タイリング絵のこと2010/01/07 23:22

タイリング絵(トラ)
 自己補対(自己相補)ということで連想するのは、M.C.エッシャーのタイリング(敷き詰め or 正則分割 or テサレーション)絵だ。動物や人物など、複雑な輪郭をしたものが、ぎっしりと充填された絵である。

 エッシャーのこのタイプの絵に関しては、語りたいことはたくさんあるのだけれど、指摘されることがほとんどない、以下のふたつの点を書いておきたい。

 まず、第一点。モチーフに合わせて図の向きを明確に意識していること。たとえば、動物の絵で、脚が上向きになっていることはほとんどない。(ただし、習作を除く) 逆転する図を含む絵は、上から見たり、見上げたりという別視点の図柄であるか、浮遊するもの、あるいは、そもそも「異なる座標系」の中にある絵、と見ることができる。

 そして、二点目。これは、変遷もあり、一点目より例外も多いが、二色で塗り分け可能なものが多いことだ。ゲシュタルト心理学的な「図と地」(まさに相補性である)というモチーフと、版画という技法に密接に関わっている、と考えられる。

 版画ということに関しては、こんなことも言える。
 エッシャーの作品は、技法や表現から切り離して、構造だけを話題にすることも可能だ。そのために、そもそも美術であることを見落とすことも多い。しかし、美術としてのエッシャー作品は、版画であること(さらに細かく言えば、木版やリトグラフという個々の技法)に、極めて大きい意味がある。

 …で、わたしも、エッシャーさんの顰みにならってタイリング絵を描くのだが、この二点が不得意なのである。たとえば、上図左は、ちょうど一巡りした年賀状だが、一列ごとに逆転している。図右の今年の年賀状の背景は、逆転していないが、これは、図が単純だからだ。(単純なので、あえて複雑にするために、一列ごとに逆転しようかとも思ったのだが、美しくなかった。そのとき気がついたのは、「寅」という字は、正面から見たトラの姿にも見えるということだった)