まきば公園の線量計 ― 2011/08/08 20:49

まきば公園は、標高約1300mである。[このページ]の図5から、宇宙線の線量を見積もってみると、標高約1300m地点(標準的な気圧は約870hPa)は、約0.04μSv/hになる。大地からの放射線もあるので、表示されていた0.038μSv/hはかなり低めである。ガンマ線のみの測定による(宇宙線は中性子線が案外高いようだが、普通の線量計では測定できない)ためと、出入り口付近とは言え、機械が室内にある(検出機は表示器のやや下にあるらしい)ためと考えた。
で、わたしは見落としたのだが、一緒に見に行った妻によると、「宇宙線の影響を省いてあります」旨の注意書きもあったという。測定値をそのまま出さずオフセットを引いているというより、標高が高くなると影響の大きくなる、測定できていない中性子線の約0.02μSv/hを含んでいないという意味と推定した。
他の汚染マップなどを見ても、福島第一から漏洩した放射性物質の影響が、山梨県においては低いのはたしかだと思うが、こういう広報的な線量計だけではなく、この事態になった以上、すべてのアメダスポイントで線量を計るぐらいでもよいのではないかとも、あらためて思った。
地上の星座 ― 2011/08/09 23:22

冥府の王たる北斗真君が、土龍の姿を借りて、我が庭に象顕したのか!? その地がホクト(山梨県北杜市)であったのは、吉凶いかなる意味を持つのか!?
えーと、まじめにいうと、こうした偶然は、確率と見立ての問題なので、かたちを気にしていていると、珍しくはない。不定形のものが意味のあるものに見えるパレイドリア という心理現象だ。
以上、スケールの小さい「地上の星座」のトンデモ話でした。(似た話は以下)
・地上の湖と天空の星の配置を結びつける:『地上星座学への招待』(畑山博著)(未読:『と学会年鑑BLUE』(と学会)で知った)
・龍安寺枯山水の石の配置がカシオペア座:『龍安寺石庭の謎 』(明石散人著)
・ギザの大ピラミッドの配置がオリオン三星:『オリオンミステリー』(ロバート ボーヴァル 、エイドリアン ギルバート 著)
謎の矢印 ― 2011/08/11 17:34

先日、駅から我が家への道に、矢印が記されているのに気がついた。
推測1:単に三角形の紙片が、道路にきれいにはりついていた。
推測2:誰かが、道案内のためにつけた。
推測3:一時的に一方通行になった。
推測4:大きな白蛇が鱗を落とした。
『紙の民』 ― 2011/08/12 23:27

