魅せられた。」とあった。すでに聞いていた話だが、舘さんのような優秀な研究者のきっかけのひとつになったというのは、素直にうれしい。

舘さんの見た本は『ビバ!おりがみ』の新装版(1989)だという。元の本の初版は1983年なので、34年前、舘さんがちょうど生まれたころになる。昭和だ。わたしとしては、ついこの間のような気もするのだが。

30年になると、忘れてしまっていることも多い。先日もそんなことがあった。一ヶ月ぐらい前、凧形二十四面体に関して、「以前つくった記憶はあるのだが、メモが見つからない。...昔つくったのものとは、違うような気がする」と書いた。
これが、『おりがみ新世紀』(笠原邦彦さん、1989)に載っていることを小松英夫さんから指摘されたのである。奇妙な近似を使っていて、記憶どおり、細部は違っていたのだが、本に紹介されたことを忘れているというのは、困ったものである。いずれ、旧作を新作ですと言いそうだ。

直前の案内など2017/12/15 19:38

◆直前の案内
明日(12/16) 10:00-17:00、文京区白山のJOASホールで、第23回折り紙の科学・数学・教育 研究集会があります。誰でも聴講できます。世話人をしています。

明後日(12/17)13:00-15:00、府中郷土の森博物館のふるさと体験館で、講習会(作品:サンタクロース)をします。

◆『坐忘録』(堀内正和著)
彫刻家・堀内正和さんのエッセイ『坐忘録』の状態のよいものを入手した。手元に置きたい本のリストにずっとあがっていたのだが、最近、古書店街に行っても、美術関係の棚を見ていなかった。しかし、神保町に寄った妻の頭に、ふとわたしが言っていた書名が頭に浮かんで、棚を見たらあった、ということだった。ありがたい。

図書館で斜め読みしたことがあったが、今回初めてきちんと読んでいる。彫刻の教科書としてもすばらしいし、視野が広く、ほんとうに教養のあるひとっている(いた)んだよなあ、としみじみ思っている。堀内さんが戦後すぐに、彫刻家の目で丸石神に注目しているのは驚いた。

オリガミの魔女放映時間など2017/12/09 09:14

第8話の放映時間が変わったそうです。

★東海・近畿ブロック
愛知、三重、岐阜、滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山
12月9日(土)放送なし
12月17日(日)0:30-0:45 (12月16日深夜)

★それ以外の地域
12月9日(土)16:45-17:00 初回放送
12月17日(日)0:30-0:45 (12月16日深夜)再放送

◆ジョージア国旗
Fractal Georgia Flag
ジョージア(グルジア)の国旗が、フラクタルぽいなと思ったので、フラクタル化してみた。深い意味はない。

 ◆ボロミアン八面体
Borromean Octahedron
ボロミアンリング構造の正八面体をいろいろ試してみた。ただの舟のようなもの6枚(黒、黄、灰)でも、小さくて摩擦が強い紙だとけっこう安定する。
下のX型の特殊用紙で組むものがきれいで一番気に入っている。

昭和のくらし博物館など2017/11/28 21:56

◆昭和のくらし博物館
先週の休日、大田区南久が原にある昭和のくらし博物館に行った。高野文子さんの原画展が開催中である。原画展のほかに、「山口さんちの子ども部屋」という展示も高野さんが手がけていて、展示物の中に、内山光弘(こうこう)さんの「光弘式折紙」もあった。

昭和のくらし博物館自体も面白かった。戦後すぐにできた木造の民家がそのまま博物館になり、そこで育った、生活史研究家の小泉和子さんが館長をつとめている。

世田谷区東南部にあるわたしの実家は、この博物館から遠くない。この日も実家に行くのに合わせて寄った。コンクリ製の片屋根のゴミ入れ、庭の井戸、廊下、縁側、柿の木などに、少年時代の実家の風景がよみがえった。袋小路の道が多い町割りもそっくりだった。ともに武蔵野台地の崖線付近に位置し、同じような時期に宅地化が進んだ土地だからだろう。

◆ボロミアンキューブ
ボロミアンキューブ
数日前に書いたボロミアンリングの構造は、正八面体と双対関係(面の中心を結ぶと互いの立体になる)の立方体にも適用できる。似たようなことは試したことがあったが、単純に考えたところ、昔からあったようなというか、予定調和というか、きれいなのものができた。1:4の長方形3枚による立方体である。既にあったであろう感がフルレンジに強いのだが、記憶を探っても、この造形自体は、でてきそうででてこない。面が割れないようにするのが「正解」で、パズル的な面白さもある。

