「つるの小物入れ」2013/03/03 20:23

つるの小物いれ(河合豊彰さん)
連作形式のミステリ・『思い出探偵』(鏑木蓮著)の第二章・『鶴を折る女』に、以下の記述があった。

「これがそのときの折り鶴です」田村が浩二郎たちの前に置いた鶴は、確かに変わった形をしていた。
 くちばしや尾、羽根の部分は普通の折り鶴なのだが、背中が四角く開いていて、そこが小物入れにになっていたのだ。

 昭和四十年。集団就職で東北から上京した少年。彼は、工場の仲間と諍いをおこして街に飛び出す。路地裏のジャズ喫茶。少年はひとりの少女に親切にされ、おだやかに諭される。たった一回の短い出会い。それから40年余、折りにふれてその女性を思い出す男は、お礼を伝えたい、そのひとを探しだしてほしいと探偵事務所を訪ねる。手がかりは、すこし変わったかたちの折り鶴のみ。というような話である。

 さて。この、背中が小物入れになっている折り鶴だが、これは、河合豊彰さんの「つるの小物入れ」であると見て間違いない。そして、この作品の初出は、保育社カラーブックスの『おりがみ』(復刻版あり)のはずである。ここで「問題」なのは、その出版年が1970年(昭和四十五年)ということだ。つまり、この折り鶴は、1965年には一般には知られていなかったはずなのである。
…と、野暮な「考証」をしてみた。

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