雪をよけるために風と反対向きに向けた、野辺山観測所の45m電波望遠鏡である。
で、ふと、考えた。これを真上に向けて回転させれば、すり鉢状の鏡面が見かけ状の水平面になる速度があるな、と。
回転体の局所的な水平面は、重力と遠心力の合力で決まる。遠心力は、角速度を一定にすると、中心からの距離に比例する。重力は一定なので、「水平面」の傾きは、中心からの距離に比例することになる。傾きが一次関数であるそのような曲線は放物線である。パラボラアンテナはまさにそのかたちなのだ。
計算してみると、45m鏡の鏡面が水平と錯覚できる回転は、10秒で1回転ぐらいという値となった。じっさいの45m鏡の最速の回転速度は1回転に20分かかるので、100倍足りないのであった。
と、まあ、ばかなことを考えたのだが、回転する物体がつくる放物面を反射鏡に用いた望遠鏡は、じっさいにある。円柱の容器にいれた流体を回転させると、上と同様の理屈で、その表面が放物面になる。これを利用するのだ。
2003年にできた(現在運用していない)カナダのLZT(大天頂望遠鏡)が、そのひとつだ。これは、水銀の回転による口径6mの大型光学望遠鏡である。名前のとおり天頂しか観測できないが、口径に比べてコストが低い利点があるという。回転速度によって焦点の位置も変えられる。
また、1960年代、赤外線天文学のパイオニアのレイトンやノイゲバウアーらによる赤外線観測のための望遠鏡も、液体エポキシ樹脂を回転させながら冷却させてつくった放物面鏡だったという話だ。
◆『ギフテッド』
数日前に、映画『ギフテッド』(マーク・ウェブ監督)を観た。
数学の天才的な能力を授かった少女とその伯父の話だ。ギフテッドというのは先天的な卓抜した能力のことだが、もっと一般的に、授かったものという意味も込められているのだろう。少女のクラスメイトである「普通の」少年のはにかんだ笑顔も最高だった。
エンドロールの数学アドバイザーに、天才数学者・テレンス・タオ氏の名前を見つけた。タオ氏は、天才児に関するアドバイザーでもあったのかもしれない。
キーとなる難問に、ナビエ-ストークス方程式を選んだのは「フィールズ賞も、ノーベル賞も」というセリフもあってのことだろうか。流体力学の方程式なので、ノーベル物理学賞の可能性もないとは言えない。
鑑賞後の会話:
妻「日本には、天才の教育制度あるの?」
わたし「将棋の奨励会とか..」
◆岡山天体物理研究所の切手
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