◆映画
『ブレードランナー2049』(わたしの折り紙モデルがでてくる)、『KUBO』(折り紙ぽい術がでてくる)、『ギフテッド』(見逃したくない数学天才もの)と、観たい映画が多いのだが、観る時間をつくることができない。

オリガミの魔女と博士の四角い時間など2017/11/24 23:00

第7話が、明日11/25(土)に放映されます。布施知子さん回です。
12月は、放映時間が変則。

第7話「雪のふる夜」11/25(土)22:45-23:00
 (再)12/2(土)0:45-1:00、12_/30(土)15:45-16:00

第8話「サンタとトナカイ」12/9(土)16:45-17:00
 (再)12/17(日)0:45-1:00

◆正八面体とボロミアンリング
11/18-19に参加した「折紙探偵団静岡コンベンション」での収穫のひとつは、田中将司さんによる、大きさが変わる輪だった。これを組み合わせると正八面体ができる。つくりかたはとてもエレガントだ。

田中さんは2個を使って正八面体にしていた。「対称的にするには輪は3個ですよね」と言うと、「3個の輪だと、絡ませなければならないんですよね」との返事だった。じっさい、絡ませなければならない。そして、対称的な絡ませかたは、「ボロミアン・リング」になる。これがちょっと面白かったので、以下に詳細を示す。

ボロミアンリングに関しては、以前このブログに「オリンピアンとボロミアン」という話を書き、『折る幾何学』には、模様がボロミアンリングになるユニットの立方体も載せた。

田中リング

写真左上の絡ませかたが、ボロミアン・リングである。三つの輪が、ふたつ同士の絡みがないのに、全体で絡まっている。

ただし、これとボロミアンリングが同じであることは、ぱっと見た目では、わかりにくいかもしれない。ボロミアンリングの典型的な図は、下の「三輪違い」であり、名前の由来であるボロミア家の紋もこのかたちだ。

ボロミアンリング

これと、上の輪の絡まりかたは、ほんとうに同じなのか。同じであることは知っているのだが、「実験的」に確かめてみた。輪ゴム三つを使い、ひとつだけ切り、再度つなげてからませてボロミアンリングをつくる(写真上左)。これを立方体にかける。すると、ふたつの輪の関係でいうと「土星と輪」の関係になっているかたちにすることができる。(写真下)
ボロミアンリング(別角度)

◆折鶴ネコ
折鶴ネコ
折鶴に乗ったネコという造形は、我がコレクション(!)の中にほかのタイプのものがあるのだが、昨日、別のタイプのものを見つけた。なにがなんだかわからない造形ではある。

紙燭と藤原定家、そして、「紅旗征戎非吾事」のこと2017/11/18 00:10

以下、『折紙探偵団』の記事のために、江戸時代の奇術を調べていてわかったことからの、こぼれ話である。

『続懺悔袋』(ぞくざんげぶくろ、1727、環中仙(かんちゅうせん))という、江戸中期の座敷芸・奇術指南書に「はしを紙そくにて折ル」というものがあった。「紙そく」は紙の束のことなのか、折り紙的な奇術の話題として使えるかと、わたしの「折り紙アンテナ」にかかったわけである。

しかし、「紙そく」というのは、紙燭、脂燭などと書く、室内灯火の一種なのであった。細く縒った紙などに油を染み込ませたものである。ちなみに、「紙そくにて箸を折る」のタネ明かしは、それを湿らせて鞭のように勢いよく振ると箸を折ることができるというものだった。

...という知識を得た数週間後、『定家明月記私抄』(堀田善衛)を読んでいると、脂燭でひとを叩いたという話がでてきた。江戸の奇術からさかのぼることおよそ500年、九条兼実の日記『玉葉』に、藤原定家の若き日の、以下の話が記されているという。
伝へ聞ク、御前試夜、少将雅行ト侍従定家ト闘諍(トウジョウ)ノ事有リ。雅行定家ヲ嘲哢スルノ間、頗(スコブ)ル濫吸(ランスイ)ニ及ビ、仍(モッ)テ定家忿怒ニ堪ヘズ、脂燭ヲ以テ打チ了ンヌ。

雅行は、あまり歴史に名を残してはいないが、源雅行という、定家より年少だが官位は高いひとである。濫吸(ランスイ)というのは、場違いな狼藉のことで、御前試(ゴゼンのココロミ)というのは、新嘗祭の儀式のひとつだ。

