謹賀新年2013/01/03 11:03

暮れに、折り紙の友人のMさんが泊まりに来て、パズルにはまっていた。休みになってからは、メールを見ると仕事が追ってきそうなので、なるべくメールチェックをしなかった。さきほどチェックすると、大急ぎのものはなくて安心した。

12月29日 あしあと
うっすら積もった雪の上に鳥のあしあとがくっきりついていた。ハトだと思う。
鳥のあしあと

12月29日 笹子トンネル
復旧した直後の笹子トンネルを通った。30日と31日に玉突き追突があったが、あれは、運転者がトンネル内で天井を見上げるためなどだと思う。
笹子トンネル(2012/12/29)

1月1日 片桐
片桐はいりさんの家ではない。
片桐ハイ…

1月1日 初夕日
富士山の近くに沈む「初夕日」が美しかった。
初夕日

1月2日 ちょろぎ
「ちょろぎ」は、関東ではおせち料理の一品だが、関西では一般的ではないらしい。シソ科の植物の塊茎で、モスラのような独特なかたちが面白い。ちょろぎという名前は「名は体を表す」というか、いかにも「ちょろぎっ」というかたちである。ねじ芋などとも呼ばれるらしいが、ねじ状ではなく、周期の異なる正弦波を重ねた曲線をもとにした回転体に近い。数式で3Dプロットしてみた。
ちょろぎ

巡航と弾道2013/01/03 11:36

正月休みに、分厚いのでなかなか手をだすことができていなかった『ブラックアウト』(コニー・ウィリス著 大森望訳)を読んだ。第二次大戦中のイギリスを舞台にしたタイムトラベル小説で、750ページの厚さがありながら、物語はまだ前半という大長編である(後半『オールクリア』の翻訳は、まだ刊行されていない)

ドイツ軍のミサイル兵器「V1」による攻撃を、21世紀からの時間旅行者が観察するシーンがあるのだが、ちょっとひっかかった。
 飛行機じゃなくて、無人ロケットなのよ、とメアリは心の中でいった。到着が遅れたせいでV1以前の日常を観察できないんじゃないかという心配は杞憂だった- 彼らはいまだに"V1以前"を生きている。

時間旅行者・メアリの言は間違っている。V1はロケットエンジンではなく、パルスジェットエンジンである。ロケットエンジンを積んでいたのはV2だ。また、V1は巡航ミサイルであり、V2は弾道ミサイルである。巡航ミサイルというのは、つまり、翼による揚力を持って「飛ぶ」ものなので、物語中の「時代人」の考える「飛行機」という認識は間違いではない。じっさいV1は航空機のかたちをしている。

この違いが気になったのは、じつは、つい最近調べた折り紙のことにすこし関係している。『折紙探偵団』(2月末刊行137号)に、このブログでも触れた、紙飛行機の元祖・「紙の矢」について書いたのだが、これを調べる過程で、「紙の矢」には、翼の揚力を使って飛ぶものと、そうではない投げるものがありそうだということに気づいたのである。

貝のかたち など2013/01/16 21:34

1月某日 富士山のゆるキャラにおける口
立川駅で、富士山のゆるキャラに遭遇した。山梨国民文化祭のためのマスコットで、「カルチャくん」というらしい。国民文化祭というのは、国民体育大会の文化祭版だそうだ。富士山をキャラクター化する場合、口を宝永火口とすると、正面は静岡側になるな、ということを考えた。
カルチャくん

1月某日 「原始から原子へ」
『オオカミの護符』(小倉美惠子著)というノンフィクションを読んだ。1960年代、いまや郊外住宅地となっている川崎市麻生区の農家に生まれた著者が、自宅の土蔵に貼られていた黒い獣の描かれた護符に興味を持ったことから始まる、民俗学的な旅の話である。川崎市や横浜市の西部は、東急田園都市線が開通(溝口・長津田開通1966年)し、宅地開発が始まるまでは、おもに農地と山林だった土地だ。開通当時、世田谷区南部に住んでいたわたしは、東急電鉄がルートをつくった「原始から原子へ」と題された、ハイキングコースを歩いた思い出がある。駅前になにもない「たまプラーザ駅」が最寄りの駅だった。「原始」は、たぶん宮前区神木本町の東高根遺跡、「原子」は、麻生区王禅寺の日立製作所と武蔵工業大学(いまの東京都市大学)の実験原子炉である。詳しい記憶はあまりないが、それから数年後、少年は「(公害をなくすために)原子力技術者になる」という、当時の広報にそのまま乗せられた「将来の夢」を描くのであった。