『紙の民』(The People of Paper サルバドール・プラセンシア著 藤井光訳)なる本である。
折り紙がでてくる小説としては、いままで、『シティ5からの脱出』(バリントン・J・ベイリー著 浅倉久志訳)所収の『宇宙の探求』が、一番変な小説だと思っていたが、『紙の民』はこれをしのぐ。
物語は、冒頭、「彼女はあばら骨と泥の時代の後に作られた。法王の布告により、人間はもはや骨の髄や土から生まれてはならないとされたのである」と始まる。ここからの話の展開は、想像の斜め上を行く。
まず、飼い猫を肉屋に殺された少年が、その肉と、新聞と紙一巻きを買う。彼・アントニオは、紙を折って臓器を、ティッシュペーパーを縒って血管をつくり、猫を復活させる。かくして「自らの天職を見いだした」彼は、長じて、折り紙人工臓器で治療を行う「折り紙外科医の第一号」(!)となる。医学界の反発を受けながら、その道の第一人者となった彼であったが、「スウェーデン人による技術革命によって、アントニオの医学技術は時代遅れに」なってしまう。
「無名の行商人へと転落」した彼は、大道で折り紙芸を見せるようになり、「群衆が動物の名前を叫ぶと、アントニオは即座にそれを折ってみせた」りする。
その後、折り紙の技が再び認められ「アントニオの名声は偉大な職人たちに並」び、「彼の折り紙は聖職者たちに評価され、良心の呵責を感じる者たちは折り紙の作品を寄進して悔悛の証と」するようになる。「祭壇の前には白鳥やユニコーンといった動物が聖餐の隣に並ぶように」なるのであったが、アントニオ自身は、志を胸に放浪を続け、ついに、かつて修道士たちが骨の髄と泥から人間をつくっていた工場を探り当て、そこで、「男のあばら骨からではなく」、紙からひとりの女性を生み出すのであった。
なんじゃこれは、としか言いようがないじゃないか。「帯」に、柴田元幸さんが「これだけ奇妙奇天烈で、これだけ悲しく、これだけ笑える小説が他にあったら教えてほしい。そういう奇妙奇天烈で悲しく笑える、だが訳すには種々の困難が伴うこの小説をあっさり訳してしまう訳者が他にいたら教えてほしい」と書いてあるが、まさにそんな小説だ。
しかも、上の要約は、プロローグたった6ページ分のものなのだ。「帯」の要約には「上空から見おろす作者=《土星》の存在に気づき、自由意志を求めて立ち上がった登場人物たち。ページの上で繰り広げられる奇想天外な「対土星戦争」の行方は? メキシコ出身の鬼才による鮮烈な処女小説」とあって、紙でつくられた人間が、それにどう関わるのかは欠片も触れられていない。(そもそも、わたしは、この本を見つけたのが今日であり、読み終わっていないのだが、興奮してこの文章を書いているのである)
と、ここまでの記述だけでも想像がつくような、なんともへんちくりんな物語なのだが、異常な話を日常的なものと同列に語る、いわゆるマジックリアリズムの手法によって、高いリアリティーの密度がある。文章のレイアウトという視角的な技法も使われ、写真右上のように墨塗りのページなどもあるので、「独り善がりの実験小説なんじゃないの」と思われるかもしれないが、普通に小説を読むたのしさがあふれている。
そして、この本には、「折り紙本」として、装丁の仕掛けもあるのだった。帯と見える部分が、写真右下のようにカバーの折り返しになっているのである。
さらに、本文とカバー裏には悪魔の図もでてくる。というわけで、折り紙者で、「悪魔の前川」で、かつての文学セーネンで、天文関係の仕事をしているという、わたしを狙い撃ちにしたような小説なのであった。ちなみにプロローグは、柴田元幸さんの手による既訳があるということだったが、これは知らなかった。
第17回折紙探偵団コンベンション ― 2011/08/14 10:57

以前から、本郷通りからながめて、へぇと思っていたが、中に入ったのは初めてだ。設計は河野泰治アトリエと東京大学大学院農学生命科学研究科・生物化学専攻・木質科学研究室ということ。
双曲放物面は、直線の軌跡のみで記述ができる「線織面」の一種で、可展面(平面に展げることができる面)ではないが、折り目を使ってきれいに近似することができる曲面である。
折りたいこころ ― 2011/08/16 23:42

日本語の「をる」には、英語の「break, fold, bend」(おりきる、たたむ、まげる)の三つの意味がある。
そして、漢字の「折」のつくりは「オノ」である。この字は、草木をばらばらにするという意味で、breakが一番近い。したがって、「折紙」という語は、漢字文化圏では違和感もあるらしく、台湾などでは、「折紙」ではなく「摺紙」となっている。
ちなみに、「織る」は「おる」で、「をる」とは異なり、本来は、発音も違う。
「たたむ」では、たたみがみ→たとうがみ、というのもあり、味のある言葉だが、オリガミに比べて、音のまとまりが弱い感じもする。
「たたむ」といえば、「店をたたむ」という表現は、むしろござの上に商品を並べて売る干し店(露店)の撤収から来ていると思われる。建物をたたんだら、『トランスフォーマー』である。
と、書いていて思ったのだけれど、『トランスフォーマー』は、オリジナルが日本発の玩具ということもあり、アメリカのひとたちにとって、オリガミのイメージと結びついているんじゃないだろうか。
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