これは、宮廷行事の日、定家(二十四歳)が侮辱され、灯芯を振り回して、自分より位の高いの青年(十九歳)を叩いたという話だ。その後、定家は除籍処分も受ける。

なお、『玉葉』の表記は「脂燭」のようで、平安時代後期のそれが紙でできていたのかは不明だ。当時の紙の貴重さを考えると、違うような気もする。

若き定家のこの癇癪は、有名な話のようだ。好事家・環中仙はシャレの効いた人なので、奇術本『続懺悔袋』にも「箸を紙そくにて折ル術の源は、歌聖・定家にあり」と書きそうだな、とも思ったのだが、そんなことはないのであった。

この事件は、文治元年(1185年)十一月のことである。「御前の試み」は、いまは無くなった行事のようだが、十一月の中旬の寅の日と決まっていた。むろん太陰太陽暦(いわゆる旧暦)である。
(11/21追記:堀田さんの『玉葉』の引用と思われる記述では、文治元年十一月二十五日とあったが、あらためて計算してみると、文治元年十一月中旬の寅の日は、1185年12月6日の壬寅、十一月二十三日であった。これに基づき、上の文は、すこし変えた。日記の『玉葉』の日付が十一月二十五日で、事件自体は二十三日ということと思われる)

そういえば、明日18日(あ、もう今日か?)は二の酉だが、熊手を売る酉の市の決めかたは、すこし奇妙なものになっている。年末近くの行事ということが重要なので無理もないのだが、太陽歴の11月に含まれる酉の日という、新旧折衷なのだ。もちろん、これも、もとは旧暦の十一月だ。今年のように閏月のある十三ヶ月の年ではずれは大きくなる。旧暦だと今はまだ九月末なので、正統の酉の市(?)は、実はまだまだ先だ。一の酉が12月24日(旧暦十一月七日 乙酉)で、二の酉が1月5日だ。年が開けてもまだ十一月と考えると、締め切りを日延べした感じになって、すこしうれしい。

などと、話がずれていったついでに、以下、『明月記』の話である。

なぜ『定家明月記私抄』を読んでいたかというと、これは奇術の歴史への興味とはなんの関係もない。『明月記』は、天体現象や気象現象の記述が多いことでも知られ、それはそれで面白いのだが、今回は、そういう関心でもない。震災以降に強くなった、戦中の日記を読みたい気分の延長線で読んでいたのだ。『明月記』もまた戦乱の時代(源氏vs平家)の日記なのだ。ただし、『明月記』における戦乱の扱いは、以下の言葉が通奏低音となっていることで知られる。
世上乱逆追討雖満耳不注之 紅旗征戎非吾事
(世上乱逆追討、耳ニ満ツトイヘドモ、之ヲ注セズ。
紅旗征戎、吾ガ事ニ非ズ。)
(反逆者を討つという話が耳にはいってくるが、それは記さない。天皇の旗を揚げて夷狄を征することは、わたしの関与することではない)

白楽天(白居易)の「紅旗破賊非吾事」を援用した言葉である。キレて、脂燭を振り回すひとにしては、随分とクールな書きぶりだが、芸術至上主義者・定家のイメージを決定づけた言葉として知られる。堀田善衛さんは、戦中、この言葉に胸を射抜かれたという。
自分がはじめたわけでもない戦争によって、まだ文学の仕事をはじめてもいないのに戦場でとり殺されをかもしれぬ時に、戦争などおれの知ったことか、とは、もとより言いたくても言えぬことであり、それは胸の張裂けるような思いを経験させたものであった。
(『定家明月記私抄』-序の記-より)

氏が戦後に、朝鮮戦争時のアンガージュマン(コミットメント)の問題をテーマにした『広場の孤独』で筆名を高めることになるのも、「吾ガ事ニ非ズ」をどう考えるかということの別の面とも言える。なお、堀田さんは、『方丈記私記』でもそうだったが、『定家明月記私抄』でも、定家にたいして、けっこう批判的な視点もある。

さらに、もとの白楽天(白居易)の詩を見ると、自己憐憫の趣きもあって、またニュアンスが異なっていた。
紅旗破賊非吾事
黄紙除書無我名
唯共嵩陽劉處士
圍棋賭酒到天明
(旗を掲げて敵を破ることは、わたしの務めではない。詔書には、わたしの名はない。ただ、嵩陽(地名)の無位の劉さんと共に、酒を賭けて、夜明けまで碁を打っている)

