折紙探偵団コンベンションと、注目すべき折り紙の本など2012/08/17 00:30

◆8月10日〜13日は、日本折紙学会総会、日本折紙学会主催の折紙探偵団コンベンション、第五回国際折紙著作権会議に出席していた。今回のコンベンションは、なにより笠原邦彦さんの参加がうれしかった。笠原さんが講演で述べた、以下のパズルは名作だ。
「正方形用紙をひとつ折り半(半は折り目をつけるだけ)して、正方形の半分の面積の五角形をつくりなさい」

会ではいろいろ印象深いことがあったのだけれど、妙に記憶に残ったのは、ひさびさに参加していたdaidai氏との会話だ。彼は暗号の専門家である。
daidai「受付番号が256なんですよ」
わたし「2の..」
daidai「8乗です」
わたし「こっちは271。これは、素...」
daidai「素数くさいですね」
じっさい、271は素数である。はたで聞いたら「なにその会話」というようなやりとりだ。

東洋大学
コンベンションの会場は、文京区白山の東洋大学で、期間中に同学職員の村田諒太さんが金メダルを獲得し、ポスターが掲示されていた。と、書いていて、折り紙のコンテストで、「折りンピック」というのはどうだ、と、ありがちなダジャレを思いついた。

◆編集作業をした『折り紙の科学』の第2号が、コンベンションに間に合うように刊行できたが、最近、他にも、注目すべき折り紙の本が相次いで出版された。どれも値ははるが、充実した本である。

◎まずは、『小松英夫作品集』
完成形だけではなく、構造や工程にも美しさがある作品を、これまた美しい図で描いた、待望の作品集である。

◎そして、『SPIRAL - Origami Art Design』(布施知子著)。
らせん(渦巻と弦巻)の作品を集めた、ずっしりと重い豪華本。ドイツで出版されたものだが、本文はドイツ語ではなく、英語である。

◎さらには、『折り紙のすうり』(Joseph O'Rourke 著 上原隆平訳)。
『幾何的な折りアルゴリズム - リンケージ、折り紙、多面体』(Erik D. Demaine , Joseph O'Rourke 著 上原隆平訳)の入門編といった位置づけの本で、『幾何的な…』は読むのに「骨も折れる」が、この本は、(流し読みしただけだけれど)わかりやすい。

◎「折り紙の本」ではないけれど、ついでに。
6月末に出た『素晴らしき数学世界』(Alex Bellos著 田沢恭子、対馬妙、松井信彦訳)という本にも、折り紙への言及がある。登場するのは、ロバート・ラングさん、ジニーン・モズリーさん、芳賀和夫さんら。興味深い本だが、どういう取材をしたんだろうかと思うところがなくもない。たとえば、この本を読んで、芳賀さんを狷介孤高なひとみたいに思うひとがいるかもしれないが、それは誤解である。

折り紙の本

◆コンベンションの前の週の週末には、友人の造形作家・日詰明男さんが「七夕フィボナッチタワー」を展示している、静岡市立美術館の「七夕の美術」展(8/19まで)を観にいってきた。(七夕という言葉にカタカナを続けて書くと、夕(ゆう)がタ(た)と区別がつなかなくなるなあ)
展示替えのためか現物を確認できなかったけれど、図録によると、鳥居清長の五枚組の錦絵『子宝五節句遊』の重陽の節句 に、紙で折った箱に菊の花という図があった。似た絵は他でも観たことがあり、紙箱に菊の花をいれるというのは、重陽の節句の図像の定番なのかもしれない。
七夕フィボナッチタワー

◆わたしの「ねじれ立方体(Snub Cube)」のモデルを見たひとから「わたしが一番好きな幾何立体は、ねじれ立方体なんですが、」というメールが来た。「わたしが一番好きな立体は菱形十二面体です。云々」という返事を書いた。「あなたの好きな幾何立体は?」という質問を、いろんなひとにしてみたい。菱形十二面体ではふつうすぎる(?)ので、今後この質問を受けたときのために、「側台塔回転二側台塔欠損斜方二十・十二面体です」("It's a gyrate bidiminished rhombicosidodecahedron.") と答える準備をしようと思う。まあ、そういう機会はないだろうけれど。

◆コンベンション後の居酒屋さんで、デビッド・ブリルさんがつくった「スイカの種によるパンダ」の完成度が高かった。これへの「返歌」としてわたしがつくったのは、コンセプチュアルな「スイカの種と氷による北極熊」である。
スイカの種による絵