大十字星(?)2014/01/18 20:24

大十字星(冬の大三角+α)
いま、シリウス、プロキオン、ベテルギウスからなる「冬の大三角」に木星が加わって、大きな十字の「星座」になっている。木星の公転周期から言って、約12年毎に起きる配置である(ただし、夏にあたると見える時間は短い。あるいは見えない)。

写真で一番下、木の間隠れに煌めく星がシリウスである。

シリウスと言えば、宮沢賢治の『星めぐりの歌』に、「あをいめだまの 小いぬ」とあるが、こいぬ座のプロキオンは黄白(F型)、おおいぬ座のシリウスは白(A型)で、しかも目ではなく星座の胸にあたるので、「青い目玉の小犬とはなんぞ」、というのは知るひとぞ知る話である。

そういえば、先日もシリウスの語を聞いた。観るともなしに視ていた『風の谷のナウシカ』の「シリウスに向かって飛べ」という台詞である。明け方(?)にシリウスが低く見えるということは、物語の舞台は、北半球の中緯度地域で、時期は秋頃ではないかと推測できる。

シリウスには、有名なトンデモ話もある。シリウスが目に見えない小さく重い星との連星であるというドゴン族(現マリ共和国の少数民族)の伝説と、シリウスに白色矮星の伴星が発見されたという事実との一致である。伝説好きの琴線に触れる話だが、じっさいのところは、話の出自がはっきりせず、研究者が「ドゴンの天文知識が卓越している」という主張をするためにそれらしくつくったものらしい。

SFでは、オラフ・ステープルドンの『シリウス』も思い出される。星ではなく犬の話なのだが、ハヤカワSF文庫の表紙の絵が宇宙ものを暗示していて、中身を見ないで描いたのだろうと思わせるものだった。先ほど書庫をあさったら、カバーは残念ながら紛失していた。『サイボーグ009』のいちエピソード(クビクロ)の元ネタとも言われているが、30年以上前に読んだ話で、ディテイルを忘れていた。ぱらぱらと読んだところ、脳改造によって超犬となったシリウス、改造をした科学者の娘で、シリウスと共に育ったプラクシー、そして、彼女の恋人で物語の語り手のロバートの三角関係の物語でもあった。プラクシーがベテルギウスでロバートがプロキオンということかもしれない。そして、木星(ジュピター=ゼウス=神≒宗教の話)が加わって、霊性を語る物語となる。…というのはうがち過ぎか。しかし、この本は1944年刊で、物語の結末とたぶん重なっている1942年の夏に、ちょうど今年と同じような木星と冬の大三角の十字配置が起きているのであった。まあ、偶然だろうな。と思うのは、作中、犬のシリウスが星について以下のように語っているからでもある。
はるかな大空では、脳味噌もなければ手もない、白痴のような星どもが、なんの得にもならないのに、もったいぶって、せっせと回っている。

犬と星と言えば、武田百合子さんの旅行記『犬が星見た』の記述も忘れがたい。
もしかしたら星など見えはしないのかもしれないが、そうとしか思えない恰好をしている犬を見かける。はやばやと人や車の往来がと絶えた大晦日の晩などによく見かける。とりかたづけられ、いつになく広々とした舗装道路のまんなかに、野良犬なのか、とき放された飼犬なのか、ビクターの犬そっくりに坐って、頭をかしげ、ふしぎそうに星空を見上げて動かない。

『犬が星見た』は、布施知子さんが近刊の『ハッとする折り紙入門』でも触れていた。(と、最後に折り紙の話)

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