まあ、定家も白楽天もエスタブリッシュメントなんだよね。

凧型二十四面体 -高い近似-2017/11/10 00:23

一週間ほど前に記した、ユニット折り紙の「凧型二十四面体」をつくってみた。以前つくった記憶はあるのだが、メモが見つからないので、同じものかどうかはわからない。というより、想像と記憶よりきれいにできたので、昔つくったのものとは、違うような気がする。
凧型二十四面体

球に内接する、面の多い立体なので、ころころと可愛らしい。
なお、凧型二十四面体の折り紙には、わたしの知る限り、川村みゆきさんの作例がある(『多面体の折紙』)。それは、ここで紹介するものとは異なるが、しっかり組めて、外側の面に余計な折り目のでない、優れたモデルである。

ここでは、凧型を内接させる長方形を考え、それを基本にした。この長方形の縦横の比(すなわち、凧型の対角線の比)は、2:1.7927...になる(図)。

この比率は、1:2の単純な長方形から、工程数少なく、高い近似で折り出せる。(図の下:(5-√2)/2=1.7928...)
凧型二十四面体の面

さらに、√(31-8√2)/7=0.6338...を、やや精度の低い近似だが、(√2+1)/4=0.603...で近似してしまう。すると、1:2の長方形を使って、工程数少なく、無駄な折り目のないモジュールをつくることができた。ポケットとフラップも悪くない感じで、無理なく組める。24個同じものをつくるので、簡単に折ることができるのはよい。

面白いのは、凧型の短い対角線の長さを2としたときの、長い対角線1.792...の近似である。(5-√2)/2が、できすぎなほどに精度が高いのだ。

この近似は、ふつうサイズの紙を使うと、紙の厚さより一桁以上低い精度である。完全一致と一瞬思ったほどである。しかし、二重根号は、√(a±2√b)と変形して、a^2-4bが平方数でないとはずせないので、ふたつの長さの二重根号をはずすことはできない。無理数の和が有理数になることはあるが、二重根号の和で二重根号がとれるということがあるとも思えない。まあ、それ以前に、じっさい、数値は微妙に違うのであった。これには、マーティン・ガードナー氏のエイプリールフールねた「e^π√163は整数になる」を連想した。
(じっさいは、262537412640768743.99999999999925...)

なお、余計な折り目がつくために採用しなかったが、対角線の交点から鈍角の頂点の長さ√(31-8√2)/7=0.63384...も、近似による長い対角線の√2/4で近似(作図、工程は難しくない)すると、(5√2-2)/8=0.63388..と、これまたびっくりの、精度の高い近似になる。

ちなみに、凧型の短辺と長辺の長さの比は、じっさいに、うまく二重根号がとれて、2 : 4-√2になる。

こうした対称性の高い立体の比率を確認していると、うまいぐあいに式が整理できるなあと思うことと、なんでこんな面倒な式のままなのだと思うことの2種類の場合がある。この立体の場合は、微妙に複雑だなあ、という感想だ。しかし、二重根号の値が「きれいじゃない」と思うのも、また色眼鏡だろう。この凧型の対角線にでてくる二重根号の式は、√(a±2√b)のかたちにすると、いずれもa=b-1であり、かつbが2の累乗である。「理屈」はわからない(ひねり出せない)が、きれいといえばきれいである。

『ゴースト』と『すべての見えない光』2017/11/05 20:29

紙飛行機
○○警察という言葉がある。フィクション中の○○の描写の正確さをチェックするひとのことだ。微に入り細を穿って難癖をつけるのは、よい趣味とは言えない。しかし、専門の折り紙となると、描写が気になってしまう。「折り紙警察」である。困ったもんだ。ただし、よい悪いというものではなく、それをきっかけにしてさまざま考えました、というような話である。

中島京子さんの『ゴースト』の第三話、「きららの紙飛行機」に、その題名のとおりに、紙飛行機が出てきた。敗戦直後の浮浪児の幽霊が、現代のネグレクトされた幼女を守る切ない話である。他の話も、ひとが生きたことが忘れ去られることの哀しみを描き、現代のアクチュアルなテーマにもつながっている。

