『この青い空で君をつつもう』2016/12/08 00:45

瀬名秀明さんの『この青い空で君をつつもう』を読んだ。
全編これ折り紙の青春小説で、先日、静岡に行ったさいに、西川誠司さんと山口都さんから聞いて知った。

全編これ折り紙というのはなんなのだ、ということだが、じっさいにそういう小説なのである。

主人公の少女は静岡市の和紙店のひとり娘の高校生である。そして、この和紙店のモデルは、静岡市で山口都さんが切盛りする店「ますたけ」である。立地などが適合するだけでではなく、瀬名さんが取材に来たということなので間違いない。そして、もうひとりの主人公が、折り紙を生き甲斐にする少年である。

その少年の言葉として、「細長いテープのような紙も、ティーバッグの包み紙も、折ればすべて折り紙になる」なんてせりふが、ふつうにでてくる。作品や書籍に関して、あれがモデルだなと思いあたる記述が満載で、作者の折り紙愛(と藤子・F・不二雄愛)に感嘆することしきりであった。折り紙愛に関しては、当方は客観的評価ができず、ふつうの読者はついてこれるのかと心配になるほどだった。

静岡のご当地小説でもある。「静岡高校あるある」もたっぷりだ(たぶん)。東海大学海洋科学博物館も重要な役割で登場するが、同館がつい先日の折紙探偵団静岡コンベンションの懇親会の会場であったのも、シンクロニシティーじみていた。

もちろん、瀬名さんらしいセンス・オブ・ワンダーもある。

いずれにせよ、ここまで折り紙を本格的に扱った話はこれまでなかった。正方形に正六角形の部分をはめ込んで5弁の花をつくるアイデアはわたしのアレだとか、メインアイデアはやはりアレかと、と読んでいた。...などと書きたくなるのは専門家の矜持である。

専門家の矜持というか、以下は、自慢話である。
瀬名さんが、たぶんこの小説を執筆中の2月、週刊ダイヤモンドの書評で、『ドクター・ハルの折り紙数学教室』(トム・ハル著、羽鳥公士郎訳)、『本格折り紙』(前川淳)、『端正な折り紙』(山口真)の3冊をとりあげていた。ハルさんの本の編集さんから聞いて読んだのだが、その中で『本格折り紙』が「歴史的名著」とされていた。なんだかんだ言って、にやけた。