とりとめもなく2013/05/31 00:58

VLBI
『宇宙戦艦ヤマト2199』は、SFアニメーションらしい荒唐無稽さを残しつつ、随所に科学考証の半田利弘さんの示唆によるものだろうなあ、というところがあるが、先日放映された第8話の、8光年離れた場所から在りし日の青い地球を観測する「VLBI望遠鏡」は,明らかにそれだった。

VLBIというのは超長基線干渉計のことで、複数の位置から観測した情報を使って画像を合成する技術である。野辺山で活躍していたNMAや、チリのALMAがそれだ。

つまり、ヤマトの地球観測は、離れた位置でデータを連続的に取得し、それから画像を合成したものと思われる。ふつうは同時に別のアンテナで観測し、同時刻のデータを干渉させるが、移動して別の時刻に取得したデータを干渉させ画像を合成することも可能だ。

で、分解能を簡単に検算してみた。
8光年離れたところから見た地球は、8光年≒8×10^16mで、地球の直径は約1.3×10^7mなので、視直径(視野角)が2×10^-10rad≒0.03ミリ秒ぐらいになる。

いっぽう望遠鏡の分解能は、波長/ベースラインの長さで決まる。可視光の波長は500nm=5×10^-7mぐらいなので、可視光で地球が識別可能なベースラインの長さは3000mぐらいになる。これを100ピクセルぐらいの分解能でイメージングするためには、300kmぐらいとなる。ヤマトがワープ航法をしていないときの速度がどれぐらいになるかはわからないが、たとえば、高度200kmの人工衛星の速度は7.8km/秒で、これよりはるかに速いはずである。すなわち、300kmのベースラインを持つデータは、短い時間で得られるという計算だ。

天の川
先日出ていた会議で、こんな会話があった。
「この機能、次の観測シーズンでも使うんですか?」
「サジA(サジタリウスA*:銀河中心)のあれがあるからねえ」

「サジAのあれ」というのは、この夏から秋に予想されている、銀河中心周辺のガスが銀河中心のブラックホールと反応する現象のことだそうだ。シミュレーション計算の結果である。(プレスリリース

天の川銀河ということでは、『natuteダイジェスト』5月号でこんな記事を読んだ。古代エジプトで神聖とされた昆虫・スカラベ(フンコロガシ)の話である。球を転がすことから太陽の運行に結びつけられたと言われるこの虫が、最近の研究で、夜間に直進するために天の川の光の帯も目印にしていることが判明した、というのだ。古代エジプト人もこれに気がついていたのかもしれない。この記事だけでは、季節とか時刻とか、よくわからないところもあるが、壮大な宇宙と小さな昆虫の対比が詩的だ。(ScienceNewsline.jp内にも翻訳記事

とまあ、天文学者もスカラベも注目する天の川だが、都会生まれの都会育ちだと、生まれてこのかた天の川を見たことがないというひとも多いと思う。可能であれば、きれいな星空は、年に何回かは見たほうがよい。それはたぶん、精神の健康によい。

先日見た有明海のムツゴロウや蟹も、泥の中から外に出て、星空を見上げたりするのだろうか、なんてことも思った。

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