少年は、キャラメルの包み紙で、そして、チラシを正方形にして、紙飛行機を折る。後者は、以下のように描写される。
ケンタはさつきフェスティバルの会場でもらったチラシを、斜めに折って三角形を作り、はみ出した部分を折って爪でしごくようにして筋をつけてから切り離した。そして一度斜めに折ったものを開くと、正方形ができていることを、きららに見せてやった。
「おっきい四角ができたろ。そしたら、さっきみたいにまずまんなかで折ってさ、それから三角を二つ作って。こっちとこっちを折って、それから、ここが大事なんだ。ここをちゃんと折んないと、飛ばないんだぜ」
まず、紙飛行機を長方形ではなく正方形にしてから折ることが珍しい。ただ、ケンタは、キャラメルの包み紙(だいたい正方形である)でもそれを折るので、正方形からの折りかた以外を知らないのかもしれない。気になるのは、どのような折りかたかということだ。カバーのイラストレーションは本文の描写にそっているとは必ずしも言えないが、それも参照すると、ここで折られた紙飛行機は、図の一番上のようなものと読み取れなくもない。ちなみに、イラストレイターは河合いづみさんで、野中ユリさんの仕事を彷彿とさせる、魅力的な絵である。

さて、図の一番上のかたちだが、残念ながら、これはうまく飛ばない。揚力に対して、重心がうしろにありすぎて回転してしまうのだ。これを解決するためには、2段目のように、あらかじめ1/6ほど細く折るか、3段目のように巻きこむように折って、機首を重くするとよい。キャラメルの包み紙のような小さい紙でも同様であることは、じっさいに試してみた。4段目のように、翼の後方の面積を大きくするために、翼の折り返しを軸と平行にするという方法もある。河合さんのイラストレーションにプロポーションが一番近く、よく知られたものは、図の一番下の「ヘソヒコーキ」だが、これは、長方形から折るものである。
結論としては、2段目か3段目を「ケンタの飛行機」とするのがよさそうだ。

フィクション中の紙飛行機ということでは、妻が、ちょうど読み終わった「『すべての見えない光』(アンソニー ・ドーア著、藤井光訳)にも、紙飛行機がでてきたよ」と教えてくれた。「見えない光」というのは電波のことで、裏表紙の惹句に、「ラジオから聞こえる懐かしい声が、盲目の少女と若い兵士の心をつなぐ」とある小説だ。わたしは読んでいないのだが、紙飛行機の部分を引用する。
息子のマックスは、今では六歳、泥や、犬や、答えようのない質問が大好きだ。最近ではなによりも、複雑な形の紙飛行機を折ることに夢中になっている。学校から帰ってくると、台所の床にひざをつき、翼端や尾部や機首をあれこれ試しては品定めをしているが、要は紙を折るという動作、平らのものを飛べるように変形させることが大好きなように見える。
「紙を折るという動作、平らのものを飛べるように変形させることが大好き」とな! すばらしい。

なんかいろいろ2017/10/28 10:12

◆折紙者は、紙の羊の夢を見る。
たった今知った話。前作に折り紙のユニコーンがでててきた『ブレードランナー2049』(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)に、折り紙の羊が登場するという。写真を見ると、100%私の作品である(追記10/30:厳密にはツノをすこし変えているようにも見える)。『Genuine Origami』にでているものだ。なんの連絡もなかったなあ。折り紙の作品の多くには作者がいるということがいつも軽く見られているのは、たいへん残念である。

『クボ 二本の弦の秘密』(トラヴィス・ナイト監督)
映画と折り紙と言えば、近く上映される、日本を舞台したストップモーションアニメに、式神の術のような折り紙の術が登場するらしい。

今日、10月28日(土)22:45-23:00に、第6話「くじゃく」が放映される。

上毛新聞
本日創刊130年記念紙面の上毛新聞に、「変形折鶴」を提供した。
新聞紙面(812:546=1.487...:1)の長方形に菱形を内接させて折るものである。なお、一般的な新聞紙は1:√2ではなく、3:2と見たほうがよい。
試作の過程で、写真のようなちょっと手の込んだ鶴もつくってみた。
newspaper_crane

◆World Origami Days
10/24-11/11はWorld Origami Daysである。 詳しくは、こちら

明日10/29(日)13:00-15:00。また、台風が来ている...

