凧三角、四角、六角、空、硝子2017/11/01 23:50

凧
凧三角、四角、六角、空、硝子
芥川龍之介(1916)

多数の凧が飛ぶ空、そして、それらが陽光に煌めくさまを、切子硝子、ステンドグラス、万華鏡などに見立てたと思われる句で、かっこいい。俳句に読点があるのも珍しい。

図形が乱舞する空は、芥川の絶筆小説である『歯車』(1927)の幾何学的幻覚、「次第に數を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまふ」「絶えずまはつてゐる半透明の歯車」も連想させる。なお、この幻覚は、偏頭痛患者が見る「閃輝暗点」として典型的なものらしい。

この句の凧をリアルな描写と見ると、四角や六角はともかく、三角の凧はあったのかが気になる。webを検索しても、伝統的な凧に三角形のものはでてこない。2種の辺を持つ左右対称の四辺形、いわゆる「凧型」を、一瞥の感覚で「三角」としたのかもしれない。句としても、三角、四角、六角と並べないと、リズムがでない。

外されてしまった凧型だが、これは幾何図形として面白い。たとえば、合同の凧型からなる多面体に、凧型二十四面体と凧型六十面体がある。凧型二十四面体は、ユニット折り紙でつくったこともある。その面は、4つの角度のうち3つが等しい(cosθ=(2-√2)/4となるθで81.5789...°)という対称性もあるのだが、なかなかに面倒な比率なので、あまりエレガントなものにはならなかった。六十面体は黄金比に関連する比率がでてくる凧型で、さらに面倒である。