『算法截籠集』2014/04/20 22:18

機会があれば見たいと思っていた、江戸時代の多面体の本・『算法截籠集』(サンポウキリコシュウ 会田安明編 1798年頃)が、ウェブで閲覧可能(山形大学附属図書館 貴重資料コレクション 佐久間文庫)になっていることを知り、読みふけってしまった。

佐久間文庫『算法截籠集』(山形大学附属図書館 貴重資料コレクション)

『算法截籠集』には、東・西・南・北の四巻があって、たとえば、「東」巻の冒頭には、切頂(切頭)十二面体(サッカーボール多面体)が登場し、以下の記述がある。
今有如圖五角一十二面六角二十面之混面截籠只云面一寸問積幾何
答曰積五十五歩二分釐七毫七絲三忽零七繊五沙八塵一埃二二五有奇
(ここに、図のような正五角形12面、正六角形20面の多面体がある。辺の長さを一寸としたとき体積はいくらか。
答え。体積は55.2877307581225...である)

検算してみたところ、55.287730758122739...で、小数点13桁目は異なっていたが、ほぼ正しい値であった。
多面体を系統的に理解しようというよりも、ただただ計算の結果を示しているのが和算らしい。いっぽうで、以下のような、「六角等面截籠」が「虚題」であることを示す論証的な記述もあり、興味深かった。

「三角四等面截籠」(正四面体)の展開図、「四角六等面截籠」(立方体)の一面を欠いた展開図、「五角十二等面截籠」(正十二面体)の半分の展開図の類推から「六角等面截籠」の展開図を考える。しかし、これを立体化することは不可能である。以上のことから、正六角形のみからなる立体はないことがわかる、といった論旨である。
ここで扱われた「多面体の展開図」という考えかたは、デューラー(1471-1528)を嚆矢とするらしいので、和算における展開図の例としても興味深い。しかし、これを進めて、どのような多面体が可能かを網羅するといったことはなかったようだ。