先日、穂高さんから『夜明けのカノープス』の文庫版をご恵贈いただいた。単行本でも読んでいたのだが、天文小説の傑作である。「天文小説」とはなに?ということだが、SFではなく、星が重要な意味を持って登場する小説のことをそう言ってみた。

小説中にも説明があるが、カノープスは、太陽を除いて、シリウスに次いで全天で2番目に明るい恒星である。しかし、南天の星なので、北半球中緯度からは見えにくい。日本では見えない土地も多く、見えてもすぐに沈んでしまう。ヨーロッパからは無理で、中国も南に行かないとだめだ。スペクトル型はF0なので、本来は白っぽい星だが、低い空では大気層を長く通るので、朝焼け夕焼けの原理と同じで赤い星になる。人類の多くが北半球中緯度に住むので、世界各地に、「見えにくい明るい星」の伝説がある。

と、書いているだけで、いろいろ象徴性があるわけだが、『夜明けのカノープス』の味わい深さは、第一に、このカノープスの特徴をうまく使っていることにある。その象徴性が、穂高氏の筆が寄り添う、傷を負ったひとや葛藤と逡巡の中にあるひとへの温かい眼差しと融合して、地上の物語になっている。
解説は、渡部潤一国立天文台副台長だ。文才あるな、副台長。

『Hidden Figures』(セオドア・メルフィ監督)
映画『ドリーム』(Hidden Figures)を観た。NASAの、黒人女性の計算機屋さんたちの話である。原題の「Hidden Figures」の Figureには、計算、数字、図形、そして、人の意味がある。ベタに、『栄光なき星たち』なんて邦題もよいのに。

天文台で計算機の仕事をしているわたしは、彼女たちの後裔と言えなくもない。というわけで、やや遅れ気味の仕事のモチベーションを上げる意味でも観た。ただ、差別の問題が主なテーマで、数学や計算の仕事の描きかたは物足りないところもあった。よい映画であるのは間違いない。

「モチベーションをあげるために映画を観よう」というのは、だいたい成功しないが、ときどきある。辞典関連の仕事のため、『舟を編む』(石井裕也監督)を観たこともあった。これは、ロードショー上映が終わっていたので、長野県茅野市の新星劇場というところに行った。映画は、主に、東京にいるときに府中などで観るのだが、山梨(長野県境)と東京を行ったり来たりしているので、長野・山梨で観ることもたまにある。新星劇場は初めての劇場だった。すると、なんと、最後の通常上映プラグラムで、同劇場は何日か後に閉館を控えていたのであった。2013年のことである。

先日、この新星劇場がTVに出ていた。火野正平さんの自転車の番組だ。いまでもときどき上映会があるらしいが、地方の単館劇場の営業の難しさは想像できる。4年前に行ったときも、最後の最後ではないこともあってか、観客はまばらに10人ほどだった。

『神は数学者か?』(マリオ・リヴィオ著、千葉敏生訳)
自然理解における「数学の不条理までの有効性」(ユージン・ウィグナー)をテーマにした読み物。リヴィオさんの本は、バランス感覚がよい。
重箱の隅だが、冒頭近くに「ちなみに最小の完全数は6であり、以下、28、496、8218と続く」とあったが、4けたの完全数は8128である。こういう誤植というのは「あるある」だが、数値や名前を間違うと目立つ。

『日本奇術文化史』(河合勝、長野栄俊、日本奇術協会)
大著『日本奇術文化史』を買った。妻曰く「図書館が買うような本ね」
この本で取り上げられている、いわゆる和妻(日本の奇術)や、和算、和紙、短歌、俳句、柳田民俗学などは、ほんとうに面白くて、いろいろ調べたくなる。このごろ流行りの「ニッポン偉い」になっていないかという自省も湧くが、偉い偉くないではなく、面白い。

わたしが、これらを面白いと思う感情はどこに起因するのか。まずは、当然のことながら、わたしに日本が染みついているということがある。ある程度資料も読めるし、文脈を想像しやすい。そして、すこし違って、それらを一種のエスニックなものとして見る視点もある。

で、折り紙はどうなのかというと、これは、なぜかわたしの中で、もっと無国籍でコスモポリタンなもの、日本が染み付いていない文化のカテゴリーにはいっている。

◆球場に行かなかった。
ここ数年、球場に観戦に行っていない。9月末、神宮球場のスワローズ・タイガース最終戦を観に行こうとしたのだが、ほぼ消化ゲームなのにチケットが売り切れていた。CSの雨の甲子園はひどかったが、2位で日本シリーズに行ってもオマケみたいなものなので、そんなに悔しくない。むしろ、「伝説のゲーム」は、負けたほうが、伝説である。