作品は、「つる」、「ふくすけ」、「いえ」、「おに」、「ゆうびんふ」、「(交差旗)」、「(おたふくの箕(み)」の7種である。なお、カッコで示したものは、図に題名がついていない。そして、「交差旗」は、初めてみたものだ。
絵柄や表記(たとえば、「ちゑ」ではなく「ちえ」であること)などから、戦後のものであるのは確実で、パッケージの裏にはこれを裏づける情報もある。ゴム印のようなもので、「東京都文京区富坂XXXXXXXX 白井商店 電話(XXX)XXXXX番」とあるのだ。貼り合わせた継ぎ目の上に文字があるので、押印であるのは間違いない。
行政区画としての文京区富坂は、1940年から1964年に存在した地名である。いっぽう、東京の市内局番が3桁になったのは、1961年からだ。したがって、すくなくともこの印は、1961年から1964年の間のものである。押印自体が後年のものである可能性もあるが、商品も、1960年前後のものと見て間違いないだろう。
なお、文京区富坂というのは、現在の小石川二丁目で、日本折紙学会事務局のある白山も近い。周囲は、いまでも紙や印刷関係の業者が多い土地だが、残念ながら、現在白井商店が存続していることは確認できなかった。
紙の裏に描かれた図の形式も興味深い。折り目や矢印の記号はほとんどなく、紙にプリントされた模様の色をたよりに工程を追うというものなのだ。1960年ぐらいになると、吉澤章さんの『折り紙読本』(1957)なども出ており、「近代的な」図もあったはずだが、まったく別の形式の図なのである。
また、表記が濁音のある「おりがみ」ではなく、「おりかみ」であるという点でも貴重な資料である。
◆ノブドウ(←修正:ヤマブドウ 11/12)
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