1月某日 箸袋のへび
正月気分がまだある先週、箸袋でへびを折るのがくせになっていた。細い帯状の部分を舌にするところがミソである。
箸袋のへび

1月某日 貝のかたち
カワラガイやリュウキュウアオイガイを見ると明らかなように、二枚貝にも巻貝的な構造があるが、これは、数式処理ソフトウェアを使ってCGを描いてみるとよくわかる。これが面白くてはまってしまった。下の式で、パラメタA, B, C, D,Eをさまざまに変えると、二枚貝(1枚分)や巻貝を、かなりそれっぽく描くことができる。

(x, y, z) =A^θ((B+sinφ)cosθ, -(B+sinφ)sinθ, Ccosφ+Dφ+E)
 [θ=0...2nπ, φ=0...πまたはφ=0...2π]
二枚貝は巻貝である

同種のものとして、以下のかたちも面白い。
(x, y, z)=1.2^θ(sinφcosθ, sinφcosθ, cosφ)
 [θ=0...2nπ, φ=-π...π]
二重貝殻
 両面タカラガイというようなかたちである。「経線」方向は円という安定的なかたちなので、紙テープで造形できるのではないかとすこし試したが、あまりきれいにはできなかった。

卵形曲線2013/01/19 12:29

卵形の曲線の式を考えた。

卵形曲線というと、まず、土星の輪の隙間・「カッシーニの間隙」で有名な天文学者・カッシーニが考えたカッシーニの卵形線というものがある。ふたつの点からの距離の積が一定である点の軌跡である。カッシーニは、ケプラーより後代、ニュートンと同時代のひとだ。惑星の軌道に関連してこの曲線を考えたらしいが、それが科学史的にどのような位置づけになるのかは知らない。

(x^2+y^2)-2c^2(x^2-y^2)=k^4-c^4

図は、c=1.1として、k=0.6, 1.05, 1.1, 1.2,1.5で描いたものだ。
k=1.05(赤)のときが卵のかたちになっている。
k=1.1(緑)のときの曲線は、「ベルヌーイのレムニスケート」として知られる曲線の一例である。
カッシーニの卵形線

この曲線は、トーラス(ドーナッツ形)の断面にも現れる。トーラスは円を回転させた軌跡である。これを回転軸に平行な切断面で切る。円の半径と、回転軸と切断面の距離が等しいとき、その切断面がつくる曲線がカッシーニの卵形線になる。図は、回転半径=円の半径*約2.1のときで、切断面に卵形が現れている。
トーラスの切断

また、デカルトの卵形線というものもある。あのルネ・デカルトが考えたものらしい。

m√(x^2+y^2)+n√((x-c)^2+y^2)=k

図は、m=2, n=1,k=4で、c=2, 2.4, 2,6, 2.8としたものだ。
デカルトの卵形線

いずれも卵形を描けるが、じっさいの卵とこれらの式に合理的な結びつきがあるわけではない。また、図を描く場合は、多項式の陰関数より、媒介変数をつかって(x,y)=...のかたちしたほうが扱いやすい。

極座標の媒介変数をつかった(単位)円の式は(x,y)=(sinθ,cosθ) θ=0...2π である。
このy軸のcosθに工夫をすれば、卵形が描ける。まず思いつくのはa^φbcosφとすることだ。しかし、こうすると、半周を描いてそれを反転させる必要があり、また、卵の底がわずかに凹んでしまう。卵の特徴は、どの面も凸で、かつ曲率がなめらかに変化していることである。

そこで、いろいろ考えて、次の式にした。
(x,y)=(sinθ,a^cosθbcosθ) θ=0...2π

指数関数の「肩の数」をcosφとしたところがミソである。これはなかなよい。
図は、b=1.4として、a=1, 1.1, 1,2, 1.3、そしてa=1, b=1(円)である。
媒介変数卵形線

a=尖り具合、b=概略縦横比と、パラメタの意味も明らかだ。また、じっさいの卵を見ても、黄身の位置は原点にくるようである。卵を描く式としてわかりやすい。

三次元では以下になる。

(x,y,z)=(sinθcosφ,sinθcosφ, a^cosφbcosφ) θ=0...2π, φ=0...π
卵3D

(カッシーニとデカルトの卵形線に関しては、『かたちの事典』(高木隆司編)を参照した。なお、同書の「卵形」の文のルビに誤植を見つけた。「凸閉曲面」に「おうへいきょくめん」とふってあった)

(1/19 16:20 一部誤り 修正)