読書日記的な2013/11/04 11:58

土曜日。神保町に寄って折紙学会の会議にでるという、月イチの定番行動。神保町の古書祭りは、昼過ぎから雨が降ってきて気の毒だった。読みかけの本がたまっているのに、また、たくさんの本を買ってしまった。ということで、すこし本の話題を。

君が代は五七六七七
穂村弘さんのエッセイ『蚊がいる』に「君が代の歌詞は五七五七七であり」とあったので、指を折ってかぞえてみたら、五七六七七の字余りだった。なんども数えているうちに、覚えている君が代の歌詞が正しいのかわからなくなってきたが、やはり五七六七七だった。

『捜査官ポアンカレ -叫びのカオス-』(レナード・ローゼン著、田口俊樹役)
憎悪の連鎖というテーマやパズラー(謎解き)の要素など、本編がデビュー作である作家が、なにもかもつぎ込んだ天こ盛り感にあふれたミステリだった。

天こ盛りネタのひとつに、インターポールの捜査官である主人公が、あの大数学者・アンリ・ポアンカレの曾孫である(ただし数学の才能があるわけではない)という設定がある。手がかりにフラクタル図形もでてくる。しかし、数学の内容に関しては思わせぶりの域を出ないものだった。(『日本沈没』の架空の謎理論「ナカタ過程」を連想した)

暗号解読に関して文字が95種類であることがでてきたけれど、あれはほとんどのひとが「なんで95文字?」と、ひっかかるんじゃないだろうか。コンピュータで最も一般的なASCIIコードが、制御文字を除くと、記号とあわせて95文字(空白を含む)なのは間違いないけれど、プログラマでもあらためて確認しないと95という数字はでてこない。

読んでいる途中で、ひいじいさんのアンリ・ポアンカレにも会いたくなって、昔読んだ『科学と仮説』『科学の価値』を書棚からひっぱりだしてきた。理科系に紛れ込んだ文学青年だったわたしにとって、ポアンカレはまず、位相幾何学の創始者のひとりや、相対性理論の先駆者、多体問題からカオス理論に先鞭をつけた数学者・物理学者としてより、西田幾太郎が言及し、寺田寅彦が翻訳し、漱石が『明暗』で触れた科学哲学の啓蒙書の著者として認識された。

というわけで、『科学の価値』に、以下のことが書いてあるのを見つけた。二十歳前後で読んだ頃は天文に関わる仕事をするとは思っていなかったので、気にとめていなかったが、今も昔も、天文学が「役にたたない学問」の典型扱いであることに微苦笑した。下記引用の後半なんて、開き直りにしか聞こえない。
政府や国会は、天文学はもっとも金のかかる学問の一つだ、と思っているにちがいない。もっとも小さい機械でも数十万フランかかるし、もっとも小規模の天文台でも数百万かかる。(略)しかも、これらの費用はきわめて遠いところにある星のためなのである。星のことなどは選挙戦にまったく縁がないし、おそらく、なんの役にもたたないだろう。
(略)
天文学はわれわれをして自分を超えて向上せしめるから役にたつのである。また、天文学は偉大であるから役にたつのである。また、美しいから役にたつのである。これこそぜひ言っておきたいことにほかならない。
『科学と価値』(ポアンカレ 吉田洋一訳)

『数学者が読んでいる本ってどんな本』(小谷元子編)
執筆者に、フィールズ賞、ノーベル賞、そして、なぜか芥川賞のひとが。で、小説家・円城塔さんのリストに、『折り紙のすうり』(ジョセフ・オルーク著 上原隆平訳)と、『ノックス・マシン』(法月綸太郎著)があるの見つけてうれしくなった。テッド・チャンの『あなたの人生の物語』はやっぱりあげるよね、と。
しかし、コクセターの『幾何学入門』をあげているひとがいないなあ。わたしの枕頭の本のひとつでもある『とっておきの数学パズル』(ピーター・ウィンクラー)は何人かが。

『ブラインドサイト』(ピーター・ワッツ著 嶋田 洋一訳)
テッド・チャン氏と言えば、(別の長編小説を読みはじめてしまったので)まだ読みはじめていないのだけれど、テッド・チャンの解説、帯の「突如地球を襲った65536個の流星群」、ブラインドサイト(盲視)という題名ときて、手にとらないわけにいかないSFがでていた。65536が「おお、2の16乗だ。面白そう」と思うのは、プログラマぐらいだろうけれど。

『格子からみえる数学』(枡田幹也、福川由貴子著)
最近でた本。折り紙のことも書いてある。

『メビウスの作った曲面』(D.フックス S.タバチニコフ著 蟹江幸博訳)
これは、前に買った本だけれど、折り紙の幾何学の理解によさそうで、気が向くと、ぼちぼち演習問題を解いている。