謹賀新年2018/01/03 16:09

◆謹賀新年
折鶴蒲鉾
あけました。

◆『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(トラヴィス・ナイト監督)
観た。思った以上に「折り紙映画」であった。
「ほんとうに折っただけなの?切っていないの?」(うろ覚え)なんてセリフが出てくる。
紙のサイズに比して大きすぎるモデルがあるのは気になったが、バリントン・J・ベイリー氏の奇妙な小説『宇宙の探究』に出てくる「オリガミ宇宙」のような性質に近いと考えればよいのかもしれない。

このオリガミ宇宙は、わが宇宙がつまらないものに思われるほど豊富な内容を持っている。そこの物体は、折りたたまれることによって、まったく新しい資質を展開するのである。人は(つまり実在は)一枚の紙を正しく折ることにより、椅子、テーブル、飛行機、家屋、果実、花、生きた動物、男や女、その他事実上なんでもつくることができるのだ。(略) 質量も大きさも不変量ではなく、折りたたむことによって増やす(または減らす)ことができるから、一辺一フィートの紙が乗客百人を収容する旅客機にもなりうるのである。
(『宇宙の探求』小隅黎氏訳、『シティ5からの脱出』所収)

ただ、クボの術は、そこまで自由自在ではない。その証拠に、大きなものをつくるための、一種の複合折り紙も出てきた。「おお、ユニットおりがみ!」と内心つぶやいた。

クワガタが重要なキャラクターとなっていたので、15年ぐらい前に展覧会で展示した『クワガタの誕生』の写真を載せておこうかな、と。
クワガタ
『クワガタの誕生』

T3パズル
日本テセレーションデザイン協会の荒木義明さんによる「T3パズル」。裏表で相補的なパターンになっていて、模様を描いて遊ぶ。
折鶴の連続模様をつくってみた。

くろよんロイヤルホテル
暮れに、大町市のくろよんロイヤルホテルで、鳥海太郎さん布施知子さん夫婦と、前川夫婦で会食をした。このホテルにはアートルームというものがあって、その一室は、布施知子さんの作品によって飾られている。
くろよんロイヤルホテルアートルーム


氷柱
くろよんロイヤルホテルで見たつららである。短いつららをノイズとしてそれをばらつきとすれば、長いつららは3σ(標準偏差の3倍)ありそうなので、有意なシグナル(?)である。

つららの語源は、「連なる」にあるという説もあるので、このように連なっているのが、まさにつららの姿なのかもしれない。まあ、でも、古文にでてくる「たるひ(垂氷)」のほうが語源として、本質的のような...

◆円柱をつぶす
円柱をつぶしたさいの錐面と柱面
甘酒の紙パックをつぶしたときにできる、ふたつの錐面と柱面の組み合わせからなる立体が、けっこう面白いなあ、と。紙が厚いので、しわになったり破れたりせず、可展面のまま、変形するのである。

スーパームーンと月食2018/01/05 23:40

いわゆるスーパームーン(近地点近くでの満月)は3日前だったが、今日も月が明るい。月齢約18の今日のこの時間の月は、輝面比が約83%だ。7月28日の、今年の最小満月(遠地点近くの満月)と現在の月の地心距離の比は0.92で、面積比はその二乗の0.84なので、今日の月は、だいぶ欠けてきたが、7月の満月とほぼ同じの明るさという計算になる。

街の中ではそれほど感じないが、林の中では一段と明るい。昨晩も、山荘の天窓からの月光が、屋根裏部屋の床に四角形を描き、自分の影がくっきりと象られていた。月が床に落とす光を見ると、いつも太宰治の『懶惰の加留多』の一節が思い浮かぶ。

ふと眼をさますと、部屋は、まっくら。頭をもたげると枕もとに、真白い角封筒が一通きちんと置かれてあった。なぜかしら、どきッとした。光るほどに純白の封筒である。キチンと置かれていた。手を伸ばして、拾いとろうとすると、むなしく畳をひっ掻いた。はッと思った。月かげなのだ。その魔窟の部屋のカアテンのすきまから、月光がしのびこんで、私の枕もとに真四角の月かげを落していたのだ。凝然とした。私は、月から手紙をもらった。言いしれぬ恐怖であった。(『懶惰の加留多』太宰治)

今年は、1月31日 20:48 - 2月1日 0:15に月食もある。22:30ごろに皆既となる。
月食の月と、朔望(満ち欠け)の月のかたちが違うことは、ちょっとした幾何の問題である。

地球の影がつくる円錐と月の球面の交線が、月食のさいの月の明暗の境界だ。厳密には、太陽は点源ではないので、影は円錐の重ね合わせとなり、「本影」とそれを同心円上に囲む「半影」ができるが、それは無視しよう。大気の散乱により本影も暗黒ではないが、それも考えない。そしてさらに、正射影、つまり、影の中心と月への視線が平行であることにしてしまえば、話は単純化できる。これは、平面的な円盤に平面的な円盤の影がかかるようなかたちになる。それで、充分に正しい近似になる。なお、地球の直径は月の3.6倍ほどで、月の公転軌道付近での地球の本影の直径は月の3倍弱だ。
月食と朔望月
つまり、月食時の明暗の境界と朔望のそれは、かたちとしても明確に区別ができるということである。「月なんていつも満ち欠けしているじゃないの」と言っても、月食のときはかたちが違うのだ。

