『日本児童遊戯集』と『Cassell's book of sports and pastimes』2012/10/29 22:49

『日本児童遊戯集』から
先日、第53回神田古本まつりに行って来た。いくつか収穫があったが、そのうちのひとつが、『日本児童遊戯集』(大田才次郎)(東洋文庫の復刻版)だった。このブログでも参照したことのある本だが、ワゴンセールで美本を廉価で購入した。

これをパラパラとめくっていると、「とんび」という項目で、いまでいう紙飛行機が掲載されていることに気づいた。知るひとぞ知る話だったようだが(たとえば、「趣味際的模型航空」)、わたしは今回初めて知った。

ここでまず興味深いのが、『日本児童遊戯集』の原著が出版された年である。明治三十四年(1901年)なのである。ライト兄弟の初飛行(1903)よりも前で、森鴎外が『小倉日記』の中で、「飛行機」という言葉を初めて使ったのと同じ年なのである。「紙飛行機」という名前ではなく、「とんび」という名前なのは、さもありなんなのである。

なお、紙飛行機の起源に関しては、20世紀よりも前に、「Paper Darts」というものがあったことが知られている。たとえば、1882年の『Cassell's book of sports and pastimes』という本に、はっきりとした図がある。この本も今回初めてちゃんと見たのだが、ほかに、Paper Bellows, Paper Boat, Paper Boxes, Paper Chinese Junk, Paper Hat, Paper Parachute, Paper Purseが載っていて(813ページから)、折り紙の歴史資料としてきわめて興味深い。

明治期に西洋から伝わった「折り紙」は多いので、「とんび」も、そのひとつ(くちばしをつけたのは日本での改変か?)である可能性は高い。

さて。これをじっさいに折ってみたのだが、展開図も完成図も正確な描写とは思えず、頭をひねった。以下の説明もわかりにくいが、上掲写真のような、くちばしつきの「やり飛行機」であろうと解釈した。これは、よく飛ぶ。
製法は長方形なる一方を折り、その折りたる両端を又内方に折り、その尖端を二折して嘴を作り、その折れ込まざる方に半折して、再びその脊髄に当れる所より両方に同じ折り返しをなす。このとんびを高処より投下せば急に落下せず、いと興あり。

また、「郵書投げ」という遊びも興味深い。(上掲写真参照)
近年流行の遊戯にして、郵書投げと云えり。その法は紙を、かくの如く畳み折りて、向いに矢の如く投じ、その間数の遠きに達するを勝とす。
(東洋文庫の復刻版では、仮名遣いは新かなになっているので、それにしたがった)