「風車と風船」つづき2017/09/22 22:06

前回の「風車と風船」で、重要なことを書き忘れた。

『北斎漫画』の「風舟(ふうせん)」のあるページは、「車さまざま」という取り合わせで、左下に風車(かざぐるま)らしきものの絵もあるのだ。この風車も、家紋の「七曜」のようなかたちで、「正方形切り込み風車」ではないというのが、重要なポイントである。

風車(『北斎漫画二編』)
『北斎漫画二編』(国立国会図書館デジタルコレクション)より風車

風車のとなりにある、玩具の「鯛車」、中断左にある、いざり車(車椅子)も興味深いが、上段の「風舟」の左は車の妖怪で、「交離車(かたハくるま)」と記されている。(文字は、「片輪」ではなく「交離」のようである)

車さまざま(『北斎漫画二編』)
『北斎漫画二編』(国立国会図書館デジタルコレクション)より

水木マンガで妖怪の基礎知識を得た者としては、炎に包まれた怖い顔のついた車輪は、「輪入道(わにゅうどう)」にほかならない。輪入道という名は、鳥山石燕によるもので、水木さんはそれを参照したものである。しかし、その図像は『諸国百物語』の「かたは車」の引用なのである。ややこしいのは、石燕の『今昔画図続百鬼』に、片輪車と輪入道が別に描かれていることだ。

なお、「片輪車」は、水の波と車輪を描いた意匠を示す言葉でもある。「乾燥を防ぐために,牛車の車輪を川の水に浸している情景を表したもの」(大辞林)の謂だ。国立博物館所蔵の、この模様に彩られた「片輪車蒔絵螺鈿手箱」は国宝である。

コメント

コメントをどうぞ

※メールアドレスとURLの入力は必須ではありません。 入力されたメールアドレスは記事に反映されず、ブログの管理者のみが参照できます。

※投稿には管理者が設定した質問に答える必要があります。

名前:
メールアドレス:
URL:
次の質問に答えてください:
スパム対策:このブログの作者は?(漢字。姓名の間に空白なし)

コメント:

トラックバック

このエントリのトラックバックURL: http://origami.asablo.jp/blog/2017/09/22/8681754/tb

※なお、送られたトラックバックはブログの管理者が確認するまで公開されません。