前にも書いたことがあるが、これを機会に横山光輝さんの『伊賀の影丸』で描かれた月の詳細が気になって、あらためて確認してみた。マンガそのものが面白くて、けっこう読みはまってしまったが、やはり月の描写は、記憶どおりに独特であった。左はまさに月食の月であり、右は、軌道がより地球に接近して、地球の影より月の視直径が大きくなった場合の月食の月のようである。
『伊賀の影丸』の月
(『伊賀の影丸』(横山光輝)より、月食的な月)

見る機会はないだろうが、部分食を地球ではない視点で見たときの月も面白い。たとえば、それは、図のように見えるはずだ。やや波うっているのが地球の影、楕円弧が月の裏表の境界である。
地球外から見た月食

飛行機に気づく話など2018/01/12 23:50

飛行機雲
◆飛行機に気づく
先週末、ほぼ頭上に、ふた筋の飛行機雲を見た。位置的に、羽田から小松の便だ。そう言えば、夜間に閃光灯を見たことがあったが、いままであまり気にしていなかった。音が聞こえないためである。しかし、ほんとうに聞こえないのか、ということを考えた。

大型機の騒音は、高度1000mで80dB程度(怒鳴り声ぐらい)だそうだ。音の強さは距離の二乗に反比例する。dBは対数なので、距離が倍になると引き算になる。その値は-6dBであるという。大型機の高度は8000mぐらいあるはずで、これは1000mの2の3乗倍なので、80-3*6≒60dBという計算になる。TVの音ぐらいだ。さらに窓の遮蔽を-20dBとすると、40dBとなる。これは、小鳥の声ぐらいだ。日に数便でもあり、耳をすませないと気がつかないのは、納得の概算となった。

◆ひっかかり
登場人物が天文台で働くという関心もあって読みはじめ、いいなあと読んでいた小説。天文の話がでてきたところで、分子の意味で元素という記述が繰り返されていて、うーんとなってしまい、以下、集中して読めなくなってしまった。SFだと荒唐無稽でも案外OKなのだが、これはどういう心の動きなのであろうか。

回転放物面とか2018/01/22 23:02

1/27(土) 22:45-23:00に第9話が放送される。
webには、わたしの未発表作品の図も載るはずだ。

◆回転放物面
45m宇宙電波望遠鏡
雪をよけるために風と反対向きに向けた、野辺山観測所の45m電波望遠鏡である。
積もった雪は、晴れたら太陽に向けて融かし、さらに、下から長い雪落としを使って払い落とす。鏡面に乗って落とすことはない。危ないからね。

で、ふと、考えた。これを真上に向けて回転させれば、すり鉢状の鏡面が見かけ状の水平面になる速度があるな、と。

回転体の局所的な水平面は、重力と遠心力の合力で決まる。遠心力は、角速度を一定にすると、中心からの距離に比例する。重力は一定なので、「水平面」の傾きは、中心からの距離に比例することになる。傾きが一次関数であるそのような曲線は放物線である。パラボラアンテナはまさにそのかたちなのだ。

計算してみると、45m鏡の鏡面が水平と錯覚できる回転は、10秒で1回転ぐらいという値となった。じっさいの45m鏡の最速の回転速度は1回転に20分かかるので、100倍足りないのであった。

と、まあ、ばかなことを考えたのだが、回転する物体がつくる放物面を反射鏡に用いた望遠鏡は、じっさいにある。円柱の容器にいれた流体を回転させると、上と同様の理屈で、その表面が放物面になる。これを利用するのだ。
回転する流体による放物面

2003年にできた(現在運用していない)カナダのLZT(大天頂望遠鏡)が、そのひとつだ。これは、水銀の回転による口径6mの大型光学望遠鏡である。名前のとおり天頂しか観測できないが、口径に比べてコストが低い利点があるという。回転速度によって焦点の位置も変えられる。

また、1960年代、赤外線天文学のパイオニアのレイトンやノイゲバウアーらによる赤外線観測のための望遠鏡も、液体エポキシ樹脂を回転させながら冷却させてつくった放物面鏡だったという話だ。

◆『ギフテッド』
数日前に、映画『ギフテッド』(マーク・ウェブ監督)を観た。
数学の天才的な能力を授かった少女とその伯父の話だ。ギフテッドというのは先天的な卓抜した能力のことだが、もっと一般的に、授かったものという意味も込められているのだろう。少女のクラスメイトである「普通の」少年のはにかんだ笑顔も最高だった。

エンドロールの数学アドバイザーに、天才数学者・テレンス・タオ氏の名前を見つけた。タオ氏は、天才児に関するアドバイザーでもあったのかもしれない。

キーとなる難問に、ナビエ-ストークス方程式を選んだのは「フィールズ賞も、ノーベル賞も」というセリフもあってのことだろうか。流体力学の方程式なので、ノーベル物理学賞の可能性もないとは言えない。

鑑賞後の会話:
妻「日本には、天才の教育制度あるの?」
わたし「将棋の奨励会とか..」

◆岡山天体物理研究所の切手
岡山天体物理研究所の切手
52円の年賀はがきが使えるのが1月7日までだったので、切手をいれた引き出しの中に、追加分の10円切手を探した。すると、以前、知り合いのN氏からもらった「東京天文台岡山天体物理研究所開所記念」の切手(1960)が出てきた。岡山は、昨年の暮れに、共同利用施設としての運用を一旦終了した。(閉所ではない) わたしが生まれたころの開所だったんだなあ。
この切手は、わたしが天文台の仕事をしているということで、N氏が送ってくれたものである。